勘違い②
ドルガへ。
真正面から突っ込んでいった。
「おらぁぁぁ!!」
ログが《崩槌》を振り下ろす。
――ブォン!!
「…………!」
ドルガが腕を上げる。
狙うのは槌頭ではない。
――ガン!!
「くっ!」
《崩槌》の柄へ腕を当て、軌道を逸らす。
槌頭がドルガの横を通り過ぎた。
「まだだ!」
ログがすぐに《崩槌》を引き、下から一気にかち上げる。
「…………」
ドルガが片脚を上げる。
――ガッ!!
「なっ!」
《崩槌》の持ち手付近を踏みつけられ、動きが止まる。
「器用なことしやがって!」
ログが力任せに《崩槌》を引き抜く。
その勢いのまま身体を回し。
「なら!」
横薙ぎ。
――ブォン!!
「…………!」
ドルガが後ろへ跳ぶ。
《崩槌》が、その身体の前を通り過ぎた。
「くそが! ……?」
ログの眉が僅かに動く。
振り下ろしは柄へ腕を当てて逸らした。
かち上げも持ち手を踏んで止めた。
なのに。
今の横薙ぎだけは避けた。
「…………」
ドルガが拳を構え直す。
「来い」
「…………」
ログも《崩槌》を構える。
――ダン!!
一気に踏み込む。
「おらっ!」
振り下ろし。
――ガン!!
また柄へ腕を当てられ、軌道を逸らされる。
「まだだ!」
そのまま《崩槌》を引き。
下からかち上げる。
――ガッ!!
「ちっ!」
また持ち手付近を踏みつけられた。
「ならよぉ!」
ログが《崩槌》を引き抜き、身体を回す。
再び横薙ぎ。
「…………!」
――ザッ!!
ドルガが後ろへ避けた。
「…………」
ログの目が細くなる。
やっぱり。
横薙ぎだけ避けている。
振り下ろしは防ぐ。
かち上げも止める。
なのに。
横薙ぎだけは受けようとしない。
「…………?」
ログがドルガの身体を見る。
横薙ぎの軌道にある脇腹。
そういえば、あそこには何度か《崩槌》を叩き込んでいる。
「まさか……」
ログが手の中の《崩槌》を見る。
石柱は何度も叩くことで、内部へ《脆化》が蓄積していた。
最後には内側から崩れた。
もし。
あれが物だけじゃないなら。
「人体にも……?」
ログが顔を上げる。
ドルガの脇腹を見る。
確証はない。
なら。
確かめればいい。
「もう一発……ぶち込んでみりゃ分かるか」
《崩槌》を肩へ担ぎ。
腰を落とす。
「…………」
ドルガも拳を構える。
――ダン!!
二人が同時に踏み込んだ。
「…………!」
ドルガの拳が迫る。
ログが頭を下げる。
――ブォン!!
拳が頭上を通り過ぎた。
「おらっ!」
《崩槌》を振り下ろす。
――ガン!!
ドルガが柄へ腕を当てる。
また軌道を逸らされた。
「…………」
ログがすぐに《崩槌》を引く。
もう一度。
振り下ろす。
――ガン!!
防がれる。
「何度やっても同じだ」
「うるせぇ!」
ログが《崩槌》を引き戻す。
もう一度振り上げる。
「…………」
ドルガが腕を構える。
その瞬間。
「そこだぁ!!」
「!」
ログが身体を捻る。
振り下ろさない。
そのまま軌道を変え。
横薙ぎ。
「…………!」
ドルガが後ろへ跳ぶ。
「逃がすかよ!」
ログも一歩踏み込む。
――ブォン!!
「くっ!」
さらにドルガが下がる。
だが。
その足が。
崩れた瓦礫へ触れた。
「…………!」
一瞬。
動きが止まる。
「もらったぁぁぁ!!」
ログがさらに踏み込む。
《崩槌》が。
ドルガの脇腹へ迫る。
「ぐっ!」
ドルガが咄嗟に腕を下げる。
――ドゴォン!!
「…………っ!!」
腕ごと。
《崩槌》が脇腹へ叩き込まれた。
「…………!」
ログの手に。
今までとは違う感触が伝わる。
「ぐっ……!」
ドルガの顔が大きく歪む。
「がはっ!!」
口から血を吐き。
巨体が横へ吹き飛ぶ。
――ドン!!
床を転がり。
そのまま壁へ叩きつけられた。
――バキィッ!!
「ぐ……ぅ……!」
「…………」
ログが《崩槌》を握ったまま、ドルガを見る。
脇腹を押さえ。
膝をついている。
今まで何発食らっても立っていた男が。
明らかに。
今の一撃だけは違う。
「……マジかよ」
ログが《崩槌》へ視線を落とす。
石柱と同じ。
何度も打撃を重ねたことで。
ドルガの身体にも《脆化》が蓄積していた。
「人体にも……効くのかよ」
知らなかった。
自分の霊器に。
こんな使い方があるなんて。
「…………」
ログが顔を上げる。
壁際では。
ドルガが脇腹を押さえながら、ゆっくりと立ち上がろうとしていた。
「ぐっ……」
「…………」
ログが《崩槌》を担ぐ。
ようやく。
見つけた。
この化け物を。
ぶっ倒す方法を。




