見えない援護
◇
その頃。
救護所――穴の中。
――ガギィン!!
――ドン!!
――ガガッ!!
「…………」
地上から。
何度も戦闘音が響いてくる。
「……まだ続いてる」
ユノが天井を見上げた。
拳を強く握る。
「僕らも行きましょう!」
「だめだよ、ユノ」
「でも!」
ユノがフィリアを見る。
「このままここにいるなんて……!」
「…………」
「僕だけでも行きます!」
「ユノ‼︎」
「⁉︎」
フィリアの声が。
穴の中へ響いた。
「…………」
「私達のやるべきことは」
フィリアが。
治療を受けている人々へ目を向ける。
「ここの人達の手当と」
そして。
地上を見上げる。
「この場所を守ること」
「しかし……!」
「大丈夫!」
「…………!」
フィリアが笑う。
「きっと……大丈夫」
「…………」
その手は。
僅かに震えていた。
怖いからではない。
仲間が戦っている。
傷ついているかもしれない。
なのに。
自分はここから動けない。
そのことが。
悔しくて仕方がなかった。
「……くそっ!」
ユノが。
拳を地面へ叩きつける。
「お兄ちゃん……」
「…………!」
近くで治療を受けていた子供達が。
不安そうにユノを見ている。
「…………」
ユノは。
ゆっくり拳を開いた。
「……ごめんなさい」
子供達へ顔を向ける。
「取り乱しました」
「…………」
「大丈夫じゃ」
「?」
治療を受けていた老人が。
静かに口を開いた。
「星がきっと見守ってくださる……」
皺の刻まれた顔で。
穏やかに笑う。
「きっと……」
「…………」
フィリアが。
その言葉を聞く。
「見守る……」
「?」
ユノが振り返った。
「フィリアさん?」
「…………」
見守る。
ここからでも。
戦う必要はない。
敵を倒せなくても。
できることは――
「…………⁉︎」
フィリアが。
勢いよく顔を上げた。
「ユノ!」
「は、はい!」
「《火眼》使えたよね?」
「使えますが……」
「…………」
フィリアの口元に。
少しだけ笑みが浮かぶ。
「いいこと思いついた!」
「……はい?」
◇
――キィン!!
「っ!」
《水凪》と《射恋》がぶつかる。
レテが後ろへ下がる。
「はぁ……はぁ……」
「どうしました?」
リシェルが。
二本の《射恋》を指の間に挟んだまま。
ゆっくり歩いてくる。
「先ほどより動きが鈍くなっていますよ」
「まだ……です」
レテが《水凪》を握り直す。
リシェルの右肩。
僅かに開いている。
(今なら……)
レテが踏み込む。
水の刀身を振るう。
だが。
「…………」
腕が。
ほんの一瞬。
止まった。
「……っ?」
どうして。
そこへ。
――ヒュン!!
「!」
《射恋》が飛ぶ。
レテが咄嗟に身を逸らす。
頬の横を。
鉄杭が通り過ぎた。
「危ないですよ?」
「…………」
リシェルが笑う。
レテは。
《水凪》を向ける。
なのに。
狙えない。
肩。
腕。
脚。
どこを見ても。
傷つけてはいけない。
そんな感覚が。
頭の奥から湧いてくる。
(何……これ……)
「ふふっ」
リシェルが。
一歩近づく。
「ようやく効いてきたみたいですね」
「……何がですか?」
「あなたが女性だからでしょうか」
また一歩。
「いつもより時間がかかったみたいですね」
「どういう……」
「別にいいでしょう?」
「⁉︎」
リシェルが。
《射恋》を持ち上げる。
「私の――」
『――レテ!!』
「⁉︎」
「なっ⁉︎」
突然。
声が響いた。
フィリアの声。
だが。
聞こえたのは。
レテのいる方向ではない。
リシェルの。
真後ろ。
「誰っ⁉︎」
リシェルが。
反射的に振り返る。
「…………!」
レテの目が見開かれた。
(フィリア……?)
『レテ! 今!!』
「!」
今度は。
右。
さっきとは違う場所から。
フィリアの声が響く。
「何……これ……!」
リシェルが周囲を見る。
その瞬間。
レテの手へ。
再び力が入った。




