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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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仲間達の元へ

 ◇


 少し時間を遡る。


 救護所———穴の中



「《火眼》でレテやパイルさんを見つけて」


「見つける……?」


「うん!」


 フィリアが頷く。


「見つけたら、そこで私の《風話》を使うの」


「なるほど……」


 ユノが顎へ手を当てる。


「声で敵の気を逸らすんですね」


「そういうこと!」


「ですが……」


「?」


「《火眼》では人物の特定はできませんよ」


「…………」


「見えるのは温度ですから」


「…………」


 フィリアが固まる。


「……そっか」


「はい」


「…………」


 数秒。


 沈黙。


「でも!」


「?」


「レテなら分かる!」


「どうやってです?」


「レテの《水凪》!」


 フィリアが人差し指を立てる。


「あれって、水の霊素を集めて刃を作ってるでしょ?」


「えぇ」


「だったら、周りより明らかに温度が低い物を持って戦ってる人がいたら――」


 ニッと笑う。


「それがレテ!」


「……なるほど」


 ユノが少し感心したように頷いた。


「それなら見つけられるかもしれません」


「でしょ!」


「では、パイルさんは?」


「…………」


「…………」


 フィリアが視線を逸らす。


「パイルさんは……」


「はい」


「なんとかする!」


「えぇ……」


「な、何その反応!」


「何の根拠もないじゃないですか……」


「考えてる途中なの!」


「それを考えてないって言うんですよ……」


「と、とにかくレテから!」


「分かりました」


 ユノが目を閉じる。


「《火眼》」


 ゆっくりと。


 瞼を開く。


 その瞳の奥に。


 炎のような光が宿った。


「…………」


 地上。


 壁。


 人。


 温度の違いが。


 色となってユノの視界へ浮かび上がる。


「人が……多いですね」


「レテは?」


「待ってください」


 一人。


 二人。


 さらに奥。


「…………!」


 ユノの視線が止まった。


「いました」


「本当⁉︎」


「恐らく」


 一つの人影。


 その手元だけが。


 周囲より明らかに温度が低い。


「冷たい何かを持って戦っています」


「それ!」


 フィリアが勢いよく指差す。


「絶対レテ!」


「たぶん、ですけどね」


「場所教えて!」


「この方向。少し右です」


「よし!」


 フィリアが目を閉じる。


 流れる風を探す。


 細い風。


 地上へ抜け。


 戦場へ続いている。


「《風話》」


 小さな声が。


 風へ溶けた。


『――レテ!』


「…………」


 フィリアが目を開く。


「届いたかな……」


「分かりません」


「そこは『きっと届きました』とか言ってよ!」


「適当なことは言えませんよ」


「もう!」


 そんなやり取りをしながら。


 ユノは《火眼》を解かない。


「…………」


「どうしたの?」


「あそこ……」


 ユノが。


 別の方向へ顔を向けた。


「風が乱れています」


「風?」


 フィリアも。


 そちらを見る。


「かなり激しく」


 暖かい空気。


 冷たい空気。


 それらが。


 一箇所を中心に。


 何度も大きく掻き回されている。


「風を使って戦っている人がいる……」


「パイルさん!」


「可能性は高いです」


「よし!」


 フィリアがもう一度目を閉じる。


「なら《風話》で――」


「待ってください」


「?」


 ユノが止めた。


「どうしたの?」


「これだけ風が乱れているなら」


 ユノがその方向を見る。


「《風話》を狙った場所へ届けるのも難しいんじゃないですか?」


「…………」


 フィリアが。


 少しだけ黙る。


「この間……」


「?」


「キール・ヘペスっていうやつと戦った時は出来たけど……」


 地上の風を感じる。


 流れが。


 何度も変わっている。


「今回は、ちゃんと届くか……」


「自信がないと?」


「……はい」


「…………」


 ユノが少し考える。


 そして。


「なら――」


「?」


「僕がやります」


「ユノが?」


「はい」


 ユノが掌を開く。


「僕が《活火》をパイルさんへ送ります」


「《活火》を?」


「今のパイルさんに届けば、身体能力を上げられる」


「…………!」


「それなら、声で一瞬気を逸らすより」


 拳を握る。


「直接力になれる」


「でも」


 フィリアが地上を見る。


「ここから届く?」


「だから」


 ユノがフィリアを見る。


「手伝ってください」


「私が?」


「はい」


 ユノの口元が僅かに上がる。


「フィリアさんの風で、《活火》の火力が落ちないように援護してください」


「…………」


 一瞬。


 目を丸くして。


 そして。


「……面白そうじゃん!」


「え?」


「よし!」


 フィリアが。


 両手を合わせる。


「やるよ!」


「はい!」


 ユノが掌を前へ向ける。


「《活火》!」


 ――ボッ。


 青白い炎が灯った。


「パイルさんまで……!」


 炎が。


 ゆっくりと浮かび上がる。


「フィリアさん!」


「任せて!」


 フィリアが風を起こす。


 強すぎれば。


 炎が散る。


 弱すぎれば。


 戦場まで届かない。


「…………」


 青白い炎を。


 包み込むように。


 風を纏わせていく。


「こんな感じ……!」


「いけます!」


「よし!」


 二人が。


 同時に地上を見上げた。


「行っけぇぇぇ!!」


「届けぇぇぇ!!」


 ――ゴォッ!!


 風に包まれた青白い炎が。


 穴の中から。


 一気に飛び出していく。


「…………」


 フィリアとユノは。


 その光が見えなくなるまで。


 ずっと。


 地上を見上げていた。


 戦場へ行くことはできない。


 それでも。


 二人の力は。


 確かに。


 仲間達の元へ向かっていた。

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