みんなでやれば勝てる!
「…………」
誰も。
動かない。
細い。
鞭の先。
揺れる。
毒針。
「…………」
あれに。
触れたら。
終わり。
「ししし」
セトが。
笑う。
「来ないのですか?」
「…………」
「でしたら――」
鞭を。
握る手が。
僅かに。
動いた。
「こちらから」
――パシンッ!!
「!」
来る。
「アルト!」
「はい!」
《砕》を。
構える。
だけど。
「…………!?」
鞭が。
途中で。
軌道を変えた。
「なっ!」
俺じゃない。
狙いは。
「セブランさん!」
「!」
ナーラさんの。
傍。
セブランさんへ。
毒針が。
迫る。
「させるか!」
――ガキィン!!
「ぐっ!」
ロイドさん。
剣で。
弾いた。
「おや」
セトが。
首を。
傾げる。
「邪魔ですねぇ」
「そりゃどうも!」
ロイドさんが。
踏み込む。
速い。
一気に。
距離を詰める。
「はぁっ!」
剣を。
横薙ぎ。
「ししし」
セトが。
身体を。
反らす。
紙一重。
剣先が。
鼻先を。
通り過ぎる。
「!」
そこへ。
「おらぁ!!」
ログ。
《崩槌》が。
横から。
迫る。
「これは」
セトが。
目を。
細める。
「少々危ないですねぇ」
――ドォォン!!
「…………!」
床が。
砕ける。
石片が。
飛び散る。
「避けた!?」
「上だ!」
バルガス隊長の。
声。
「!」
見上げる。
セトが。
宙を。
舞ってる。
あの人。
ログの大槌を。
跳んで。
避けた?
「ししし」
空中で。
身体を。
捻る。
そして。
鞭を。
自分の腕へ。
「…………?」
――チクリ。
毒針が。
刺さった。
「なっ……」
自分に!?
「何して――」
――ドンッ!!
「!?」
消えた。
「アルト!!」
「え?」
目の前。
「こんにちは」
「…………!」
セト!?
速い!
「ししし」
毒針が。
俺の。
首へ。
伸びる。
「っ!」
《砕》を。
上げ――
――ドゴォッ!!
「おや」
寸前。
セトが。
後ろへ。
跳んだ。
「…………!」
俺の。
前。
大きな。
背中。
「バルガス隊長!」
「下がってろ」
「でも!」
「アルト」
「…………!」
低い。
声。
「下がれ」
「……はい」
「…………」
何だ。
今の。
自分に。
毒を刺した途端。
動きが。
変わった。
「……てめぇ」
ロイドさんが。
剣を構える。
「今、自分に毒打ったな?」
「えぇ」
「馬鹿なのか?」
「ししし」
セトが。
楽しそうに。
笑う。
「よく言われます」
「…………」
「毒とは」
自分の。
腕から。
針を抜く。
「身体を害するもの」
「…………」
「扱いを誤れば、当然」
針先から。
一滴。
液体が。
落ちる。
「私も死にます」
「だったら何で――」
「ですが」
セトが。
眼鏡を。
押し上げる。
「正しく理解すれば」
「…………」
「これほど便利なものもありませんよ?」
「…………!」
また。
消えた。
「来るぞ!」
バルガス隊長が。
叫ぶ。
右。
左。
違う。
どこだ!?
――パシンッ!!
「ぐっ!」
「ログ!」
ログの。
《崩槌》へ。
鞭が。
巻き付く。
「このっ!」
引く。
でも。
「ししし」
「!?」
セトが。
自分から。
距離を詰める。
鞭を。
伝うように。
一気に。
ログの前へ。
「二人目」
「っ!」
「ログ!!」
毒針が。
迫る。
その時。
「どぉりゃあ!!」
――ドゴォン!!
「…………!」
また。
バルガス隊長。
「おやおや」
セトが。
大きく。
後ろへ。
跳ぶ。
「…………」
着地。
笑ってる。
「ししし」
「…………」
バルガス隊長は。
追わない。
「隊長?」
「…………」
セトを。
見ている。
その目が。
今までと。
違う。
「…………」
「ロイド」
「あ?」
ロイドさんが。
セトから。
目を離さないまま。
答える。
「なんすか、こんな時に!」
「…………」
バルガス隊長が。
静かに。
言った。
「俺がここに残る」
「!?」
「え?」
ログが。
目を見開く。
「バルガス隊長?」
「…………」
俺も。
一瞬。
意味が。
分からなかった。
「何言ってるんですか!」
「…………」
「みんなでやれば勝てる!」
「あぁ」
バルガス隊長が。
頷く。
「そうかもしれん」
「なら!」
「その代わり」
「…………?」
バルガス隊長の。
目は。
セトから。
離れない。
「こっちも何人か死ぬだろうな」
「…………!」
「隊長……」
「こいつは」
拳を。
握る。
「そういう次元だ……」
「…………」
誰も。
言葉を。
返せない。
「ししし」
静かな。
笑い声。
「随分と」
セトが。
嬉しそうに。
笑う。
「買っていただけたものですねぇ」




