めんどくせぇな…ほんとによ
◇ ◇ ◇
――アルト達が野営をした。
その翌朝。
ルミナス国境警備隊。
_____________
「…………」
ロイド・ベルクは。
一枚の紙を眺めていた。
『予定より早く着く!
お前も早く来い!
バルガス』
「…………」
昨夜。
バルガスの野郎から送られてきた《夜鳥便》。
その手紙を運んできた夜ガラスは。
役目を終えたってのに。
帰る気配もなく。
俺の肩でくつろいでいる。
「……いつだよ」
紙を裏返す。
何もない。
もう一度。
表を見る。
やっぱり。
それしか書いてねぇ。
「つーか……」
煙草を一本取り出し。
口に咥える。
火をつける。
「バルガスかよぉぉ……」
頭を掻きながら。
煙を吐き出す。
「めんどくせ……ヴェロニカちゃんあたり来てくれよ……」
その方が。
まだ目の保養になる。
「……まぁ」
煙草を指に挟む。
「いけ好かねぇアーヴェルや、おっかねぇ局長じゃなくてマシか……」
「シオっちは?」
「あ?」
声の方を見る。
副官のルーモン。
まだ若い男だ。
「あ〜……シオンか」
煙草を咥え直す。
「あいつは、からかうとおもしれぇからなぁ……」
「来ないんすか?」
「来ねぇみたいだなぁ」
「残念っすね」
「ほんとだよ……」
はぁ。
めんどくせ。
「ルーモン」
「なんすか?」
「お前、今日だけ隊長やれよ」
「嫌っすね」
「…………」
即答。
「ちっ……」
「舌打ちしないでくださいよ」
「あー……」
椅子へ深く身体を預ける。
「美女見て、煙草吸って、酒飲んだら給料入る仕事ねぇかなぁ……」
「あるわけないでしょ!」
「…………」
今度は。
女の声。
若い女性隊員。
リーンだ。
「朝から何言ってるんですか!」
「希望を口にしただけだろ……」
「そんな仕事があったら全員やってます!」
「だよなぁ……」
最後に。
煙草を一度吸う。
「はぁ……」
立ち上がる。
「行くか……」
「もうっすか?」
ルーモンが聞いてくる。
「あぁ」
バルガスからの手紙を。
ひらひらと振る。
「いつ来るか分かんねぇからな〜」
「私達も行きます!」
リーンが。
すぐに声を上げる。
「いや」
「え?」
「今回の仕事は俺だけで行く」
「なんでっすか?」
ルーモンが。
首を傾げる。
「そりゃ、お前……」
二人を見る。
「部下のお前らになんかあったらどうする」
「…………」
「…………」
なんだよ。
その顔。
「隊長」
リーンが。
じっと俺を見る。
「サボるつもりですね!」
「…………」
「図星ですか!」
「違ぇよ……」
「怪しいです!」
「はぁ……」
なんで。
俺の信用って。
こんなにねぇんだろ。
「……それに」
二人を見る。
「もしものことが俺にあったら」
国境の方へ。
顎を向ける。
「ここの隊は、お前らが守れ」
「もしものことって!」
ルーモンが。
呆れたように笑う。
「隊長に何か起きるとしたら、二日酔いか女に振られるぐらいっすよ!」
「…………」
肩に乗った。
夜ガラスの頭を撫でる。
「……ほっんとに」
夜ガラスは。
気持ちよさそうに目を細める。
「部下も可愛くねぇ……」
◇ ◇ ◇
国境警備隊を出る。
「…………」
ルミナスとの。
合流地点へ向かう。
煙草を咥え。
歩きながら。
空を見上げた。
「…………」
今回。
ルミナス内で起きた事件。
いや。
「……おそらく、クーデターか……」
俺達だって。
何もしてなかったわけじゃねぇ。
ずっと。
目は光らせていた。
俺だけじゃねぇ。
ルーモンも。
リーンも。
隊員全員が。
国境を越える人間。
運ばれる物資。
ルミナス側の動き。
何か。
おかしなことがねぇか。
ずっと見ていた。
なのに。
「…………」
誰も。
気づかなかった。
「くっそ……」
煙を吐く。
「一体いつからだ……?」
いつから。
動いていた?
何を。
見落とした?
「…………」
足を止める。
空を。
見上げる。
朝の光に。
消えかけている星々。
「……十二星座」
ぽつりと。
呟く。
「……星詠み」
「…………」
何か。
引っ掛かる。
何かが。
ずっと。
頭の隅に引っ掛かってやがる。
「…………」
十二星座。
星詠み。
ルミナス。
そして。
誰にも気づかれずに。
進んでいた異変。
「…………」
なんだ?
何が。
引っ掛かる?
「……分からねぇ」
煙草を。
指で弾く。
「ちっ……」
頭を掻く。
考えるのは。
昔から好きじゃねぇ。
「めんどくせぇな……」
再び。
合流地点へ向かって歩き出す。
「……ほんとによ」




