襲撃②
光は金属の表面を覆うだけではなかった。
細い筋となって内部へ染み込み、脚を形作る骨組みや接合部へ広がっていく。
重さを支える箇所。
力を受け流す継ぎ目。
僅かな歪みを押さえ込んでいた構造の均衡が、少しずつ崩されていく。
金属が低く軋んだ。
表面には、まだ目立った変化はない。
だが、その内側では細かな亀裂が幾重にも走り、本来の強度を失い始めていた。
「そこだ!」
ログは《崩槌》を両手で握り直し、大きく踏み込んだ。
全身を捻り、その重い一撃を横薙ぎに叩き込む。
轟音が響いた。
《脆化》によって均衡を崩された二本の脚が、接合部からまとめて砕け散る。
支えを失った蜘蛛型魔具の巨体が、大きく傾いた。
「レテ!」
「はい!」
レテは腰に下げていた鞘へ手を伸ばした。
引き抜かれたのは、緩やかに湾曲した細身の片刃剣だった。
淡い銀色の刀身。
根元には、水面へ広がる波紋のような模様が刻まれている。
魔器《水凪》。
レテが柄を握り直すと、刀身へ水が細くまとわりついた。
傾いた魔具の懐へ滑り込み、砕けた脚の付け根へ刃を向ける。
「《水刃》」
圧縮された水が、湾曲した刀身に沿って走った。
レテが《水凪》を振り抜く。
鋭い水流が金属の隙間へ入り込み、残された接合部を切り裂いた。
一拍遅れて、一本の脚が街道へ転がった。




