使えるものは使う
走る。
王宮の。
長い廊下を。
ただ。
前へ。
「…………」
ロイドさんが。
先頭。
その後ろを。
セブランさん。
ナーラさんを。
背負ったログ。
そして。
俺。
「…………」
何度も。
後ろを。
振り返りそうになる。
バルガス隊長。
一人で。
本当に――
――ドォォン!!
「!」
後ろ。
さっきまで。
俺達がいた方角。
低い。
爆発音。
「バルガス隊長……」
「止まんな」
「!」
ロイドさん。
振り返らない。
「あの人は」
「…………」
「お前に心配されるほど弱かねぇ」
「…………!」
「前見て走れ」
「……はい!」
走る。
今は。
前へ。
「…………」
ログの。
背中。
ナーラさんは。
まだ。
目を閉じている。
だけど。
呼吸は。
さっきより。
落ち着いてる。
「セブランさん」
「なんだ?」
「ナーラさん、本当に大丈夫なんですよね?」
「あぁ。毒の進行は止めた」
「…………」
「だが、完全に抜けたわけじゃない。安全な場所に着いたら治療を続ける」
「分かりました」
「次を右だ」
セブランさんが。
指を差す。
「その先に大階段がある」
「よし」
ロイドさんが。
曲がる。
俺達も。
続く。
「…………!」
広い。
廊下。
その先。
「止まれ」
「!」
人。
三人。
いや。
もっと。
「…………」
でかい。
全員。
肩幅が。
広い。
俺達を。
待っていたみたいに。
廊下を。
塞いでいる。
「誰だ、てめぇら」
ロイドさんが。
腰の剣へ。
手をかける。
「…………」
返事は。
ない。
その中から。
一人。
男が。
前へ出る。
「…………」
大きい。
周りの奴らも。
大きいけど。
そいつは。
さらに。
一回り。
でかい。
短い。
灰褐色の髪。
太い。
首。
服の上からでも。
分かる。
腕。
肩。
背中。
「…………」
武器は。
持ってない。
男の。
視線が。
俺達を。
通り過ぎる。
「ナーラ姫」
「…………!」
ログの。
背中。
眠ったままの。
ナーラさんへ。
「こちらへ渡してもらおう」
「は?」
ログが。
眉を。
顰める。
「嫌だって言ったら?」
「力ずくで奪う」
「…………」
「へぇ」
ログが。
口元を。
吊り上げる。
「やってみろよ」
「ログ」
「大丈夫っすよ」
ロイドさんが。
剣を。
抜く。
「そいつ背負ったまま無茶すんな」
「分かってます」
「…………」
大男が。
ゆっくり。
前へ。
出る。
「ドルガ……」
「?」
セブランさんが。
男を。
見ている。
「知ってるんですか?」
「あぁ」
「ドルガ・タウルス。タウルス族長の息子だ」
「族長の……」
「…………」
ドルガが。
セブランさんを。
一瞥する。
だけど。
何も。
言わない。
「ナーラ姫を渡せ」
「だから」
ログが。
言う。
「嫌だって言ってんだろ」
「……そうか」
ドルガが。
しゃがむ。
「?」
床へ。
手を。
伸ばす。
「何して――」
指が。
床の。
継ぎ目へ。
掛かる。
「…………え?」
――ミシッ。
「…………」
今。
床。
動いた?
――ミシミシミシ!!
「おいおい……」
ログが。
目を。
見開く。
「まさか」
ロイドさんの。
顔色が。
変わる。
「全員下がれ!!」
「!」
――バキィィィン!!
「うわっ!?」
床が。
剥がれた。
「はぁ!?」
でかい。
床の一部。
それを。
ドルガが。
両腕だけで。
持ち上げる。
「ふん!」
――ドォォォン!!
