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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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後悔しても知らないよ

 ――ドゴォォォン!!


「なっ!?」


 《風壁》が。


 一撃で弾け飛ぶ。


 突き抜けた衝撃が。


 パイルの身体まで襲う。


「ぐっ!」


 両腕を交差させるが。


 それでも勢いを殺しきれない。


 ――ドン!!


「っ……!」


 背中から壁へ。


 叩きつけられた。


「ははははっ!」


 リアスが《征蹄》を鳴らしながら。


 床へ着地する。


「どうした!」


「…………」


 パイルは壁へ手をつき。


 ゆっくりと立ち上がった。


「いやぁ……」


 痛む右腕を。


 軽く振る。


「思ってたより、ずっとまずいね」


「だろ?」


「嬉しそうに言わないでよ」


「そりゃ嬉しいだろ!」


 ――ズン。


 リアスが一歩。


 踏み出す。


「…………」


 パイルの視線が。


 その足元へ向く。


 また。


 さっきと同じ。


 床を踏むたびに。


 《征蹄》の光が強くなっている。


 ――ズン。


 二歩目。


「…………」


 間違いない。


「踏み込んだ力を……《征蹄》に溜めてるね」


「あ?」


 リアスが足を止める。


「歩く。走る。跳ぶ」


 パイルが《風穴》を。


 構え直す。


「その時に生まれた力を蓄えて、蹴りと一緒に放つ」


「…………」


「違う?」


 僅かな沈黙。


 そして。


「ははっ!」


 リアスが笑う。


「正解だ!」


「やっぱりかぁ……」


「分かったところで!」


 ――ズン!!


 さらに強く。


 床を踏む。


「どうする!」


「そこなんだよねぇ」


 パイルが苦笑する。


 止めるなら。


 踏ませなければいい。


 でも。


 リアスの戦い方は。


 走る。


 跳ぶ。


 蹴る。


 その全てが《征蹄》へ。


 力を与えている。


 戦えば戦うほど。


 次の一撃が重くなる。


「…………」


 なら。


「走らせなければいいのかな」


「あ?」


 パイルが左手を。


 前へ向ける。


「――《風呼び》!」


 ――ゴォォォッ!!


「!」


 四方から吹き込んだ風が。


 リアスへ集中する。


「また引っ張るつもりか!」


「今回はちょっと違うよ!」


 前から。


 後ろから。


 左右から。


 異なる方向から吹く風が。


 リアスの身体を引っ張る。


「ぐっ……!」


 踏み出そうとした足が。


 止まった。


「なるほどな!」


「君が踏んで溜めるなら」


 パイルが左手を握る。


 風がさらに強くなる。


「踏めなくすればいい!」


「ははっ!」


 リアスが二本の曲刀を。


 床へ突き立てる。


「面白ぇ!」


「ほんと楽しそうだね!」


「でもよぉ!」


 ――ミシッ。


「…………?」


 リアスの右脚の筋肉が。


 大きく膨らむ。


「もう溜まってる分は!」


 《征蹄》に蓄えられた光が。


 一気に右脚へ集まっていく。


「消えねぇぞ!」


「まずっ――」


 ――ドン!!


 床が砕けた。


「!」


 四方から風に引かれながら。


 無理やり跳んだ。


 いや。


 飛んできた。


「おらぁ!!」


「《風壁》!」


 ――ゴォッ!!


 パイルの前に。


 風の壁が立ち上がる。


「同じだ!」


 リアスが空中で身体を回す。


 《征蹄》を纏った踵が。


 風壁へ叩き込まれた。


 ――ドゴォォォン!!


「くっ!」


 また。


 壊された。


 でも。


 今度は違う。


「こっちも溜めてるよ!」


「!」


 パイルは飛ばされず。


 《風穴》をリアスへ向けている。


 《風呼び》を使っている間にも。


 《風穴》は周囲の風を吸い込んでいた。


 その風を。


 内部で圧縮していく。


 いつもの《風砲》よりも。


 さらに多く。


「ちょっと強いよ!」


 《風穴》が。


 低く唸る。


「――《大風砲》!」


 ――ドゴォォォォン!!


