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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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六部族

 ロイド隊長が。


 壁にもたれたまま。


 セブランさんを見る。


「ガオン王子が反乱を起こした……ねぇ」


「はい」


「それだけじゃねぇんだろ?」


「…………」


 セブランさんが。


 静かに頷いた。


「王子の反乱が伝えられたのと、ほぼ同じ頃です」


「何があった?」


「各部族でも動きがありました」


「部族?」


「はい」


 セブランさんが。


 俺達を見回す。


「族長や有力者の一部が兵を率い、反乱を始めたんです」


「…………!」


「王宮だけじゃないのか」


 ログが。


 表情を険しくする。


「どこの部族ですか?」


 レテが聞く。


「…………」


 セブランさんが。


 一つずつ。


 名前を挙げていく。


「カルキス族」


「ピシエル族」


「タウルス族」


「ヴィルネ族」


「カプリス族」


「…………」


 そこで。


 言葉が止まった。


「まだあるのか?」


 バルガス隊長が聞く。


「はい」


 セブランさんが。


 僅かに目を伏せる。


「そして……」


「…………」


「スコルネ族」


「!」


 全員の視線が。


 一斉に。


 セブランさんへ向いた。


「…………」


 セブランさんは。


 何も言わない。


「スコルネって……」


 俺が。


 口を開く。


「セブランさんの……」


「あぁ」


 セブランさんが。


 静かに頷く。


「私の一族だ」


「…………」


「じゃあ」


 フィリアが。


 少し警戒したように聞く。


「セブランさんも……反乱に?」


「フィリア」


 バルガス隊長が。


 止める。


「でも……」


「疑うのは当然です」


「…………」


 セブランさんが。


 フィリアを見る。


「私が君達の立場でも、同じことを考える」


「…………」


「ただ」


 診療所の中へ。


 視線を向ける。


「私は参加していない」


「…………」


 横たわる。


 大勢の負傷者。


 その中には。


 さっきまで。


 セブランさんが治療していた人もいる。


「今の私にできるのは」


 腰の。


 革鞄へ手を置く。


「怪我をした人間を治すことだけだ」


「…………」


「同じ一族の人間が何を考え、なぜ反乱に加わったのか……私にも分からない」


「一族全員が反乱に参加しているわけじゃねぇのか?」


 ロイド隊長が聞く。


「もちろんです」


「…………」


「反乱を主導しているのは、各部族の族長や一部の有力者。それに従った者達です」


「なるほどねぇ……」


 ロイド隊長が。


 煙草を咥えたまま。


 頭を掻く。


「部族丸ごと敵ってわけじゃねぇと」


「はい」


「そりゃそうか」


 パイルさんが。


 腕を組む。


「ここにもルミナスの人達がいる。出身部族まで分からないもんね」


「その通りです」


「…………」


 俺は。


 指を折る。


「カルキス……ピシエル……タウルス……ヴィルネ……カプリス……スコルネ……」


 六つ。


「……多くない?」


「あぁ」


 バルガス隊長が。


 腕を組む。


「十二部族のうち半数だ」


「半分……」


 それだけの部族が。


 一斉に。


 反乱?


「待ってください」


 ユノが。


 いつもの笑みを消して。


 セブランさんを見る。


「そんなに多くの部族が同時に動いたんですかぁ?」


「…………」


「あまりにも……」


 一度。


 言葉を選ぶ。


「タイミングが合いすぎてません?」


「俺もそこが気になってた」


 ロイド隊長が。


 煙草を指に挟む。


「王宮が襲われた」


「…………」


「ガオン王子が反乱を起こしたって話が広まった」


「…………」


「それとほぼ同時に」


 一本ずつ。


 指を立てる。


「六つの部族が動いた」


「…………」


 煙を吐く。


「偶然にしちゃあ……出来すぎだよなぁ」


「事前に示し合わせていた?」


 ログが聞く。


「そう考えるのが普通だろうな」


 バルガス隊長が。


 低い声で答える。


「だが……」


「?」


「それだけの規模の反乱だ」


 腕を組んだまま。


 セブランさんを見る。


「準備なしでできるわけがねぇ」


「…………」


「兵を集める」


「武器を揃える」


「各部族と連絡を取り合う」


「…………」


「どこかで必ず動きが出る」


 ロイド隊長が。


 続ける。


「なのに」


「…………」


「俺達は何も掴めなかった」


 誰も。


 言葉を返せない。


 王宮の火事すら。


 見えなかった。


 そして。


 六つもの部族が。


 同時に動いた。


「…………」


 なんだ?


 この国で。


 一体。


 何が起きてるんだ?


「セブラン」


 バルガス隊長が聞く。


「ガオン王子は今どこにいる?」


「…………」


 俺は。


 顔を上げる。


 セブランさんが。


 ゆっくりと首を振った。


「分かりません」


「…………」


「王宮が襲われた後」


 一度。


 焼けた王宮の方角を見る。


「ガオン王子の姿を見た者は、私の知る限りでは誰もいません」


「…………ガオン」


 無意識に。


 拳を握る。


「ただ」


「!」


 セブランさんが。


 俺を見る。


「亡くなったという話も聞いていない」


「…………!」


「なら」


 俺は。


 立ち上がる。


「生きてる」


「アルト?」


「ガオンは生きてる!」


 絶対。


 そうだ。


「あいつが」


 あの。


 馬鹿みたいに笑う。


 暑苦しい奴が。


「こんなところで死ぬわけない!」


「ダッハハハハ!」


「!」


 バルガス隊長が。


 豪快に笑う。


「そうだな!」


 そして。


 立ち上がる。


「ならやることは決まった!」


「…………!」


「何が起きてるのか調べる!」


 俺達を。


 見回す。


「反乱を起こした奴らの目的を探る!」


 そして。


「ガオン王子を見つけ出す!」


「はい!」


 俺達の声が。


 診療所に響いた。

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