↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
337/475

合流地点

     ◇ ◇ ◇


 合流地点。


「…………」


 着いた。


 着いちまった。


「……早く来いって言われてもなぁ」


 近くの木にもたれ。


 煙草を咥える。


「いつ来るか分かんねぇんじゃ、待つしかねぇじゃん……」


 煙を吐く。


「はぁ……」


 暇だ。


「酒でも持ってくりゃよかったな……」


 もう一本。


 煙草でも吸うか。


 そう思った。


 その時だった。


 ――ドドドドドドドドドドッ!


「…………あ?」


 地面が。


 微かに震える。


 遠くから。


 何かが近づいてくる。


「…………」


 なんだ?


 この音。


 馬?


 いや。


 馬車か?


 音は。


 どんどん大きくなっていく。


「……うるせぇな」


 煙草を捨て。


 近くの木へ登る。


 枝に腰を下ろし。


 音のする方を見る。


「…………」


 土煙。


 その中から。


 何かが見えてきた。


「…………は?」


 馬車。


 多分。


 馬車だ。


 だが。


 その上には。


 でけぇ帆みたいなもんが付いている。


 それが。


 風を受けながら。


 とんでもねぇ速度で。


 こっちへ向かってくる。


「なんだ……あれ……」


 しかも。


 うるせぇ。


「ダッハハハハ!」


「あっはははは!」


「アルトくーん! 大丈夫ですかー!」


「じゃなぁぁぁぁい!」


「…………」


 なんか。


 すげぇ騒がしい。


 笑ってる奴。


 心配してる奴。


 何か叫んでる奴。


 そして。


 馬車が止まると。


 一人のガキが。


 ふらふらと降りた。


「うっ……おぇ……」


「…………」


 地面に手をついて。


 吐いている。


「…………」


 木の上から。


 その光景を眺める。


「……帰りてぇ」


     ◇ ◇ ◇


「ダッハハハハ! すごいな! 今日中に着くなんて!」


 バルガス隊長が。


 豪快に笑っている。


「うっ……」


 俺は。


 それどころじゃない。


「おぇ……」


 気持ち悪い。


 もう。


 絶対ソリなんて乗らない。


 レテから貰った水で。


 なんとか。


 吐き気も落ち着いてきた。


「…………ん?」


 バルガス隊長が。


 辺りを見回す。


「ロイドめ……まだ来てないのか?」


「とっくに着いてますよ」


「?」


 声。


 どこから?


 上?


 見上げる。


「…………」


 木の枝に。


 一人の男が座っていた。


 黒い髪。


 寝起きみたいに。


 あちこちへ跳ねた。


 ボサボサの髪。


 前髪は長く。


 目元が。


 ほとんど隠れている。


 口元には。


 無精髭。


 軍服は着ている。


 でも。


 アーヴェル隊長達みたいに。


 きっちりと着こなしている感じじゃない。


 最低限。


 軍人に見える程度には整えている。


 そんな感じ。


 そして。


 腰には。


 ガイスト軍でよく見る。


 標準装備の剣が一本。


「…………」


 この人が?


「なんだ」


 バルガス隊長も。


 男を見上げる。


「お前、なんでそんなところにいる」


「そりゃ……」


 男が。


 気怠そうに頭を掻く。


「意味の分からん馬車が轟音立てて近づいてきたら、隠れるでしょ?」


「ダッハハハハ!」


 バルガス隊長が。


 馬車を叩く。


「これのおかげで早く着いたぞ!」


「早く着きすぎだっつーの……」


 男が。


 小さく呟く。


「あ!」


 パイルさんが。


 嬉しそうに手を振った。


「久しぶり! ロイド君!」


 そして。


 すぐに言い直す。


「いや! ロイド隊長!」


「おうおう……」


 男が。


 木から降りてくる。


「ヴェロニカ隊長んとこの副官殿じゃねぇか」


「久しぶり!」


「俺と変われよ」


「うん! 嫌だ!」


「ちっ……」


「…………」


 この人が。


 ロイド隊長。


「んで……」


 ロイド隊長が。


 俺達を見渡す。


「このガキどもは?」


「ガキ……」


 フィリアが。


 少し頬を膨らませる。


 それから。


 順番に。


 簡単な自己紹介をしていく。


「レテ・オーズィラです。よろしくお願いします」


「フィリア・リーベです!」


「ユノ・フェルメルです。よろしくお願いしますねぇ」


 そして。


 ログ。


「ログ・スミスマンです」


「おう」


「…………」


 ログが。


 ロイド隊長を見る。


 上から。


 下まで。


 じっと。


「…………」


「なんだよ」


「……ほんとにこの人が隊長なんですか?」


「あぁ!」


 バルガス隊長が。


 即答する。


「…………」


 ログが。


 もう一度。


 ロイド隊長を見る。


「…こんな人が…ですか?」


「ヒュゥー!」


 ロイド隊長が。


 口笛を吹く。


「言うねぇ。坊主」


「…………」


 ログが。


 ロイド隊長を睨む。


「やめろ! ログ!」


 バルガス隊長が。


 すぐに止める。


「ロイドも挑発するな!」


「はいはい……」


「ったく……」


 バルガス隊長が。


 頭を掻く。


「こいつら、一人は俺の隊のモンだ! あとはアーヴェルのとこのモンだ!」


「へぇー……」


 ロイド隊長が。


 一人ずつ。


 俺達を見る。


 そして。


「で」


 その目が。


 俺で止まった。


「こいつは?」


「え?」


 次の瞬間。


「…………」


 冷たいものが。


 首元に触れていた。


「…………え?」


 剣。


 ロイド隊長が。


 剣を抜いている。


 さっき。


 腰に差していた。


 何の変哲もない。


 ガイスト軍の標準装備。


 その剣の切っ先が。


 俺の首元で。


 ぴたりと止まっていた。


「アルトくん!」


「アルト!」


「何してんだ!」


「アルトさん!」


 レテ。


 フィリア。


 ログ。


 ユノ。


 みんなの声が。


 一斉に響く。


「…………」


 でも。


 俺は。


 動けなかった。


 いや。


 違う。


 動けなかったんじゃない。


 分からなかった。


 全然。


 殺気を感じなかった。


 それどころか。


 いつ。


 剣を抜いた?


「…………」


 見えなかった。


 速い?


 いや。


 なんか。


 違う。


 速いっていうより。


「……巧い?」


「やめろ」


 バルガス隊長の声。


「そいつも身内だ」


「…………」


 ロイド隊長は。


 俺から目を逸らさない。


 長い前髪の奥。


 さっきまでは。


 ほとんど見えなかった目が。


 僅かに。


 覗いている。


「精霊が怯えてる」


「…………」


 さっきまでの。


 気怠そうな雰囲気が。


 消えている。


「ロイド」


 バルガス隊長が。


 低い声で言う。


「やめろ」


「…………」


 剣は。


 動かない。


「ロイド!!」


「…………ちっ」


 ようやく。


 首元から。


 剣が離れた。


 そして。


 何事もなかったように。


 腰の鞘へ納められる。


「…………」


 俺は。


 自分の首元へ。


 そっと手を当てる。


 全然。


 見えなかった。


 殺気すら。


 感じなかった。


 あの剣だって。


 霊器じゃない。


 ただの。


 ガイスト軍の標準装備。


 なのに。


「…………」


 この人が。


 ルミナス方面を守る。


 国境警備隊長。


 ロイド。


「…………」


 なんだ。


 この人。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。