「うわっ!」
ひっくり返した。
巨大な。
床が。
立ち上がる。
まるで。
壁。
「ログ!!」
「アルト!」
見えない。
ログと。
ナーラさん。
二人が。
向こう側。
「くそっ!」
《砕》を。
握る。
「待ってろ、ログ!」
壁へ。
向かう。
「待て!」
「!?」
ロイドさんが。
腕を。
掴む。
「離してください!」
「前見ろ!」
「え?」
――ザッ。
「…………」
足音。
廊下の。
奥。
一人。
出てくる。
また。
一人。
「…………!」
さらに。
後ろ。
また。
人。
「なんだよ……」
大柄な。
男達。
次から。
次へ。
廊下へ。
出てくる。
「こんなに……」
「チッ」
ロイドさんが。
剣を。
構える。
「こりゃ戻れねぇな」
「でもログが!」
「…………」
ロイドさんが。
壁を。
一度だけ。
見る。
「ログは後だ」
「!?」
「何言ってんですか!」
「見りゃ分かんだろ!」
「でも!」
「あいつも軍人だ!」
「…………!」
「今のお前が戻ったところで、あの壁をどうすんだ」
「…………っ」
何も。
言えない。
「それに」
ロイドさんが。
前を。
睨む。
「ここで全員足止めされたら、バルガス隊長が残った意味もなくなる」
「…………」
「先に進むぞ」
「でも……」
「ログなら」
剣を。
構える。
「自分でどうにかする」
「…………っ」
壁。
その向こう。
「ログ……」
「アルト」
「…………」
《砕》を。
強く。
握る。
「……絶対」
壁へ。
呟く。
「後で来いよ」
「行くぞ!」
「……はい!」
前を。
向く。
「…………」
廊下を。
塞ぐ。
大勢の。
タウルス族。
ロイドさんが。
剣を。
構える。
「ったく……」
その横。
俺も。
《砕》を。
構える。
「簡単には」
「通してくれそうにねぇな」
◇
「…………」
でかい。
壁。
「アルト!」
返事は。
ない。
「…………」
完全に。
分けられたか。
「チッ」
ログが。
舌打ちする。
「…………」
背中。
ナーラ姫。
まだ。
目を。
覚まさない。
「…………」
前。
ドルガ。
こっちに。
残ったのは。
俺と。
ナーラ姫。
そして。
こいつ。
「ナーラ姫を渡せ」
「…………」
「そうすれば、お前に用はない」
「…………」
ログが。
ゆっくり。
息を。
吐く。
「悪いな」
ナーラ姫を。
背負い直す。
「そいつは無理だ」
「……そうか」
「…………」
ドルガが。
歩き出す。
「!」
ログも。
後ろへ。
下がる。
壁際。
瓦礫の。
少ない場所。
ナーラ姫を。
ゆっくり。
寝かせる。
「悪いな、姫さん」
「…………」
「ちょっとだけ」
立ち上がる。
「そこで寝ててくれ」
「…………」
ドルガへ。
向き直る。
「待たせたな」
「ナーラ姫を渡せ」
「しつけぇな」
右手を。
開く。
「嫌だっつってんだろ」
光が。
集まる。
太く。
長い。
柄。
その先。
巨大な。
槌頭。
赤茶色の。
紋様。
打撃面。
牛の角を。
思わせる。
意匠。
霊器。
《崩槌》。
「…………」
ドルガが。
《崩槌》を見る。
そして。
周囲へ。
視線を。
動かす。
「?」
少し先。
折れた。
石柱。
太い。
大人が。
何人いても。
持ち上げられそうにない。
「…………」
ドルガが。
その前へ。
歩く。
しゃがみ。
両手で。
掴む。
「…………」
――ズズズズ……。
「おいおい……」
石柱が。
持ち上がる。
「マジかよ」
巨大な。
折れた柱。
それを。
ドルガが。
肩へ。
担ぐ。
「…………」
ログが。
《崩槌》を。
肩へ。
乗せる。
「そいつでやんのか?」
「使える物は使う」
「へっ」
ログが。
笑う。
「気が合いそうじゃねぇか」
「…………」
「俺も」
《崩槌》を。
握る。
「細けぇこと考えんのは苦手なんだよ!」
――ダン!!
床を。
蹴る。
ドルガも。
石柱を。
振りかぶる。
「おらぁ!!」
《崩槌》。
石柱。
二つの。
巨大な塊が。
真正面から。
――ドゴォォォン!!
ぶつかった。




