次の仕事だ
それから。
しばらく。
街を歩いた。
大きな問題は。
何もない。
道に。
壊れた荷車があって。
一緒に動かしたり。
子供達に。
フィリアが捕まったり。
屋台で。
また食べ物をもらったり。
「アルト、それ私のだからねー」
「一個だけ!」
「駄目ー」
「いっぱいあるじゃん!」
「駄目ー」
「フィリア派なのに!」
「知らないよー」
そんなことを。
しているうちに。
巡回は。
終わった。
◇ ◇ ◇
「ただいま!」
軍舎。
戻ってきた。
「お疲れー」
「フィリアも!」
「じゃあ、私はこっちだから」
「うん!」
フィリアが。
ひらひら。
手を振る。
「次も頑張ってねー」
「おう!」
別れる。
「…………」
書類。
備品管理。
巡回。
三つ。
終わった。
思ってたより。
軍人って。
色んなことするんだな。
さて。
次。
「…………」
なんだっけ。
「アルト」
「!」
後ろ。
「アーヴェル隊長!」
「巡回は終わったか?」
「終わりました!」
「そうか」
アーヴェル隊長が。
俺を見る。
「では、次だ」
「はい!」
「まず巡回の報告をしろ」
「…………」
「…………」
「報告?」
「そうだ」
「終わりました!」
「…………」
「…………」
「それだけか?」
「はい!」
「…………」
違うらしい。
「何をした」
「街を巡回しました!」
「それは知っている」
「フィリアと!」
「それも知っている」
「…………」
なんだ?
「何か異常はあったか?」
「あ!」
なるほど。
「ありませんでした!」
「本当に?」
「…………」
「巡回中、何もなかったのか?」
「…………」
あった。
「精霊が挟まってました!」
「…………」
「助けました!」
「…………」
「あと荷物運んだ!」
「…………」
「あとフィリアがいっぱい食べ物もらってました!」
「それはいらん」
「はい!」
「他は?」
「えーっと……」
思い出す。
店。
人。
道。
「あ」
「なんだ」
「いつも開いてる店が閉まってました」
「理由は?」
「店の人が熱出したみたいです。でも娘さんが診療所に連れてったって」
「そうか」
アーヴェル隊長が。
頷く。
「他には?」
「…………」
考える。
「ないです!」
「なら、それでいい」
「はい!」
「では今の内容を報告書にまとめろ」
「…………」
「…………」
「え?」
「報告書だ」
「…………」
書類。
また。
書類。
「嫌です」
「駄目だ」
「即答!」
「巡回は歩いて終わりではない」
「…………」
「見たもの。聞いたもの。起きたこと。それを記録し、必要なら次の者へ引き継ぐ」
「…………」
アーヴェル隊長が。
机の上から。
一枚。
紙を取る。
「何もなかったという報告にも意味がある」
「何もないのに?」
「そうだ」
「なんで?」
「今日何もなかったという記録があれば、明日何かが起きた時に比較できる」
「…………」
比較。
「例えば、お前が言った店だ」
「熱出した人?」
「そうだ」
紙へ。
指を置く。
「今日だけなら、ただの体調不良だ」
「うん」
「だが明日、隣の店も休んだら?」
「…………」
「その次の日、同じ通りで何人も倒れたら?」
「あ」
「そこで初めて異常に気付くのでは遅い場合もある」
「…………」
「何もなかった日も記録する。小さな変化も残す」
アーヴェル隊長が。
俺を見る。
「それを積み重ねて、街を守る」
「…………」
ログも。
フィリアも。
そうだった。
地味な。
仕事。
でも。
ちゃんと。
意味がある。
「分かりました!」
「なら書け」
「…………」
「どうした?」
「意味は分かったけど」
「うん」
「書類は嫌です」
「書け」
「はい……」
紙を。
受け取る。
「それが終わったら次の仕事だ」
「まだあるの!?」
「当たり前だ」
「何するんですか?」
「各部署への連絡と書類の受け渡しだ」
「…………」
手に持った。
紙を見る。
「また書類……」
「今度は運ぶ方だ」
「おお!」
それなら。
いい。
「やります!」
「現金な奴だな」
「だって歩ける!」
「遊びではないぞ」
「分かってます!」
「本当か?」
「本当です!」
「なら」
アーヴェル隊長が。
机の横に置かれた。
束を。
持ち上げる。
「これを持て」
「はい!」
受け取る。
「…………」
重い。
見る。
書類。
書類。
書類。
「…………」
「どうした」
「今日」
「?」
「紙、多くないですか?」
「軍とはそういうものだ」
「…………」
軍人。
やっぱり。
思ってたのと。
ちょっと違う。




