不動砕蟹
左腕の大盾を前へ。
右腕の《巌蟹》を大きく開く。
「――《不動砕蟹》」
――ガチン!!
「…………!」
巨大な鋏が。
地面を挟み込む。
同時に。
ラバタの全身が硬化していく。
腕。
肩。
胸。
脚。
赤い甲殻鎧までが。
一つの巨大な岩のように見えるほど。
硬く。
重く。
変わっていく。
「…………」
ガオンが。
拳を握る。
来る。
「ガオン!!」
――ガチン!!
「⁉︎」
地面を挟んでいた《巌蟹》が。
突然開いた。
――ザッ!!
横。
「なっ――」
速い。
あの巨体が。
一瞬でガオンの視界から外れる。
「こっちガニ!!」
「っ!」
ガオンが振り向く。
だが。
もう遅い。
――ガチン!!
「ぐっ!」
《巌蟹》が。
ガオンの胴を挟み込む。
「捕まえたガニ!」
「はっ!」
ガオンが。
両腕へ力を込める。
「だったら――」
――ゴォッ!!
《灼獅》から。
熱が噴き上がる。
「離させるだけだ!!」
右拳を振り上げる。
だが。
「もう遅いガニ」
「あ?」
ラバタが。
地面を踏み締める。
全身。
硬化。
「この技は」
左腕の大盾を。
ゆっくりと引く。
「地面を固定するための技じゃないガニ」
「…………?」
「お前を固定するための技ガニ」
「!」
《巌蟹》に挟まれた胴が。
動かない。
後ろにも。
前にも。
逃げられない。
「そして」
ラバタ自身が。
さらに硬くなる。
「俺が一番硬い状態で」
大盾を構える。
「逃げられないお前に」
「…………!」
「全部ぶつけるガニ!!」
――ドン!!
ラバタが踏み込む。
「《不動砕蟹》!!」
硬化した大盾が。
ガオンへ迫る。
「はっ!!」
ガオンが笑う。
「上等だぁ!!」
――ゴォォォッ!!
体温が。
一気に跳ね上がる。
《灼獅》を纏った右腕から。
凄まじい熱が噴き出す。
「うおおおおお!!」
拳。
盾。
真正面から。
激突する。
――ドゴォォォォン!!
「ぐぅぅぅぅ!!」
「…………っ!!」
衝撃が。
周囲の瓦礫を吹き飛ばす。
地面に亀裂が走り。
崩れかけた家屋が揺れる。
「おらぁぁぁぁ!!」
ガオンが。
さらに拳を押し込む。
「…………!」
ラバタの盾は。
壊れない。
硬い。
それでも。
「まだまだぁ!!」
――ゴォッ!!
熱が上がる。
もっと。
もっと。
「…………ガニ!」
ラバタの足元が。
僅かに沈む。
「はっ!」
ガオンが。
それを見逃さない。
「動いたぞ、ラバタ!」
「…………!」
「お前の自慢の硬さ!」
さらに。
踏み込む。
「俺がぶち抜いてやる!!」
「調子に乗るなガニ!!」
ラバタも。
大盾を押し返す。
――ミシッ!!
「…………?」
音。
ガオンが。
僅かに目を動かす。
盾ではない。
地面。
二人の足元。
亀裂が。
一気に広がっていく。
「これは――」
――バキィッ!!
「⁉︎」
地面が。
崩れた。
「ガオン!」
「ラバタ!」
二人の身体が。
瓦礫と共に落ちていく。
それでも。
《巌蟹》は。
ガオンを離さない。
「お前……!」
「逃がさないと言ったガニ!」
「はっ!」
落下しながら。
ガオンが笑う。
「なら付き合え!!」
「⁉︎」
ガオンが。
ラバタの肩を掴む。
――ゴォォォッ!!
「《灼獅》!!」
「ガニィ!?」
二人まとめて。
炎と熱に包まれる。
――ドゴォォォン!!
崩れた地面の下。
轟音が響き渡った。




