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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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命をかけて救おうとしている

「よーし。今日はここで野営だ!」


 バルガス隊長の声が響く。


「え?」


 空を見る。


 いつの間にか。


 日は傾き。


 辺りは薄暗くなり始めていた。


「もう止まるんですか?」


「もうって、朝からずっと走ってんだぞ!」


「でも、このまま進めば――」


「ダメだ!」


「…………」


「着いた時に全員疲れ切ってたらどうすんだ!」


「それは……」


「何が待ってるか分かんねぇんだ! 休める時に休む! これも任務だ!」


「…………はい」


 何も。


 言い返せなかった。


 確かに。


 ルミナスへ着いた瞬間。


 戦いになる可能性だってある。


 そこで。


 疲れて動けませんじゃ意味がない。


「この速度なら」


 ユノが。


 馬達の様子を確認しながら口を開く。


「あと三日程で着きそうですねぇ」


「三日……」


 まだ。


 三日。


「…………」


 焦っても。


 仕方ないのは分かってる。


 分かってるけど。


 もっと。


 早く着けないのか?


 今も。


 ガオンは戦ってるかもしれない。


 怪我をしてるかもしれない。


 無事なのかすら。


 分からない。


「…………っ」


 考えたって。


 何も分からない。


 でも。


 分からないから。


 余計にイライラする。


「アルトくん……」


 レテが。


 心配そうに俺を見る。


 何か。


 声をかけようとした。


 その時。


「アルトくん」


「?」


 先に。


 パイルさんが隣へ来た。


「大丈夫かい?」


「……パイルさん」


「うん」


「俺……」


 握っていた手に。


 力が入る。


「なんかできないですか?」


「…………」


「もっと早く、ルミナスへ着けないかな……」


 パイルさんは。


 すぐには答えなかった。


 少しだけ。


 考えてから。


「アルトくん」


「はい」


「ガオン王子は、そんなに弱いかい?」


「……いや」


 それは。


 違う。


 あいつは。


 馬鹿だけど。


 強い。


「じゃあ」


 パイルさんが続ける。


「ガオン王子は、誰からも見向きされないほど人に恵まれてないかい?」


「それは……」


 ガオンの国でのことなんて。


 俺は。


 ほとんど知らない。


「分かんないけど……」


「はは」


 パイルさんが。


 小さく笑った。


「今、君が心配してるじゃないか」


「?」


「出会って間もない君が、ここまで心配してるんだ」


「…………」


「だったらきっと、ガオン王子の周りには頼れる人がいる」


 パイルさんが。


 俺達を見る。


「何より」


 レテ。


 ログ。


 フィリア。


 ユノ。


 バルガス隊長。


「ここにいる全員が」


 そして。


 パイルさん自身も。


「命を懸けて、彼を……ルミナスを救おうとしてる」


「…………」


「大丈夫!」


 いつもの。


 柔らかな笑顔。


「ルミナスの人々は強いよ!」


「…………」


「あー!」


「?」


「でも、敵もルミナスの人達かもしれないのか……」


「…………」


 思わず。


 パイルさんを見る。


「ははは……」


「…………」


 なんだろう。


 さっきまで。


 あんなにイライラしてたのに。


 少しだけ。


 力が抜けた。


「……大丈夫です」


「ん?」


「ガオン」


 あいつの顔を。


 思い浮かべる。


「馬鹿だけど、ちゃんと強いから!」


「…………」


 パイルさんが。


 微笑む。


「……そうだね」


「はい」


「でも」


 パイルさんが。


 急に立ち上がった。


「早く着くに越したことはないね!」


「え?」


 何かを。


 思いついたような顔。


「おーい! ログくん!」


「はい?」


 野営の準備をしていたログが。


 顔を上げる。


「君、手先が器用って聞いたよ!」


「ま、まぁ……物作りとかは得意ですけど」


「ちょっと手伝って!」


「構いませんが……何を作るんです?」


「それはね――」


 パイルさんが。


 にこっと笑う。


 今度は。


 レテの方を見る。


「レテくん!」


「はい?」


「君のその大きな布、貰ってもいいかな?」


「……これですか?」


「うん!」


「構いませんけど……」


 レテが。


 布を手渡す。


「どうぞ」


「ありがとう!」


 受け取ったパイルさんが。


 今度は。


「フィリアくん、ちょっといい?」


「?」


 フィリアが。


 ひょこっと顔を出す。


「はーい!」


「…………」


 なんだ?


 何を始めるんだ?


「ダッハハハハ!」


 少し離れたところで。


 バルガス隊長が笑う。


「あいつめ……面白そうなこと企んでるな……」


「……そうですか?」


 ユノが。


 不思議そうに首を傾げる。


 パイルさんは。


 地面に何かを描き始めた。


 ログと。


 フィリアが。


 その周りにしゃがみ込む。


「これをこうして……」


「なるほど……」


「それで、こっちを固定する」


「はい」


「フィリアくんには、ここで術を使ってもらって――」


「…………」


 ログが。


 地面に描かれた図を。


 じっと見る。


 そして。


「ぶっ……」


 吹き出した。


「これはいいですね」


「でしょ?」


「アハハハハ!」


 フィリアまで。


 大笑いし始める。


「なにこれ! おもしろそー!」


「…………」


 待て。


 なんだ。


 なんで。


 二人ともそんな顔してるんだ。


「よし!」


 パイルさんが。


 勢いよく立ち上がる。


「じゃあ、アルトくん!」


「はい?」


「君はすぐ寝なさい」


「…………」


「え?」


「おやすみ!」


「ちょ、待ってください」


 パイルさんが。


 爽やかに笑う。


「明日は明日の風が吹くよ!」


「…………」


 風。


 布。


 フィリア。


 ログ。


「…………」


 なんだろう。


 すごく。


 嫌な予感がする。

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