妹の方が大事だ!
リシェルが。
こちらを。
見つめている。
その手には。
《射恋》。
「…………」
来る。
――ヒュッ!
「!」
一本。
正面。
避けない。
右腕を。
振るう。
――キィン!
弾く。
その瞬間。
《射恋》が。
増える。
二本。
四本。
「くっ!」
左腕。
――ガキン!
一本。
身体を。
捻る。
もう一本。
頬を。
掠める。
「…………っ」
残り。
二本。
後ろへ。
「!」
ジル。
侍女。
「させるか!」
踏み込む。
両腕を。
振り抜く。
――キン!
――ガキン!
二本とも。
叩き落とす。
「…………」
リシェルが。
僅かに。
目を細める。
「やはり」
「…………?」
「守りながらでは、満足に戦えないようですね」
「…………」
その通りだ。
だから。
「…………」
もう。
十分。
「ふぅ……」
息を。
吐く。
身体の熱を。
これ以上。
上げるのを止める。
「…………?」
リシェルが。
眉を寄せた。
「終わりですか?」
「…………」
両腕。
《灼獅》には。
十分すぎるほどの。
熱が。
溜まっている。
「あぁ」
「…………」
「終わりだ」
リシェルの。
目が。
鋭くなる。
右手。
三本の。
《射恋》。
「なら――」
「待て」
「?」
「一つ」
リシェルを。
見る。
「言っておく」
「何でしょう?」
「俺は」
両腕を。
下ろす。
「この国を裏切っていない」
「…………」
「何を見たのか」
「…………」
「誰から何を聞いたのか」
「…………」
「俺には分からない」
でも。
「俺がルミナスを裏切ることだけは」
リシェルを。
真っ直ぐ。
見る。
「絶対にない」
「…………」
一瞬。
静寂。
「……今さら」
リシェルが。
《射恋》を握る。
「そのような言葉を――」
「そうか」
「?」
「なら」
振り返る。
「今はそれでいい」
「…………!」
走る。
ジルへ。
「なっ――」
「ジル!」
抱き上げる。
「ガオン様……?」
侍女が。
こちらを見る。
「すまない」
「え?」
空いた腕で。
侍女の身体を。
担ぎ上げる。
「きゃっ!」
「少し我慢してくれ」
「ガ、ガオン様!?」
「動くな」
ジル。
片腕。
侍女。
肩。
「…………っ」
重い。
身体中。
痛い。
だが。
これくらい。
「何をするつもりです!」
背後。
リシェル。
「…………」
答える必要はない。
――ヒュッ!
「!」
音。
来る。
「くっ!」
身体を。
捻る。
――ガン!
《射恋》が。
足元へ。
突き刺さる。
「ガオン!」
「…………」
止まらない。
そのまま。
走る。
「逃がしません!」
――ヒュッ!
一本。
そして。
増える。
「…………っ!」
避ければ。
二人に当たる。
ならば。
振り返る。
片腕。
ジルを。
抱いたまま。
《灼獅》を。
突き出す。
「邪魔だ!」
――ドォン!!
掌から。
熱が。
噴き出す。
「!」
迫っていた。
《射恋》が。
まとめて。
吹き飛ぶ。
「…………!」
リシェルが。
腕で。
顔を庇う。
今だ。
「…………」
走る。
出口じゃない。
真正面。
壁。
「ガオン?」
「悪いな」
《灼獅》を。
壁へ。
向ける。
「付き合っている暇はない!」
――ガシュン!!
両腕の。
《灼獅》が。
大きく。
開く。
溜め込んだ。
熱。
全部。
「吹き飛べぇぇぇ!!」
――ドォォォォォン!!
轟音。
壁が。
爆ぜる。
「…………!」
石片が。
外へ。
吹き飛ぶ。
土煙の向こう。
開いた。
大穴。
「行くぞ!」
「えっ!? ガオン様!?」
返事を。
待たず。
踏み込む。
「待ちなさい!」
背後から。
リシェルの声。
「…………」
聞くな。
「ガオン!」
「…………っ!」
また。
胸が。
ざわつく。
足が。
止まりそうになる。
振り返れ。
戻れ。
そんな。
感情が。
湧き上がる。
「…………くっ!」
腕の中。
眠る。
ジルを見る。
「………」
何が。
乙女座だ。
「はっ!」
「俺には――」
一歩。
大穴へ。
踏み出す。
「妹の方が大事だ!」
そのまま。
外へ。
飛び出した。




