セブラン・スコルネ②
セブランさんの後を。
俺達は進んでいく。
「…………」
先頭には。
セブランさんと。
ロイド隊長。
その後ろを。
怪我人を運びながら。
俺達がついていく。
「…………」
そういえば。
さっきは。
怪我人のことで頭がいっぱいで。
ちゃんと見てなかった。
セブランさん。
結構。
背が高い。
細身で。
灰色がかった黒い髪は。
少し長く。
後ろで。
緩く束ねられている。
肌は。
少し白い。
横顔から見える瞳は。
淡い緑色。
着ているのは。
白を基調とした長い服。
多分。
医者が着るものなんだと思う。
でも。
袖には血がついていて。
裾も。
泥で汚れている。
腰には。
小さな革の鞄。
さっきも。
そこから包帯や。
治療に使う道具を出していた。
「…………」
武器は。
持ってないみたいだ。
「……ん?」
「!」
セブランさんが。
こっちを見た。
「さっきから、どうした?」
「あっ、すみません!」
「いや」
少しだけ。
笑う。
「随分見られていたから、何か付いているのかと思ってね」
「いや、そうじゃなくて!」
どうしよう。
めちゃくちゃ見てた。
「えっと……」
そうだ。
「スコルネって、みんなお医者さんなんですか?」
「スコルネ?」
「はい」
前を歩く。
ロイド隊長を見る。
「さっきロイド隊長が、医者の一族って言ってたから」
「あぁ」
セブランさんが。
納得したように頷く。
「全員というわけではないよ」
「違うんですか?」
「もちろん」
少し。
歩く速度を落として。
俺の隣へ並ぶ。
「スコルネには医術を学ぶ者が多い。それだけだ」
「へぇ……」
「代々、医術に携わる家も多いからね。それで医者の一族と呼ばれることがある」
「じゃあ、セブランさんも?」
「あぁ」
セブランさんが。
腰の革鞄へ。
軽く手を置く。
「私も幼い頃から学んできた」
「すごいなぁ……」
「そうか?」
「だって!」
さっきの。
怪我人を見る。
「俺なんて、助けなきゃって思って近づいただけで……肋骨が折れてるかもしれないなんて全然分からなかったし」
「それは当然だ」
「え?」
「君は医者ではないだろう?」
「はい」
「なら、分からなくて当たり前だ」
「…………」
「それぞれに」
セブランさんが。
前を見る。
「できることがある」
「…………」
「君にしかできないことも、きっとあるさ」
「俺にしか……」
なんだろう。
精霊を。
助けること?
「それに」
「?」
「さっき君は、真っ先に彼を助けようとしたね?」
「あ……」
「知識は学べる」
セブランさんが。
俺を見る。
「だが、倒れている人間を見て、すぐに手を差し伸べられるかは別だ」
「…………」
なんか。
ちょっと。
恥ずかしい。
「ありがとうございます……」
「礼を言われるようなことではないよ」
セブランさんが。
小さく笑う。
「…………」
優しい人だな。
「おーい!」
「!」
前から。
バルガス隊長の声。
「二人とも! 遅れるな!」
「あっ!」
「ダッハハハハ! アルト! お前は本当にすぐ逸れそうになるな!」
「逸れてませんよ!」
「同じことさっきも言ってたよね!」
フィリアまで。
「今回はセブランさんと話してただけだから!」
「アルト」
ログが。
呆れた顔をする。
「歩きながらでも前見ろよ」
「見てるよ!」
「見てなかっただろ」
「見てた!」
「はいはい」
「ふふっ」
「レテまで笑わないでよ!」
「す、すみません」
全然。
すみませんって顔じゃない。
「仲がいいんだな」
セブランさんが言う。
「そう見えます?」
「あぁ」
「…………」
みんなを見る。
「まぁ……」
ちょっとだけ。
笑う。
「はい!」
「そうか」
セブランさんも。
微笑んだ。
「なら、大切にするといい」
「はい!」
「…………」
それから。
少し歩いて。
「見えてきた」
セブランさんが。
前を指差す。
「?」
建物が。
いくつか並んでいる。
「今は使われていない診療所だ」
「診療所?」
「あぁ」
「そこなら、ひとまず安全だ」
セブランさんが。
怪我人を見る。
「中に他の負傷者もいる」
「他にも……」
「あぁ」
セブランさんの表情が。
少しだけ。
真剣になる。
「詳しい話は、中でしよう」
「よし!」
バルガス隊長が。
俺達を見る。
「まずは怪我人を運ぶぞ!」
「はい!」
俺達は。
セブランさんに案内され。
診療所へと向かった。




