国を豊かにする力
「冗談を言う理由がない」
「…………」
ログが。
ドルガを見る。
次に。
その手に握られた。
二本の。
折れた石柱。
「…………」
これで。
まだ。
使ってない?
「はっ……」
思わず。
笑いが。
漏れる。
「とんでもねぇな」
「…………」
「なら」
《崩槌》を。
構え直す。
「見せてみろよ」
「何をだ」
「決まってんだろ」
ニッと。
笑う。
「その加護ってやつだ!」
「…………」
ドルガが。
ログを見る。
「後悔するぞ」
「やってから言え」
「……そうか」
ドルガが。
静かに。
息を。
吐く。
足。
腰。
背中。
腕。
全身へ。
力が。
巡る。
「牡牛座の加護」
――ミシッ。
「《膂力強化》」
「…………!」
ドルガの。
全身。
見た目は。
ほとんど。
変わらない。
だけど。
――バキッ!!
「!」
握っていた。
石柱。
そこへ。
指が。
食い込んだ。
「…………」
「マジかよ……」
――ダン!!
「!」
床が。
弾ける。
ドルガ。
真正面。
「っ!」
右から。
石柱。
「おらぁ!」
《崩槌》を。
合わせる。
――ドゴォォォォン!!
「ぐぅっ!?」
重い。
さっきまでとは。
比べ物にならない。
《崩槌》ごと。
両腕が。
弾かれる。
「!」
もう一本。
上。
「《剛墜》」
「っ!」
振り下ろされる。
「《岩壁》!」
――ゴゴゴゴ!!
岩の壁。
せり上がる。
直後。
――ドッゴォォォン!!
「なっ!?」
一撃。
岩壁が。
砕けた。
「くそっ!」
横へ。
飛ぶ。
――ドォォン!!
石柱が。
床へ。
突き刺さる。
「なんつー力だよ!」
「…………」
ドルガが。
石柱を。
引き抜く。
「まだだ」
「!」
来る。
「《岩穿》!」
《崩槌》を。
床へ。
叩きつける。
――ドドドドッ!!
岩の杭。
ドルガへ。
突き上がる。
「…………」
片方の。
石柱を。
手放す。
「?」
ドルガが。
拳を。
握る。
「《剛衝》」
――ドゴォン!!
「はぁ!?」
拳。
一発。
岩杭が。
砕け散る。
「だったら!」
砕けた。
岩。
「《岩砕》!」
――バババババッ!!
無数の。
岩片。
ドルガへ。
殺到する。
「…………」
残った。
石柱を。
横へ。
構える。
――ガガガガガ!!
次々。
砕ける。
岩片。
「そこだ!」
「!」
視界が。
塞がれた。
一瞬。
ログが。
懐へ。
潜り込む。
「おらぁ!!」
――ドゴォン!!
「ぐっ……!」
《崩槌》。
脇腹へ。
直撃。
ドルガの。
身体が。
よろめく。
「へっ!」
入った。
「もう一発!」
「《震踏》」
「!」
ドルガが。
片脚を。
上げる。
――ドン!!
「うおっ!?」
床が。
跳ねる。
砕ける。
足場。
「くそっ!」
体勢が。
崩れる。
「!」
目の前。
拳。
「《剛衝》」
「っ!」
《崩槌》を。
滑り込ませる。
――ドゴォォン!!
「がっ!!」
受けた。
はずなのに。
身体が。
浮く。
――ガシャァン!!
「ぐっ……!」
床を。
転がる。
「痛ってぇ……」
《崩槌》を。
床へ。
突く。
立ち上がる。
「…………」
強ぇ。
単純に。
強い。
「…………」
ドルガが。
落とした。
石柱を。
拾う。
「まだやるのか」
「当たり前だろ」
「…………」
「姫さん渡せってんなら」
《崩槌》を。
肩へ。
担ぐ。
「俺をぶっ倒してからにしろ」
「…………」
淡い。
光。
ログの。
傍ら。
赤茶色の。
牛型の精霊。
「へへっ」
ログが。
そちらを見る。
「なぁ、アルゴス!」
アルゴスが。
淡く。
揺れる。
「お前はやっぱ」
ニッと。
笑う。
「最高に男だぜ!」
「…………」
ドルガが。
アルゴスを見る。
「そいつは雌牛だぞ」
「…………」
「は?」
「あ?」
ログが。
ドルガを見る。
「お前」
「…………」
「アルゴスが見えんのか?」
「あぁ」
ドルガが。
アルゴスを見る。
「立派な雌牛だ」
「…………」
「マジ?」
「あぁ」
「…………」
ログが。
アルゴスを見る。
「…………」
ドルガも。
アルゴスを見る。
「素晴らしいくらい雌牛だ」
「素晴らしいくらいってなんだよ!」
「見れば分かる」
「俺には分かんねぇんだよ!」
「…………」
ドルガが。
今度は。
ログを見る。
「お前……」
「あ?」
「自分の霊器も」
「…………」
「契約している精霊のことも分かっていないのか?」
「…………」
ログが。
黙る。
「…………」
さっき。
《崩槌》の。
力に。
気づいたばかり。
それどころか。
ずっと。
一緒にいた。
アルゴスが。
雌だということすら。
今。
知った。
「…………」
「まぁ……いい」
ドルガが。
小さく。
息を吐く。
「ナーラ姫を渡せ」
「聞こえねぇな」
「…………」
「何回言われても」
《崩槌》を。
構える。
「答えは同じだ」
「……はぁ」
「なんだよ?」
「戦いは苦手なんだけどな」
「…………」
ログが。
周囲を見る。
砕けた。
床。
崩れた。
岩壁。
折れた。
柱。
「今更何言ってんだ」
「…………」
ドルガが。
自分の。
掌を見る。
「俺の力は……」
「…………」
「国を豊かにするための力なんだ」
「…………」
「道を造る」
「家を建てる」
「重い物を運ぶ」
ゆっくり。
拳を。
握る。
「俺達タウルスは」
「そうやって、この力を使ってきた」
「…………」
「だから」
ドルガが。
顔を上げる。
「戦いは苦手だ」
「…………」
「ましてや…………」
一瞬。
言葉が。
止まる。
「殺しに使うなんてな」
「!?」
ログの。
目が。
僅かに。
見開かれる。
「お前……」
「…………」
ドルガが。
二本の。
石柱を。
握る。
「最後に言う」
「ナーラ姫を渡せ」
「…………」
ログが。
後ろを見る。
眠ったままの。
ナーラ姫。
「…………」
そして。
ドルガへ。
向き直る。
「悪ぃな」
「…………」
《崩槌》を。
両手で。
握る。
「やっぱ」
ニッと。
笑う。
「聞こえねぇ」
「…………」
「そうか」
ドルガが。
僅かに。
目を伏せる。
「なら」
再び。
顔を。
上げる。
「仕方ない」
「へっ」
ログが。
《崩槌》を。
構える。
「来いよ」
「…………」
「その国を豊かにする力ってやつ」
腰を。
落とす。
「俺が受け止めてやる」
「…………」
ドルガの。
眉が。
僅かに。
動いた。
――ダン!!
二人が。
同時に。
床を。
蹴った。




