人馬一体③
「――《轟蹄の爆熱》!!」
瞬間。
最初の軌跡が爆ぜた。
――ドォン!!
「っ!」
続く。
隣の軌跡へ。
炎が駆ける。
――ドォン!!
――ドォン!!
――ドォォン!!
「なっ……!」
ただの一斉爆発ではない。
一つが爆ぜ。
次が続き。
さらにその先へ。
まるで。
戦場を駆け抜ける馬の蹄。
――ドン!!
――ドン!!
――ドン!!
爆発が。
蹄音のように連なっていく。
「しし……!」
セトが《毒吻》を振るう。
――ビュン!!
鞭が柱へ巻きつく。
引く。
爆発の隙間へ身体を飛ばす。
だが。
「そっちもだぁ!!」
「⁉︎」
逃げた先。
赤い軌跡が輝く。
――ドォォン!!
「ぐっ!!」
爆風を受け。
セトの身体が押し戻される。
そこへ。
別方向から。
――ドォン!!
「がっ!」
さらに。
――ドォォン!!
「ぐぅっ!!」
右。
左。
背後。
次々と爆発する軌跡が。
セトを中心へ追い込んでいく。
「くそっ……!」
蠍の尾が大きく振るわれる。
――バギィン!!
爆炎を無理やり薙ぎ払う。
「ししし……!」
黒紫の甲殻が。
熱で赤く染まる。
それでも。
セトは前へ出た。
「この程度で――!」
「ダッハハハハ!!」
炎の向こう。
ソラティオが駆ける。
「まだ終わってねぇぞ!!」
「⁉︎」
――ヒヒィィィン!!
爆発が作り出した炎の道。
その中央を。
ソラティオが真っ直ぐ突っ切ってくる。
馬上。
バルガスは《炎駒》を脇へ構えていた。
赤い布が。
炎の中で激しく靡く。
「来る……!」
セトが《毒吻》を構える。
さらに。
蠍の尾を前へ。
二つの毒針が。
正面からソラティオを狙う。
「止めます!!」
――ビュン!!
《毒吻》。
同時。
――シュッ!!
蠍の尾。
「ソラティオ!!」
――ヒヒン!!
速度を落とさない。
「なっ……!」
正面から。
行く。
「馬鹿ですか!?」
「よく言われる!!」
バルガスが左手を突き出す。
「《火衝》!!」
――ボォン!!
炎が炸裂し。
《毒吻》の軌道を吹き飛ばす。
「っ!」
だが。
蠍の尾は止まらない。
毒針が。
ソラティオの額へ迫る。
「させるかぁ!!」
――ガギィン!!
《炎駒》の刃が。
毒針を下から打ち上げた。
「⁉︎」
尾が跳ね上がる。
開いた。
正面。
「行けぇぇ!!」
――ドドドドド!!
ソラティオが。
セトへ突っ込む。
「ぐっ……!」
咄嗟に腕を交差させる。
黒紫の甲殻。
硬い。
だが。
――ドゴォン!!
「がぁっ!!」
馬体そのものの突進。
セトの身体が浮く。
その瞬間。
「おおおおおお!!」
馬上で。
バルガスが身体を捻った。
《炎駒》。
大きく。
横薙ぎ。
「っ!!」
――ドガァン!!
「がはっ!!」
刃が。
セトの脇腹を捉える。
黒紫の甲殻に。
亀裂が走った。
そして。
そこへ残る。
一本の。
太い赤い軌跡。
「しまっ――」
バルガスとソラティオは。
すでに駆け抜けている。
振り返ることなく。
バルガスが叫ぶ。
「《爆跡》!!」
――ドォォォォン!!
「ぐぁぁぁぁっ!!」
爆発。
セトの身体が。
炎の中へ呑み込まれた。
――ドン!!
吹き飛び。
床を転がる。
――ザザザザッ!!
「ぐ……」
止まった。
「…………」
バルガスが。
ゆっくりと《炎駒》を肩へ担ぐ。
ソラティオも。
その場で脚を止めた。
――ブルルッ。
「ダッハハハハ!」
笑う。
だが。
バルガスの額からも。
大量の汗が流れていた。
右腕の痺れ。
左脚の感覚。
脇腹を焼く痛み。
毒は。
今も確実に身体を蝕んでいる。
「ったく……」
バルガスが息を吐く。
「星詠みってのは、とんでもねぇな」
「…………」
返事はない。
倒れたセト。
《星纏》の甲殻は所々砕け。
黒紫色の尾も。
力なく床へ落ちている。
「…………」
バルガスが目を細めた。
「おい」
――ピクッ。
「…………!」
蠍の尾が。
僅かに動いた。
「し……」
掠れた声。
「ししし……」
「……マジかよ」
セトの指が。
ゆっくりと床を掴む。
「随分と……」
身体を震わせながら。
それでも。
起き上がろうとする。
「無茶苦茶な戦い方を……しますねぇ……」
「ダッハハハハ!」
バルガスが《炎駒》を構え直す。
「そりゃお互い様だろ」
セトが顔を上げる。
赤紫色の瞳は。
まだ。
消えていなかった。




