集合地点②
「…………」
ロイド隊長が。
剣を鞘へ納める。
でも。
その視線は。
まだ俺から離れない。
「…………」
なんだろう。
すごく。
居心地が悪い。
「ロイド」
「あー……分かってますよ」
バルガス隊長に言われ。
ようやく。
俺から目を逸らした。
「身内なんでしょ?」
「あぁ」
「なら……まぁ、いいっすけど」
そう言いながら。
頭を掻く。
「…………」
さっきまでの。
あの鋭さが。
嘘みたいに消えていた。
「アルトくん」
「?」
パイルさんが。
小さな声で話しかけてくる。
「大丈夫?」
「はい……」
首元を。
そっと触る。
「びっくりしましたけど……」
「そう」
パイルさんが。
ロイド隊長を見る。
「悪い人じゃないから」
「…………」
本当に?
「おい……聞こえてんぞー……」
「あ、聞こえてた?」
「聞こえるように言っただろ……」
「ははは!」
「ったく……」
ロイド隊長が。
懐から煙草を取り出す。
一本。
口に咥え。
火をつける。
「…………」
煙を吐きながら。
ちらりと。
また俺を見る。
「バルガス隊長」
「ん?」
「あのガキは精霊術師ですか?」
「…………」
俺のことだ。
「いや……」
バルガス隊長が。
少し考える。
「正確には違う」
「…………」
ロイド隊長の。
長い前髪の奥。
その視線が。
俺へ向く。
「……一般兵ってことですかい?」
「んー……まぁ」
バルガス隊長が。
腕を組む。
「そうじゃな」
「…………」
「正直、特殊な扱いだな」
「…………」
煙草の煙が。
ゆっくりと上がっていく。
「……めんどくせぇな」
「聞こえてますよ!」
「聞こえるように言ったんだよ……」
「なんなんですか!」
「ダッハハハハ!」
バルガス隊長が。
豪快に笑う。
「まぁ、そのうち分かる!」
「そのうちって……」
ロイド隊長が。
面倒そうに頭を掻く。
「そういうのが一番嫌なんすよ……」
それから。
ルミナスの方角へ目を向けた。
「んじゃ……」
煙草を。
指に挟む。
「そろそろ仕事しますかねぇ……」
「頼むぞ!」
「はいはい……」
気の抜けた返事。
でも。
次に口を開いた時。
その声が。
少しだけ変わった。
「こっから先」
「…………」
「何が起きてもおかしくねぇと思ってください」
全員が。
ロイド隊長を見る。
「俺達、国境警備隊もずっとルミナスには目を光らせてました」
人の出入り。
物資。
ルミナス側の兵士の動き。
「おかしな動きがねぇか……ずっと見てた」
「…………」
「でも」
一度。
煙を吐く。
「今回の件に繋がるような兆候は、こっちじゃ掴めなかった」
「…………」
バルガス隊長の表情が。
僅かに険しくなる。
「一切か?」
「一切」
「…………」
「だから気持ち悪ぃんすよ」
ロイド隊長が。
ルミナスの方を見る。
「これだけのことやろうって連中が……何の準備もしてねぇわけないでしょ?」
「そうだな」
「それなのに」
俺達を見る。
「誰も気づかなかった」
「…………」
さっきまで。
面倒くさい。
帰りたい。
そんな雰囲気を出していた人とは。
まるで違う。
「まぁ……」
ロイド隊長が。
煙草を地面へ落とす。
靴で。
火を消す。
「考えても分かんねぇもんは分かんねぇ」
「おい!」
「だから見に行くんでしょうが……」
「ダッハハハハ!」
バルガス隊長が。
笑う。
「それもそうだ!」
「朝から元気っすねぇ……」
ロイド隊長が。
俺達を見渡す。
「とりあえず」
気怠そうに。
頭を掻く。
「勝手な行動はしない」
「…………」
「怪しい奴がいても、勝手に追わない」
「…………」
「仲間とはぐれたら、無理に探さない」
そして。
「死にそうなら逃げる」
「…………」
その言葉だけは。
はっきりしていた。
「英雄ごっこしに行くんじゃねぇんで」
前髪の奥から。
俺達を見る。
「生きて帰りましょうねぇ」
「はい!」
「特にお前な」
「俺!?」
また。
俺を指差してる。
「なんで俺なんですか!」
「なんか一番やらかしそう」
「会ったばっかりですよね!?」
「勘」
「なんで!?」
「ダッハハハハ!」
「あっはははは!」
「フィリアまで笑うなよ!」
「だって! もうバレてる!」
「何が!?」
「ダッハハハハ!」
なんなんだ。
この人達。
「んじゃ……」
ロイド隊長が。
俺達へ背を向ける。
「行きますかぁ」
「おう!」
俺達も。
その後へ続く。
「…………」
目の前。
その先にあるのは。
星詠国家。
ルミナス。
ガオンの国。
「…………ガオン」
待ってろ。
今。
行くから。




