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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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仕舞い

「…………⁉︎」


 次の瞬間。


 ガルドの広げた両腕が、地面を抉りながら突き進む。


 床が砕け。


 土が巻き上がり。


 岩が跳ね上がる。


「ははは……」


 ログの頬が引き攣る。


「冗談だろ……」


 目の前の地面が。


 ひっくり返っていく。


 ガルドが一歩進むたびに、大地が抉られ、巻き上げられた土と岩がその前へ積み重なっていく。


 それはもう。


 ただの突進ではない。


 巨大な土石の津波。


 王宮を呑み込もうとした土砂崩れを止めた男が。


 今度は自ら。


 土砂崩れそのものとなって迫ってくる。


「に……げろ……」


「…………?」


 背後から。


 ナーラの掠れた声が聞こえる。


「お……れのことは……いい……!」


「…………」


 ログが僅かに振り返る。


 ナーラは倒れたまま。


 それでも必死に。


 ログへ逃げろと訴えていた。


「そうはいかないでしょうよ」


「…………!」


「それに……」


 ログが迫り来るガルドへ向き直る。


 《崩槌》を握りしめ。


 口元を上げる。


「負ける気はねぇ!」


「⁉︎」


「あ、れは……本……当に……」


 ナーラには分かる。


 あれがどれほどの技なのか。


 まともに受ければ。


 ただでは済まない。


「まぁ……」


 ログが《崩槌》を構える。


「見ててくださいよ」


「…………」


 大きく息を吸う。


「ふぅー……」


 迫る。


 土石の津波。


 その中心。


 ガルドだけを見る。


(チャンスは一回)


 《崩槌》を握る手に力を込める。


(タイミングを逃すな)


 ガルドとの距離が。


 どんどん縮まっていく。


「……へっ」


 ログが笑う。


「俺じゃ、ガルド」


「…………?」


「お前には勝てねぇわ!」


「何……?」


「だからよ」


 ログが《崩槌》を振り上げる。


「ダチのやり方を借りる!」


「何を――」


「こうすんだよ!」


 ログが。


 《崩槌》を地面へ振り下ろす。


「《天工鎚》!!」


 ――ドゴォォォン!!


「…………⁉︎」


 衝撃が地面を走る。


 ガルドとログ。


 二人の間にある地面へ。


 《天工鎚》の力が広がっていく。


「この技はよ!」


 ログが《崩槌》を地面へ押しつけたまま叫ぶ。


「鍛えてぇもんと、壊してぇもんを選べる!」


「…………!」


「俺が鍛えるのは――」


 ガルドの前。


 土石の津波に呑み込まれようとしていた地面。


「お前と俺の間の地面!」


 ――ゴゴゴゴゴ!!


 ガルドの両腕が地面を抉る。


 だが。


「⁉︎」


 動きが鈍る。


「重い……」


 さらに踏み込む。


「いや……!」


 ガルドの顔が歪む。


「堅い!」


 今までなら。


 腕で抉り。


 巻き上げられていたはずの大地。


 それが。


 異常なほどに堅くなっている。


「ぐぅぅぅ!!」


 それでも。


 ガルドは止まらない。


 強引に。


 前へ。


 踏み込む。


「んで――」


 ログが笑う。


「壊すのは」


 ガルドの足が。


 次の一歩を踏み出す。


「お前の足元だ!」


「⁉︎」


 ――ガラッ!!


 踏み込んだ瞬間。


 ガルドの足元だけが崩れ落ちる。


「ぐぅっ!!」


 巨体が大きく傾く。


 地面を抉っていた両腕が浮き。


 勢いを失った。


 ――ドドドドド……!!


 巻き上げられていた土と岩が崩れていく。


 ログへ迫っていた巨大な津波が。


 その場で止まった。


「…………!」


 ガルドが目を見開く。


「俺の《鎮嶽断流》を……」


「へっ!」


 ログが《崩槌》を引き抜く。


 ――ダン!!


 駆け出す。


 止まった土石の津波へ向かって。


「…………!」


 土を蹴り。


 岩を踏み。


 その上を駆け上がる。


「ログ!」


「ここまでは――」


 ログが。


 土石の津波の頂点へ飛び出す。


「ダチのやり方だ!」


 体勢を崩したガルド。


 その姿を見下ろす。


「こっからは……」


 両手で《崩槌》を握る。


 今まで。


 何度も打ち込んだ。


 その身体には。


 《脆化》が蓄積している。


 あとは。


 最後の一打。


「俺の仕事だぁ!!」


 ログが《崩槌》を大きく振りかぶる。


「仕事は――」


 全身の力を。


 その一振りへ。


「これで仕舞いだぁぁぁ!!」


 《崩槌》が振り下ろされる。


「《鍛冶仕舞(かじじまい)》!!」

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