穴を掘ろう!
◇
「…………」
静かだ。
パイルは。
治療所の。
入口。
そこで。
じっと。
廊下の先を。
見つめていた。
「…………」
遠く。
微かに。
響く。
戦闘音。
それとは。
違う。
「…………」
何か。
いる。
「パイルさん?」
「!」
後ろ。
レテが。
こちらを。
見ている。
「どうかしましたか?」
「…………」
パイルが。
もう一度。
廊下を見る。
「なんだろう……」
「?」
「嫌な感じがする」
「嫌な感じ?」
ユノも。
近づいてくる。
「うん」
姿は。
見えない。
音も。
聞こえない。
だけど。
「何かが……」
近づいている。
そんな。
気がする。
「…………」
パイルが。
後ろを。
振り返る。
治療所。
そこには。
大勢の。
負傷者。
戦える状態じゃない。
者ばかり。
「…………」
ここで。
戦闘になったら。
まずい。
「ここは危険かもしれないね」
「…………!」
レテの。
表情が。
変わる。
「敵ですか?」
「分からない」
「…………」
「でも」
パイルが。
治療所を。
見回す。
「念のため、みんなを安全な場所に移した方がいい」
「安全な場所って……」
フィリアが。
困ったように。
辺りを見る。
「ここから移動するのー?」
「それも危ないよね」
「ですよね」
ユノが。
負傷者達を見る。
「この人数で移動しているところを襲われたら……」
「うーん……」
パイルが。
腕を組む。
「…………」
安全な場所。
敵から。
見つからない。
頑丈で。
この人数が。
入れる。
場所。
「…………」
パイルが。
床を見る。
「…………!」
顔を。
上げる。
「そうだ!」
「?」
「穴を掘って」
「…………」
「そこに隠れていよう!」
「…………」
「…………」
「…………」
三人が。
黙る。
「……穴?」
レテが。
聞き返す。
「うん!」
「ここにですか?」
「うん!」
「…………」
ユノが。
床を見る。
硬い。
石造り。
「でも……」
首を。
傾げる。
「穴掘るのが得意な人なんていますか?」
「…………」
「僕、火ですし」
「あ」
フィリアが。
手を。
上げる。
「私も無理だよー」
「…………」
床を。
覗き込む。
「私、そんな火力ないよー」
「私も……」
レテが。
困ったように。
微笑む。
「受け流すくらいしか……」
「…………」
「…………」
「…………」
三人の。
視線。
パイルへ。
「大丈夫!」
「?」
パイルが。
笑う。
そして。
自分の。
傍らへ。
視線を。
向ける。
「ノック!」
「…………」
「お願いね!」
淡い。
光。
パイルの。
周囲へ。
集まる。
「!」
レテが。
目を。
見開く。
光は。
パイルの。
右腕へ。
集まり。
形を。
作っていく。
右手から。
前腕。
そこを。
覆う。
大きな。
機構。
そして。
その中央。
一本の。
太い杭。
「霊器……」
ユノが。
呟く。
「うん!」
パイルが。
右腕を。
持ち上げる。
「《風穴》!」
「…………」
右腕を。
覆う。
パイルバンカー。
その内部。
――ヒュォォォ……。
「?」
風。
治療所の。
空気が。
僅かに。
動き始める。
「風が……」
フィリアの。
髪が。
揺れる。
周囲の。
風。
それが。
《風穴》へ。
吸い込まれていく。
内部へ。
圧縮され。
蓄えられていく。
「よーし」
パイルが。
床へ。
右腕を。
向ける。
「この辺かな」
「…………」
杭の。
先端。
床へ。
当てる。
「ちょっと離れててね!」
「え?」
「パイルさん?」
「いくよ!」
――ガシュン!!
「!?」
杭が。
撃ち出される。
――ドゴォン!!
床へ。
突き刺さった。
「きゃっ!」
「うわぁ!?」
衝撃。
床に。
亀裂。
「まだまだ!」
――ガシュン!!
――ドゴォン!!
もう一発。
「ちょ、パイルさん!?」
――ガシュン!!
――ドゴォン!!
「ほんとに掘ってるー!?」
「言ったでしょ!」
パイルが。
楽しそうに。
笑う。
「穴を掘るって!」
「そういう意味だったんですか!?」
砕けた。
床。
その下。
土。
「よし!」
パイルが。
《風穴》を。
構え直す。
吸い込んだ。
風。
圧縮。
「今度は」
杭を。
地中へ。
「こっち!」
――ガシュン!!
杭が。
土へ。
突き刺さる。
直後。
蓄えられた。
風が。
放たれる。
――ドォン!!
「!」
土砂が。
押し退けられる。
「すごい……」
レテが。
覗き込む。
ただ。
穴を。
開けているんじゃない。
杭で。
地面を。
穿ち。
圧縮した風で。
土を。
押し退ける。
少しずつ。
地中へ。
空間が。
広がっていく。
「これなら」
パイルが。
額の汗を。
拭う。
「みんな入れそうだね!」
「…………」
ユノが。
穴を見る。
次に。
《風穴》。
そして。
パイル。
「パイルさん」
「ん?」
「それ……」
右腕を。
指差す。
「本当に穴を掘るための霊器なんですか?」
「違うよ?」
「違うんですか!?」
「でも掘れるからいいでしょ!」
「そういう問題かなぁ……」
フィリアが。
苦笑する。
「…………」
レテも。
小さく。
笑う。
だけど。
「…………」
すぐに。
治療所の。
入口へ。
目を向ける。
「パイルさん」
「うん」
パイルも。
笑みを。
消す。
「急ごう」
「…………」
右腕。
《風穴》。
再び。
風を。
吸い込んでいく。
「嫌な感じが」
廊下の。
ずっと。
先。
「どんどん近づいてる」
「…………!」
レテ。
ユノ。
フィリア。
三人の。
表情が。
変わる。
「みんなを地下へ!」
「はい!」
「僕も手伝います!」
「私もー!」
負傷者達を。
守るため。
四人が。
動き出す。
「…………」
その間にも。
少しずつ。
少しずつ。
近づいてくる。
何か。
まだ。
その姿を。
知る者は。
誰もいなかった。




