俺がやるべきこと
「くそっ……」
間違いない。
まともに。
やり合うのは。
まずい。
杭だけじゃない。
リシェル。
俺の心にまで。
何かしている。
「…………」
リシェルが。
ゆっくり。
右手を上げる。
指の間には。
一本の。
《射恋》。
「まだ抵抗するのですか?」
「当然だ」
「…………」
リシェルの。
目が。
細くなる。
「そうですか」
――ヒュッ!
「!」
来る!
一本。
真正面。
「…………」
いや。
一本とは。
限らない。
――ヒュヒュヒュッ!
「やはり!」
増える。
四本。
さらに。
八本。
「くっ!」
右腕を。
振るう。
――キン!
一本。
左。
――キィン!
二本。
残りは。
身体を捻って。
躱す。
――ガン!
――ガガン!
壁。
床。
柱。
次々と。
杭が突き刺さる。
「…………」
また。
増えた。
この部屋に。
《射恋》が。
「…………っ」
まずい。
リシェルにとって。
外した杭は。
外れじゃない。
全て。
次の攻撃に。
利用できる。
「…………」
ならば。
近づく!
「はぁっ!」
踏み込む。
「…………」
リシェルは。
動かない。
「っ!」
《灼獅》を。
振り抜く。
顔じゃない。
肩。
そこを。
狙って――
「…………っ」
腕が。
鈍る。
まただ。
「…………!」
リシェルの。
顔が。
目の前。
傷つけたくない。
「くそっ!」
無理やり。
腕を振るう。
「!」
リシェルが。
僅かに。
首を傾ける。
銀爪が。
髪を掠めた。
「…………」
避けられた。
いや。
違う。
俺が。
躊躇した。
「……どうして」
「?」
「どうして私を傷つけようとするのです?」
「…………っ」
その声。
耳を貸すな。
「私は」
一歩。
リシェルが。
近づく。
「貴方と争いたくなどありません」
「嘘をつくな」
「本当ですよ?」
「ならば霊器を収めろ」
「それはできません」
「…………」
なのに。
声を聞いていると。
本当に。
俺の方が。
間違っているような。
「…………っ」
違う。
惑わされるな。
リシェルは。
最初から。
俺を攻撃している。
「俺を裏切り者と呼び、攻撃したのは貴様だろ」
「…………」
「それで争うつもりはない?」
《灼獅》を。
構え直す。
「言っていることが矛盾しているぞ」
「…………ふふ」
「?」
笑った?
「思っていたより」
リシェルが。
一本の《射恋》を。
取り出す。
「頑固なのですね」
「…………」
ぞくっ。
背中に。
寒気。
「来る……!」
――ヒュッ!
一本。
「!」
横へ。
避ける。
――キィン!
「っ!」
後ろ。
先ほど。
壁に刺さった杭。
ぶつかる。
跳ねる。
「そこか!」
身体を。
沈める。
頭の上を。
杭が通る。
「読める!」
今度は。
分かる。
どこに。
杭があるのか。
俺も。
位置を覚えれば――
――キン!
「…………?」
音。
右?
いや。
左!
「っ!」
振り向く。
一本の杭が。
柱に刺さった杭へ。
当たり。
さらに。
跳ねる。
「二度も!?」
その先。
俺じゃない。
「…………!」
ジル!
「させるか!」
走る。
間に。
身体を入れる。
――ガキン!
《灼獅》で。
弾き飛ばす。
「…………っ」
心臓が。
大きく。
跳ねる。
「リシェル!」
睨みつける。
「ジルを狙うな!」
「…………」
返事はない。
リシェルの。
手には。
すでに。
次の《射恋》。
「…………」
駄目だ。
近づけば。
あの妙な力で。
攻撃を躊躇する。
離れれば。
《射恋》。
しかも。
俺は。
後ろの二人から。
離れられない。
「…………」
どうする。
どうすれば。
リシェルを――
「…………?」
いや。
待て。
なぜ。
倒すことを。
考えている?
「…………」
目的は。
リシェルを。
倒すことじゃない。
ジルを。
見つけた。
侍女も。
見つけた。
ならば。
俺が。
やるべきことは――




