鍛冶仕舞
――ドゴォォォン!!
「《鍛冶仕舞》!!」
《崩槌》がガルドへ叩き込まれる。
「ぐっ……がぁぁぁぁ!!」
これまで何度も打ち込まれ。
その身体に蓄積していた《脆化》。
最後の一打が。
それを一気に崩す。
――ドン!!
ガルドの巨体が吹き飛び。
止まった土石の津波へ叩きつけられた。
――ガラガラガラ!!
「…………」
崩れた土と岩の中。
ガルドが仰向けに倒れる。
「…………」
動かない。
「はぁ……はぁ……」
ログも。
《崩槌》を杖代わりに立っている。
「クソが……」
もう。
指一本だって動かしたくない。
「これで……終われよ……」
「…………」
僅かな沈黙。
「……俺の負けだ……」
「うぉ! まだ喋れんのかよ⁉︎」
ログが思わず顔を上げる。
「…………」
ガルドは倒れたまま。
顔だけをログへ向ける。
「もう……口しか動かん」
「そーかよ……」
ログも力尽き。
その場へ仰向けに倒れる。
――ドサッ。
「俺もだ……」
「…………」
「…………」
二人して。
天井を見上げる。
「ログ」
「あ?」
「さっきの……」
「なんだよ」
「ダチのやり方とは?」
「あー……」
ログが面倒そうに息を吐く。
「すぐ地面殴る馬鹿と」
「…………」
「小賢しく色々仕込む馬鹿がいてな」
「……そうか」
ガルドが僅かに笑う。
「しかし……足場を崩すとは」
「あ?」
「中々性格悪いな……」
「うるせぇ!」
ログが顔だけをガルドへ向ける。
「言ったろ! 俺は友達が少ねぇってよ!」
「ふっ……」
ガルドの口元が緩む。
「はっはは!」
「何笑ってんだよ……」
「いや……すまん」
「ったく……」
「…………」
少しだけ。
静かな時間が流れる。
「……ガルド」
「なんだ」
「てめー、なんでこんなことした」
「…………」
ガルドの笑みが消える。
「父や母……一族のみんなに」
「…………」
「スコルネ族の毒が打たれている」
「毒?」
「ああ」
ガルドが僅かに目を伏せる。
「いつその毒が命を奪うか……分からん」
「…………」
「ナーラ姫を連れてくれば、解毒薬を渡すと約束された」
「……ど畜生だな」
ログが眉を寄せる。
「セトとかいう野郎か?」
「セト?」
ガルドが怪訝そうな顔をする。
「セト族長は、そんなことをしないぞ?」
「あ?」
「俺に毒を見せたのは……知らない奴だった」
「…………」
「顔も見たことがない」
「どーゆー……」
ログが考えようとして。
「……毒?」
「?」
「毒……」
ログの顔色が変わる。
「姫様!」
「…………!」
ナーラへ顔を向ける。
「くそっ……!」
立てない。
なら。
ログが床へ手をつく。
ずる。
ずる。
身体を引きずりながら。
ナーラのもとへ這っていく。
「姫様……!」
「…………」
「大丈――」
ナーラへ手を伸ばす。
「あっつ!!」
「⁉︎」
ログが慌てて手を引っ込める。
「なんだこれ!」
「ふぅ……」
ナーラが。
ゆっくりと息を吐く。
額から。
大量の汗が流れている。
「代謝高めて汗かいたら……」
まだ掠れてはいるが。
先ほどよりも。
明らかに声が出ている。
「ちょっと楽になったぞ!」
「…………」
ログが呆然とナーラを見る。
「姫様……?」
「…………」
ナーラも。
ログを見る。
ボロボロの身体。
血だらけの顔。
それでも。
自分を守るために立ち続けた男。
「…………」
そして。
さっきまで。
何度も聞かされた言葉を思い出す。
『大切な女の前で倒れねぇって』
『よく見とけ。俺がこいつをぶっ飛ばすからよ』
「…………」
ナーラの顔が。
みるみる赤くなる。
「お前……」
「はい?」
「あんまり……」
ナーラが目を逸らす。
「恥ずかしいこと言うな……」
「…………」
無造作に伸びた赤髪で。
赤くなった口元を隠す。
「…………」
ログが。
ぽかんとナーラを見る。
「……はい?」
「…………」
「…………」
ログには。
何のことだか。
さっぱり分からなかった。
◇
壁の向こうの戦い。
勝者――
ログ・スミスマン。




