それが一番なんですがね…
こうして。
ルミナスへ向かう臨時部隊。
その編成と。
指揮官が決まった。
「あぁ……それと」
ノアが。
思い出したように口を開く。
「今回の入国には、国境警備隊のロイド隊長にも作戦に参加していただきます」
「げっ……」
ヴェロニカの顔が。
露骨に引きつった。
「…………」
アーヴェルは。
無言で眉間を押さえる。
「だっははは!」
そんな二人を見て。
バルガスだけが豪快に笑った。
「ロイドの野郎、よく了承したな!」
「バルガス隊長」
「おっと。ロイドの野郎、よく了承しましたね!」
「そこだけ直されても……」
ノアが。
小さく息を吐く。
「……言いたいことは分かりますが」
「分かるんだ」
ヴェロニカが呟く。
「実力は確かです。特に、こういった荒事になりそうな任務では頼りになります」
「まぁ……そうだけど」
ヴェロニカが。
ちらりとアーヴェルを見る。
「アーヴェルんとこの若い子達、大丈夫?」
「…………」
アーヴェルは。
何も答えない。
眉間を押さえたままだ。
「仕事はちゃんとしますから」
ノアが言う。
一拍。
「……多分」
「多分って言ったじゃない」
「…………」
「おい、アーヴェル!」
バルガスが。
アーヴェルの肩を叩く。
「心配すんな! 俺がちゃんと見張ってやるから!」
「…………」
アーヴェルが。
ゆっくりとバルガスを見る。
「それも心配だ……」
「だっははは!」
「笑い事ではない」
「細けぇな!」
「お前が言うな」
「だっははは!」
「…………」
ノアが。
小さくため息をついた。
「……まぁ、これで決まりですね」
机の上に広げられた名簿をまとめる。
「作戦開始は明朝。四時に出発とします」
空気が。
少しだけ引き締まる。
「各隊から参加者へ通達の上、今日はもう休ませてください」
「了解しました」
「はいよ!」
「はーい」
それぞれが席を立つ。
明朝。
ルミナスへ向けて。
部隊が動き出す。
◇ ◇ ◇
「局長」
会議室から出ようとしていた。
アーヴェルが足を止める。
「はい?」
ノアが振り返った。
「一つ、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「どうぞ」
「なぜ」
アーヴェルが。
僅かに眉を寄せる。
「アルトを作戦に参加させるよう、ご命令を?」
「あぁ……」
ノアは。
すぐに答えた。
「簡単ですよ」
「…………」
「ここで留守番をさせたら、また何をするか分からないからです」
「…………」
アーヴェルが黙る。
「あなたは」
ノアが続ける。
「今回、感情的になっている彼を外すと思いましたから」
「…………」
「違いますか?」
「……いえ」
否定できない。
「確かに、そのつもりでした。しかし」
アーヴェルが。
ノアを見る。
「だからこそ、危険ではありませんか?」
「えぇ」
「なら――」
「大丈夫です」
ノアが遮る。
「バルガス隊長に」
一拍。
「ヤンギル君がいる」
「…………」
「あの二人なら、アルトくんが感情だけで動こうとしても止められます」
「…………」
「それに」
ノアの赤い瞳が。
僅かに細くなる。
「目の届かないところに置いておくより、目の届くところに置いておいた方がいい」
「…………」
アーヴェルは。
しばらく黙っていた。
そして。
「……確かに」
小さく息を吐く。
「その通りかもしれません」
「納得していただけてよかったです」
「……了解しました」
アーヴェルが。
姿勢を正す。
「失礼します」
「えぇ」
扉が閉まる。
「…………」
一人残ったノアは。
机の上に置かれた。
ルミナス派遣部隊の名簿へ目を落とした。
「さて……」
その指が。
名簿の上をなぞる。
「何事もなく帰ってきてくれれば」
一拍。
「それが一番なんですがね……」