「ぐっ!?」


 至近距離から放たれた風が。


 リアスを呑み込む。


 その身体が大きく吹き飛び。


 床を何度も転がった。


「…………」


 パイルが《風穴》を下ろす。


「ふぅ……」


 右腕が。


 僅かに痺れている。


「さすがにこれは……効いたかな?」


「…………」


 瓦礫の中。


 リアスの身体が動く。


「…………は」


「…………」


「ははっ……!」


「まだ笑うんだ……」


 リアスがゆっくりと。


 立ち上がる。


「今のは!」


 口元の血を。


 腕で拭う。


「さっきのより良かったぞ!」


「そりゃそうだよ」


 パイルが苦笑する。


「《風砲》より一つ上だからね」


「上?」


「うん」


 《風穴》を。


 肩へ乗せる。


「《風砲》より多くの風を圧縮して撃ち出す。《大風砲》」


「…………」


「その分、溜めるのに時間がかかるけどね」


「ははっ!」


 リアスの笑みが。


 また深くなる。


「ってことは!」


「…………」


「まだ上があんだな?」


「…………」


 パイルの笑みが。


 僅かに固まる。


「なんでそういうところだけ察しがいいのかなぁ」


「あるんだな!」


「言わないよ?」


「見せろ!」


「嫌だよ!」


「はははははっ!」


 ――ズン。


 リアスが。


 また一歩を踏む。


 《征蹄》へ。


 再び光が溜まっていく。


 ――ズン。


 二歩目。


「…………」


 パイルが。


 その両脚を見つめる。


 また。


 溜め始めた。


「さぁ!」


 リアスが二本の曲刀を。


 大きく広げる。


「次はその上だ!」


「だから見せるって言ってないでしょ!」


「なら!」


 ――ダン!!


「引き出してやる!」


「!」


 《征蹄》が床を蹴る。


 速い。


 さっきより。


 さらに。


「《風呼び》!」


 ――ゴォッ!!


 横から吹きつけた風が。


 リアスの身体を押す。


「ははっ!」


 それでも。


 リアスは無理やり踏み込んだ。


 ――ズン!!


「…………!」


 風に流されながらも。


 止まらない。


 踏み込むたびに。


 《征蹄》へ力が溜まっていく。


「本当に厄介だなぁ!」


「お互い様だ!」


 曲刀が。


 振り下ろされる。


 ――ガキィン!!


「ぐっ!」


 《風穴》で受け止める。


 重い。


 でも。


 まだ蹴りじゃない。


「おらぁ!」


 左の曲刀が。


 横から迫る。


「《風撃》!」


 ――ドン!!


「っ!」


 風をぶつけ。


 軌道を逸らす。


 パイルが一歩。


 後ろへ下がる。


 リアスは。


 すぐに追う。


 ――ズン。


 また踏む。


 《征蹄》へ。


 さらに力が溜まる。


「…………」


 駄目だ。


 止めようとすれば。


 無理やり踏む。


 距離を取れば。


 走って溜める。


 近づけば。


 溜めた力を使った蹴りが来る。


「はははっ!」


 リアスの動きが。


 さらに速くなる。


 壁を蹴り。


 柱を蹴り。


 床を蹴る。


 跳ぶたび。


 走るたび。


 《征蹄》の光が。


 どんどん強くなっていく。


「…………」


 パイルが小さく。


 息を吐く。


「仕方ないかぁ」


「あ?」


 《風穴》を。


 前へ向ける。


「もう一段」


 パイルの周囲で。


 風が渦を巻き始める。


「上げるよ」


「!」


 さっきよりも強い吸引。


 周囲の空気が。


 次々と《風穴》へ流れ込んでいく。


「ははっ!」


 リアスが嬉しそうに。


 笑う。


「それだ!」


「本当に嫌だなぁ、この人……」


 大量の風を吸い込み。


 さらに圧縮していく。


 《風穴》から。


 低い唸りが響く。


 ――ゴゴゴゴゴ……。


「…………!」


 リアスが二本の曲刀を。


 構える。


「来い!」


「後悔しても知らないよ!」


 パイルが右腕を。


 突き出す。


「――《轟風砲》!」


 ――ドゴォォォォォォン!!


 轟音と共に。


 圧縮された暴風が。


 解き放たれた。

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