硬ってぇな!
「ラバタ!」
そこに立っていたのは。
黒いサングラスをかけた男。
赤い甲殻鎧を身に纏い。
蟹鋏を思わせる槍と。
甲羅のような盾を手にしている。
「無事だったか!」
「……ガオン」
ラバタが。
僅かに俯く。
「無事だったガニ」
「あぁ!」
ガオンが笑いながら。
ラバタへ近づいていく。
「何が起きてるかは分からんが、これはおそらく反乱だろう」
「…………」
「それも一つの部族じゃない。おそらく複数の部族だ」
「……ガニ」
「俺はこれから王宮に戻る」
ガオンが。
王宮の方角を見る。
「ラバタ、お前も協力してくれ。手練れは多い方がいい」
「…………」
「久しぶりに大暴れでき――」
そこで。
ガオンが言葉を止める。
「いや」
燃える街へ。
視線を向ける。
「こんなことを言っては不謹慎だな」
「…………」
「……しかし」
ガオンの口元に。
また笑みが浮かぶ。
「お前とまた暴れられると思うとな!」
「…………」
「んで……」
「?」
小さな声。
ガオンが。
ラバタを見る。
「なんで……」
「なんだ?」
ラバタが顔を上げる。
「なんでリシェルにやられなかったガニ……」
「は?」
一瞬。
意味が分からなかった。
でも。
すぐに。
「……⁉︎」
――ブォン!!
ラバタの槍が。
ガオンへ振るわれる。
――ガギィン!!
「…………っ!」
ガオンの右腕を覆う《灼獅》と。
蟹鋏の槍が激突する。
ガオンが。
ゆっくりと顔を上げる。
「……ラバタ」
「…………」
「お前まで……」
《灼獅》から。
熱が溢れる。
「あっち側か!!」
「ガオン……」
ラバタが槍を。
握り直す。
「本気で来いガニ」
「…………」
「俺は……」
槍先を。
ガオンへ向ける。
「俺は!」
僅かに。
声が震える。
「……お前を殺すガニ!」
「…………」
ガオンの顔から。
笑みが消える。
そして。
ほんの少しだけ。
寂しそうな表情を浮かべた。
「……そうか」
「…………」
「なら」
ガオンが。
右拳を構える。
「お前が俺を止められるのか?」
熱が。
右腕へ集まっていく。
「ラバタ・カルキス」
「…………」
ラバタも。
真っ直ぐガオンを見る。
「……ガオン・レオニス」
槍を構える。
「訳あって」
盾を前へ。
「御命頂戴するガニ」
「はっ!」
――ドン!!
ガオンが。
一気に踏み込む。
《灼獅》を纏った右拳を。
ラバタへ叩き込む。
――ガギィン!!
「…………!」
甲羅のような盾が。
真正面から拳を受け止めた。
「はっ!」
ガオンの笑みが。
再び戻る。
「相変わらず……」
さらに。
拳へ力を込める。
「硬ってぇな!」
「…………」
ラバタの足は。
僅かに後ろへ滑っただけ。
「お前……」
ラバタの視線が。
ガオンの右腕へ向く。
「腕のそれ……霊器ガニ?」
「《灼獅》か?」
「あぁ」
「いいや!」
「!」
ガオンが左拳を。
振り抜く。
――ガギィン!!
ラバタが。
盾を滑らせるように動かし。
左拳も受け止める。
「…………」
「どうした!」
ガオンが。
楽しそうに笑う。
「そうか……」
「あ?」
ラバタが。
小さく息を吐く。
「じゃあ、お前には勝ち目はないガニ」
「⁉︎」
――ガラン。
「…………?」
ラバタが。
手にしていた槍を捨てる。
さらに。
――ガシャン。
甲羅のような盾も。
地面へ落とした。
「何を……」
ラバタが。
両腕を下ろす。
「来い」
淡い光が。
その身体へ集まっていく。
「――《厳蟹》」
――ズン!!
「…………!」
右腕。
巨大な蟹鋏を思わせる。
無骨な籠手。
そして左腕には。
分厚い甲羅のような大盾。
先ほどまで使っていた武具とは。
明らかに違う。
「霊器……!」
「あぁ」
ラバタが。
巨大な鋏を開く。
「こいつが俺の霊器」
――ガチン!!
鋏が。
重い音を響かせ閉じる。
「《巌蟹》ガニ」
「…………」
ガオンが。
それを見つめる。
そして。
「はっ……」
また。
笑った。
「そういうのを隠してやがったか!」
「…………」
「いいぞ!」
《灼獅》から。
熱が噴き上がる。
「やっぱりお前と戦うのは面白そうだ!」
「…………ガニ」
ラバタが。
左腕の大盾を前へ構える。
右腕の巨大な鋏を。
ゆっくりと開いた。
「来い、ガオン」
「おう!」
――ドン!!
ガオンが地面を蹴る。
迷いなく。
真正面からラバタへ突っ込んだ。




