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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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俺の全部で

「――《断鋏(だんきょう)》」


 ――ガチン!!


「⁉︎」


 巨大な鋏が。


 ガオンの胴を狙って閉じる。


 寸前。


 ガオンが後ろへ跳ぶ。


 ――ガギィン!!


 鋏が噛み合った瞬間。


 重い金属音が響いた。


「…………」


 ガオンが。


 《巌蟹》の鋏を見る。


 さっきまでとは違う。


 表面が赤黒く変化し。


 より重く。


 より硬くなっている。


「硬化させたのか……」


「そうガニ」


 ラバタが。


 硬化した鋏を開く。


「当たれば腕くらい簡単に落ちるガニ」


「はっ!」


 ガオンが。


 《灼獅》を構える。


「じゃあ当たらなきゃいい!」


 ――ドン!!


 地面を蹴る。


 一気にラバタの懐へ。


「おらぁ!」


 右拳。


 ――ブォン!!


「…………」


 ラバタが横へ。


 ――ザッ!!


「!」


 速い。


 また。


 一瞬で拳の軌道から外れる。


「《断鋏》」


「ちっ!」


 ――ガチン!!


 今度は。


 ガオンの首があった場所で。


 巨大な鋏が閉じる。


「危ねぇな!」


「殺すと言ったガニ」


「そうだったな!」


 ガオンが身体を回し。


 裏拳を叩き込む。


 ――ガギィン!!


 左腕の大盾。


 受け止められる。


「だったら!」


 続けて左拳。


 ――ガギィン!!


 右。


 左。


 さらに右。


 ――ガギィン!!


 ――ガギィン!!


 ――ガギィン!!


「おらおらおらぁ!!」


「…………っ」


 拳が叩き込まれるたび。


 ラバタの身体が。


 少しずつ後ろへ押されていく。


「どうした!」


 ――ガギィン!!


「自慢の硬さは!」


 ――ガギィン!!


「こんなもんか!」


「…………」


 ラバタが。


 突然しゃがみ込む。


「?」


 《巌蟹》の巨大な鋏が。


 地面を挟んだ。


 ――ガチン!!


「《 不動殻(ふどうかく)》」


「…………!」


 ラバタの全身が。


 一気に硬化する。


「はぁっ!」


 ガオンが構わず。


 拳を叩き込む。


 ――ドゴォン!!


「…………」


「なっ……」


 動かない。


 さっきまでは。


 僅かにでも後ろへ押せていた。


 なのに。


 今度は。


 一歩も。


「はっ!」


 もう一発。


 ――ドゴォン!!


「…………」


「おらぁ!」


 ――ドゴォン!!


 それでも。


 動かない。


「なんだそりゃ……!」


「地面を挟んだガニ」


「あ?」


「《巌蟹》が地面を固定してるガニ」


 ラバタが。


 大盾の向こうからガオンを見る。


「そこに俺自身の硬化を重ねれば」


「…………」


「お前の馬鹿力でも動かせないガニ」


「はっ……」


 ガオンの口元が。


 また緩む。


「だったら!」


 右腕の《灼獅》から。


 熱が噴き上がる。


「動くまで殴るだけだ!」


「だからそういうところガニ」


 ――ドゴォン!!


「…………っ!」


 さらに強い一撃。


 大盾へ叩き込む。


 それでも。


 ラバタは動かない。


「もう一発!」


「させないガニ」


「⁉︎」


 ラバタが。


 地面から《巌蟹》を外す。


 ――ザッ!!


「消え――」


 横。


「《狭牢(きょうろう)》」


 ――ガチン!!


「ぐっ!」


 ガオンの右腕が。


 巨大な鋏に挟まれる。


「またそれか!」


 腕を引く。


 でも。


 抜けない。


「言ったガニ」


 ラバタが。


 ガオンの右腕を引き寄せる。


「一度挟めば逃がさないガニ」


「だったら左で――」


 ガオンが左拳を握る。


 その瞬間。


 ラバタの身体が。


 赤黒く変化する。


「…………?」


 腕。


 肩。


 胸。


 脚。


 全身。


 硬化。


「おい……」


 ラバタが腰を落とす。


 《巌蟹》で。


 ガオンを固定したまま。


「まさか……」


「逃げられないガニ」


 ラバタの足が。


 地面へ深く沈む。


「受けるガニ」


「はっ!」


 ガオンも。


 《灼獅》を燃え上がらせる。


「上等だ!!」


 ――ドン!!


 硬化したラバタが。


 真正面から突っ込む。


「《磐牢(ばんろう)》!」


「おらぁぁぁ!!」


 ガオンも左拳を。


 振り抜く。


 ――ドゴォォォン!!


「ぐっ!!」


「…………っ!」


 二人の間から。


 凄まじい衝撃が弾ける。


 ガオンの拳は。


 ラバタの大盾へ。


 ラバタの硬化した身体は。


 ガオンへ。


 互いに。


 一歩も退かない。


「ぐぅぅぅ……!」


「…………ガニ!」


 押す。


 押し返す。


 足元の地面が。


 耐えきれずひび割れていく。


「はっ……!」


 ガオンが。


 笑う。


「やっぱり!」


「…………?」


「お前とやるのは楽しいなぁ! ラバタ!」


「…………っ」


 ラバタの顔が。


 一瞬だけ歪む。


「俺は……」


 《巌蟹》が。


 さらに強くガオンを挟む。


「遊んでるんじゃないガニ!」


 ――ドゴン!!


「ぐぁっ!」


 大盾が。


 ガオンの胸へ叩き込まれる。


 それでも。


 《挟牢》によって逃げられない。


 もう一発。


 ――ドゴン!!


「ぐっ!」


「俺は!」


 ――ドゴン!!


「お前を!」


 ――ドゴン!!


「殺しに来たガニ!!」


「…………っ」


 ガオンの口元から。


 血が流れる。


「…………」


 それでも。


 ガオンはラバタを見ていた。


「なら……」


「あ?」


「なんでそんな顔してんだよ」


「…………!」


 ラバタの拳が。


 止まった。


「俺を殺したい奴の顔じゃないだろ」


「…………」


「何があった」


「…………」


「ラバタ」


「……黙るガニ」


「話せ」


「黙るガニ!」


 ――ドゴォン!!


「ぐっ!」


 ガオンの身体が。


 大きく揺れる。


「…………」


 ラバタが。


 歯を食いしばる。


「何も知らないくせに……」


「…………?」


「お前は何も知らないガニ……!」


 《巌蟹》が。


 ゆっくりと開く。


「…………」


 ガオンの右腕が。


 解放される。


 ラバタが。


 一歩下がった。


「ガオン」


「…………」


「次で終わらせるガニ」


 《巌蟹》の鋏が。


 大きく開く。


 全身が。


 先ほど以上に硬化していく。


「俺の全部で」


 地面が。


 ラバタの足元からひび割れる。


「お前を止めるガニ」


「…………」


 ガオンが。


 血を拭う。


「そうか」


 《灼獅》を構える。


「なら来い」


 熱が。


 周囲の空気を揺らす。


「俺も全部で受けてやる」


「…………ガニ」


 ラバタが腰を落とした。

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