さ、やるか
◇
一方。
王宮内。
「ロイドさん!」
――ドン!!
迫ってきたタウルス族の大男へ。
アルトが《砕》を叩き込む。
「ログは後って言ったけど、お姫様は大丈夫なんですか!」
「……どうなんだ医者!」
ロイドが。
振り下ろされた拳を躱す。
続けて迫るもう一人の攻撃を。
剣で受け流した。
「さっきも言ったが!」
セブランが。
突進してきたタウルス族を横へ跳んで躱す。
「進行を止めただけだ! といっても、ずっと止められるわけじゃない!」
「どのくらい止められる⁉︎」
「おそらく一時間ほど!」
――ブォン!!
「うおっ!」
大きな拳が。
セブランの鼻先を通り過ぎる。
「長ぇのか! 短いのか! 分かんねぇな!」
ロイドが。
タウルス族へ斬りかかる。
――ガキィン!!
「くっ!」
受け止められる。
ロイドがすぐに剣を引き。
後ろへ下がった。
「くっそ……こいつら兵士じゃねぇから、切るわけにもいかねぇしな!」
迫ってくる大男達を見る。
「めんどくせぇ!」
「術! 術使って!」
「てめーがいるから使えねぇんだよ!」
「霊器出せよ! 出せるだろ!」
「切るわけにはいかねぇって言ったろ!」
「じゃあなんで剣持ってんだよ!」
「色々あんだよ! めんどくせぇことにな!」
「無駄口叩く前に、この状況どうにかしろ!」
セブランが。
迫る拳を避けながら叫ぶ。
「……ちっ」
ロイドが。
周囲を見る。
前にも。
後ろにも。
廊下を塞ぐように。
タウルス族の男達が集まっている。
「おい、アルト!」
「何!」
「この生意気な医者連れて消えろ!」
「はぁ⁉︎」
アルトが。
ロイドを見る。
「ロイドさん一人で残んのかよ!」
「姫様の命に関わんだ!」
ロイドが。
迫ってきた拳を剣で受け流す。
「どっか大回りしてでもログのとこ行け!」
「でも!」
「一時間しかねぇんだろ!」
「…………!」
「ここで三人揃って足止め食らってる方がめんどくせぇ!」
「………あー! もう!」
アルトが。
頭を掻く。
「分かったよ!」
すぐに。
セブランを見る。
「セブランさん! こっちへ!」
「簡単に言ってくれるね!」
セブランが。
懐へ手を入れる。
「二人とも目をつぶれ!」
「⁉︎」
「⁉︎」
――バッ!!
粉状の薬品が。
辺りへ撒かれる。
「うっ!」
「なんだこれ!」
「目が!」
タウルス族の男達が。
一斉に顔を押さえる。
「大丈夫!」
セブランが。
アルトの方へ駆け出す。
「少しすれば視力は戻る!」
「そういうの持ってんなら早く使えよ!」
「貴重なんだ!」
正面。
目を押さえながらも。
一人の大男が道を塞いでいる。
「アルト!」
「分かってる!」
アルトが。
杖を構える。
腰を落とし。
地面を強く踏み込む。
脚。
腰。
肩。
身体を大きく捻り。
その勢いを。
全て杖へ乗せる。
「《砕砲》!」
――ドン!!
「うっ!」
杖が。
タウルス族の腹へ叩き込まれる。
「ぐはっ!」
大男の身体が。
後ろへ吹き飛んだ。
「今だ!」
「!」
開いた道へ。
アルトとセブランが駆け出す。
「おい! 医者!」
「?」
走りながら。
セブランが振り返る。
「その便利なもん置いてけ!」
「あいにく!」
セブランが。
空になった容器を見せる。
「今ので品切れだ!」
「使えねぇ医者だな!」
「ご武運を!」
「てめぇ!」
アルトとセブランの姿が。
廊下の奥へ消えていく。
「…………」
残されたロイドが。
大きく息を吐く。
「……はぁ」
剣を肩へ乗せる。
「めんどくせーのがようやくいなくなった……」
懐へ手を入れる。
取り出したのは。
煙草。
一本を口に咥え。
火をつける。
――カチッ。
「…………」
ゆっくりと。
煙を吸い込む。
視界を奪われていたタウルス族達が。
少しずつロイドへ近づいてくる。
「まぁ待て待て」
ロイドが。
片手を上げる。
「一服ぐらいさせろや」
もう一度。
深く吸い込む。
「……ふぅー」
白い煙を。
ゆっくりと吐き出す。
「…………」
煙草を指で摘まみ。
迫る大男達を見る。
「さ」
ロイドが。
剣を構える。
「やるか」




