勘違い
◇
王宮内。
壁の向こう。
――ドゴォン!!
「がっ……!」
ログの身体が。
壁へ叩きつけられる。
――ガラガラッ。
「…………っ」
崩れた壁から。
ずるりと身体が落ちる。
「くっそ……」
《崩槌》を杖代わりに。
どうにか立ち上がる。
腕が痛い。
脚も。
もうまともに動かない。
「…………」
ドルガが。
拳を構えたまま。
ログを見る。
「もう諦めろ」
「あぁ?」
「お前はよく戦った」
「…………」
「これ以上続けても結果は変わらない」
ドルガが。
一歩近づく。
「立つ必要はない」
「…………」
「そこで倒れていろ」
「……はっ」
ログが。
小さく笑う。
「随分優しいじゃねぇか」
「お前を殺す理由はない」
「そうかよ……」
《崩槌》を握る。
立ち上がろうとする。
「ぐっ……!」
膝が。
震える。
それでも。
立つ。
「…………」
「なぜ立つ」
「…………」
「もう身体も限界のはずだ」
「うるせぇな……」
ログが。
顔を上げる。
「諦めろって言ってんだ」
「…………」
「そんな簡単に……」
その時。
ログの視線が。
僅かに横へ向く。
斜め後ろ。
淡い光を纏った。
赤茶色の牛。
アルゴス。
「…………」
じっと。
ログを見ている。
「はっ……」
ログの口元が。
僅かに上がる。
「大切な女の前で……」
「…………?」
ドルガの眉が。
僅かに動く。
「簡単に倒れるわけにはいかねーだろがぁ!!」
――ダン!!
ログが。
《崩槌》を握りしめ。
再び前へ出る。
「…………」
その後ろ。
「…………?」
ナーラの瞼が。
僅かに動く。
声は。
出ない。
身体も。
動かない。
意識だって。
まだ朦朧としている。
それでも。
今の言葉だけは。
聞こえた。
『大切な女の前で』
「…………」
ナーラが。
ぼんやりと。
ログの背中を見る。
そして。
自分の周囲を。
僅かに見ようとする。
「…………?」
女。
他に。
いるのか?
「…………」
いない。
見えるのは。
自分と。
あの大男。
そして。
目の前で戦っている。
知らない男。
「…………」
大切な。
女。
「…………⁉︎」
ナーラの顔が。
僅かに赤くなる。
誰だ。
こいつ。
いや。
待て。
俺は。
こいつと。
会ったことがあるのか?
「…………」
駄目だ。
頭が回らない。
でも。
さっきの言葉だけが。
妙に。
頭から離れなかった。
そんなナーラの勘違いなど。
知る由もなく。
「おらぁぁぁ!!」
ログが。
《崩槌》を振りかぶる。
ドルガへ。
真正面から突っ込んでいった。




