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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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白銀の仮面

 後ろから。


 兵士達の。


 悲鳴が聞こえる。


「ぐぁっ!」


「な、なんだこいつ!」


「怯むな! 囲め!」


「…………」


 振り返らない。


 今は。


 こいつらに構ってる時間はない。


「はぁ……はぁ……!」


 走る。


 傷口が。


 痛む。


 身体も。


 重い。


 それでも。


「ジル!!」


 声を張り上げる。


「ジルー!!」


 返事はない。


「くそっ……!」


 どこだ。


 どこにいる。


「ジル!!」


 道を曲がる。


 建物の中を覗く。


「…………」


 いない。


「次!」


 また。


 走る。


「ジルー!!」


 頼む。


 返事してくれ。


 怪我しててもいい。


 泣いててもいい。


 怒っててもいい。


 だから。


「ジル!!」


 無事で。


 いてくれ。


「――おーい!」


「!?」


 声。


 女?


「こっちこっちー!」


「…………?」


 振り返る。


 少し離れた。


 建物の前。


 一人の女が。


 立っていた。


「…………」


 白い。


 マント。


 ルミナスの兵士じゃない。


 見たことのない。


 格好。


 そして。


 顔には。


 白銀の仮面。


 額から。


 鼻先までを覆い。


 目元は。


 完全に隠れている。


 見えるのは。


 口元だけ。


「おーい!」


 女が。


 大きく。


 手を振る。


 仮面の下。


 見えている口元が。


 にっと。


 笑った。


「お探しはこの子かなー?」


「…………!」


 女の。


 腕の中。


 小さな身体。


 見慣れた。


 髪。


「…………」


 見間違えるわけがない。


「ジル!!」


 走る。


 身体の痛みなんて。


 一瞬で。


 全部吹き飛んだ。


「ジル!」


「おっと!」


 女の前まで。


 一気に駆け寄る。


「ジル! ジル!」


「しーっ!」


「!」


 女が。


 口元へ。


 指を立てた。


「寝てるよ」


「…………」


 見る。


 女の腕の中で。


 ジルは。


 目を閉じている。


 胸が。


 ゆっくり。


 上下している。


 すぅ。


 すぅ。


 小さな。


 寝息。


「…………ジル」


 生きてる。


「よかった……」


 膝から。


 力が抜けそうになる。


「お探しは、この子で合ってた?」


「あぁ!」


「よかったー!」


 女が。


 嬉しそうに笑う。


「はい!」


「え?」


 あまりにも。


 あっさり。


 ジルを。


 差し出してきた。


「…………」


 両腕で。


 受け取る。


「ジル……」


 温かい。


「怪我は!?」


「大丈夫だよー」


「本当か!?」


「うん! 疲れて寝ちゃっただけ!」


「…………」


 ジルの身体を見る。


 目立った傷は。


 ない。


「…………よかった」


 そっと。


 抱き締める。


「よかった……!」


 しばらく。


 ジルの顔を見つめる。


 それから。


 顔を上げた。


「…………」


 何者かは。


 分からない。


 顔も。


 ほとんど見えない。


 見たことのない。


 白いマント。


 どう考えても。


 怪しい。


 でも。


「何者か知らないが……」


「ん?」


「礼を言う」


 女へ。


 頭を下げる。


「妹を助けてくれて、ありがとう」


「…………」


「?」


 仮面の下。


 女の口が。


 ぽかんと開く。


「わぁ!」


「うおっ!?」


「この場面でお礼できるなんて偉いね!」


「……は?」


「偉い偉い!」


「…………」


 なんだ。


 この人。


「妹を助けてもらったんだから、礼くらいするだろ」


「へぇー!」


「…………」


 なんで。


 そんなに感心するんだ。


「……貴女は何者だ?」


「あーし?」


「あぁ」


「うーん……」


 女が。


 少し考える。


 そして。


 仮面の下。


 口元が。


 にっと笑った。


「秘密!」


「……は?」


「じゃ! バイバーイ!」


「ちょっと待て!」


「あ!」


「?」


 女が。


 思い出したように。


 振り返る。


「その子のお付きの人も奥で気絶してるよー!」


「なに!?」


 女が。


 建物の奥を指差す。


「ちゃんと生きてるから安心して!」


「…………!」


「じゃあ今度こそ――」


 ひらひらと。


 手を振る。


「バイバーイ!」


「お、おい!」


 白いマントを。


 翻し。


 女は。


 去っていく。


「…………」


 なんなんだ。


 あの人。


 追いかけたい。


 聞きたいことも。


 山ほどある。


 でも。


「…………」


 腕の中を見る。


「ジル……」


 小さな。


 寝息。


「…………」


 今は。


 いい。


「よかった……」


 ジルを。


 もう一度。


 抱き締める。


「本当に……よかった」

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