本気で来いよ。
――ドン!!
ガオンが地面を蹴る。
迷いなく。
真正面からラバタへ突っ込む。
「おらぁ!!」
《灼獅》を纏った右拳を。
振り抜く。
――ブォン!!
「⁉︎」
いない。
拳が捉えたのは。
何もない空間。
「横ガニ」
「なっ――」
声がしたのは。
右。
――ガチン!!
「ぐっ!」
《巌蟹》の巨大な鋏が。
ガオンの右腕を挟み込む。
「捕まえたガニ」
「はっ!」
ガオンが。
力任せに腕を引く。
「なら――」
抜けない。
「…………?」
もう一度。
強く引く。
「ぐっ……!」
それでも。
《巌蟹》はびくともしない。
「なんだ……こいつ」
「無駄ガニ」
「何?」
「《巌蟹》に挟まれたものは」
ラバタが。
右腕を引き寄せる。
「俺が離すまで逃げられないガニ」
「ほぉ……!」
ガオンの口元に。
笑みが浮かぶ。
「面白い!」
左拳を握る。
「だったら離させる!」
――ブォン!!
ラバタの顔面へ。
拳を叩き込む。
だが。
――ガギィン!!
「くっ!」
左腕の大盾。
ガオンの拳が。
真正面から受け止められる。
「相変わらず硬いな!」
「それがカルキス族ガニ」
ラバタが。
大盾を押し出す。
「お前も知ってるガニ!」
「ぐっ!」
――ドン!!
ガオンの身体が。
大きく押し返される。
それでも。
右腕だけは動かない。
《巌蟹》に挟まれたまま。
「なら!」
ガオンが。
右脚を振り上げる。
「これならどうだ!」
――ドゴォン!!
蹴りが。
ラバタの脇腹へ直撃する。
「ぐっ……!」
初めて。
ラバタの身体が揺れる。
「はっ!」
さらに。
もう一発。
「おらぁ!」
「…………っ」
――ドン!!
今度は腹。
ラバタの身体が。
僅かに浮く。
「まだ離さないか!」
「当たり前ガニ……!」
――ガチッ!!
《巌蟹》が。
さらに強く閉じる。
「ぐっ!」
右腕が。
完全に固定される。
「お前の悪い癖は」
ラバタが。
大盾を引く。
「昔から変わってないガニ」
「あ?」
「捕まってても」
大盾を。
ガオンへ向ける。
「殴ればどうにかなると思ってるところガニ!」
――ドゴォン!!
「ぐぉっ!」
大盾が。
ガオンの顔面へ叩き込まれる。
そのまま。
《巌蟹》が開いた。
「!」
解放されたガオンが。
後ろへ吹き飛ぶ。
――ザザザッ!!
「…………っ」
両脚で地面を削り。
どうにか止まる。
「痛ってぇ……」
口元を。
手の甲で拭う。
「…………」
血。
「はっ!」
それを見て。
ガオンが笑った。
「やるじゃないか!」
「笑ってる場合じゃないガニ」
「久しぶりだからな!」
「…………」
「昔はお前の盾をぶっ壊すのに、何発必要か数えたもんだ!」
「一度も壊せてないガニ」
「そうだったか?」
「そうガニ」
「じゃあ今日が初めてだ!」
「…………」
ラバタが。
小さく息を吐く。
「本当に変わってないガニ」
「お前もな!」
ガオンが構える。
「硬い!」
「…………」
「遅い!」
「…………」
「力も強い!」
「…………」
「それで――」
ガオンの笑みが。
さらに大きくなる。
「横だけ馬鹿みたいに速い!」
「余計なお世話ガニ」
――ザッ!!
「!」
消える。
また。
横。
今度は左。
「分かってるぞ!」
ガオンが。
振り向きざまに拳を放つ。
――ブォン!!
「…………」
ラバタの身体が。
さらに横へ。
――ザザッ!!
「なっ!」
一歩ではない。
ガオンの拳に合わせて。
横へ滑るように移動する。
「遅いガニ」
――ガチン!!
「⁉︎」
今度は。
左脚。
《巌蟹》が。
ガオンの足首を挟み込む。
「しまっ――」
「捕まえたガニ」
ラバタが腰を落とす。
そのまま。
ガオンの脚を持ち上げる。
「うおっ!?」
「飛んでけガニ!」
――ブォン!!
ガオンの身体が。
勢いよく振り回される。
そして。
――ドゴォン!!
「ぐぁっ!!」
崩れた家屋へ。
背中から叩きつけられた。
――ガラガラガラッ!!
瓦礫が。
ガオンの身体へ降り注ぐ。
「…………」
ラバタが《巌蟹》を。
ゆっくりと開く。
「ガオン」
瓦礫の山を。
見つめる。
「俺は本気ガニ」
「…………」
「お前を殺さなきゃならないガニ」
静かになった。
その時。
――ゴォッ!!
「…………!」
瓦礫の隙間から。
熱が噴き出す。
――ドン!!
瓦礫が。
一気に吹き飛んだ。
「だったら……」
煙の中から。
ガオンが立ち上がる。
「そんな辛そうな顔するなよ」
「…………!」
ラバタの表情が。
僅かに強張る。
「殺すんだろ?」
ガオンが。
《灼獅》を構える。
「俺を」
「…………」
「なら」
熱が。
さらに高まっていく。
「本気で来いよ、ラバタ」
「…………ガニ」
ラバタが。
《巌蟹》の鋏を開いた。




