初巡回!③
「じゃあ次ー」
「おう!」
歩く。
今度は。
ちゃんと。
前を見る。
「…………」
店。
人。
道。
さっきより。
意識して。
見る。
「あ」
「んー?」
「あそこ」
道の端。
荷車。
その横で。
おじいさんが。
木箱を。
持ち上げようとしていた。
「よっ……」
持ち上がらない。
「ちょっと行ってくる!」
「あ、アルト!」
走る。
「手伝う!」
「ん?」
「それ運ぶんだろ?」
「あぁ。そうだが……」
「どこ?」
「いやいや。大丈夫だよ」
「大丈夫じゃないだろ」
「これくらいなら――」
「貸して!」
木箱を。
持ち上げる。
「おお……」
「どこに置く?」
「じゃ、じゃあ荷台に」
「分かった!」
運ぶ。
置く。
「他は?」
「いや、もう大丈夫だよ」
「まだあるじゃん」
木箱。
あと三つ。
「これも?」
「あ、あぁ」
「分かった!」
一つ。
二つ。
三つ。
全部。
荷台へ。
「これで終わり?」
「あぁ。助かったよ」
「よかった!」
「ありがとうな、軍人さん」
「…………」
軍人さん。
「…………」
「アルト?」
「ん?」
フィリアが。
追いついてくる。
「どうしたの?」
「今」
「うん?」
「軍人さんって言われた」
「そりゃ言われるでしょー」
「…………」
なんか。
いい。
「俺、軍人なんだな」
「今更?」
「あはは!」
「ふふっ」
「本当に助かったよ」
おじいさんが。
俺と。
フィリアを見る。
「最近、腰が駄目でなぁ」
「無理しちゃ駄目だよー」
「あぁ」
「また重い物あったら誰か呼んでねー」
「そうするよ」
「じゃあねー」
「ありがとな」
「おう!」
手を振って。
また。
歩く。
「…………」
ちょっと。
嬉しい。
「アルト」
「ん?」
「嬉しそうだねー」
「分かる?」
「分かるよー」
「軍人さんって言われた」
「聞いてた」
「初めて!」
「そっか」
「うん!」
軍人になって。
初めて。
街の人に。
軍人として。
ありがとうって。
言われた。
「…………」
いいな。
これ。
「フィリア!」
「なにー?」
「他に困ってる人いない!?」
「探してやるものじゃないよー」
「でも手伝える!」
「分かったから」
「荷物とか!」
「はいはい」
「迷子とか!」
「はいはい」
「悪い奴とか!」
「それはいない方がいいかなー」
「…………」
確かに。
「じゃあ悪い奴はいらない」
「うん」
歩く。
また。
周りを見る。
今度は。
さっきより。
もっと。
よく。
「…………」
「アルト」
「ん?」
「そんなキョロキョロしなくても大丈夫だよー」
「でも何かあるかもしれないだろ?」
「あるかもしれないけど」
「見逃したくない」
「…………」
フィリアが。
俺を見る。
「そっか」
「うん」
「じゃあ頑張ってー」
「おう!」
見る。
右。
左。
前。
店。
路地。
人。
「…………」
「あ!」
「今度はなにー?」
「あの子!」
「?」
道の向こう。
小さな女の子。
一人。
立っている。
周りには。
大人が。
たくさん。
でも。
誰かと。
一緒には。
見えない。
「迷子じゃない?」
「んー」
フィリアが。
見る。
「違うよー」
「なんで分かるの?」
「あの子、この近くの子だから」
「…………」
すごい。
「じゃあ」
「あ!」
「今度は?」
「あのおばちゃん!」
「どのおばちゃん?」
「あれ!」
大きな袋を。
二つ。
持っている。
「重そう!」
「あの人は大丈夫だよー」
「なんで?」
「毎日あれくらい持ってるから」
「…………」
すごい。
「あ!」
「まだあるの?」
「あのおじさん!」
「寝てるだけ」
「道で!?」
「いつものこと」
「いつものことなの!?」
「夕方になったら奥さんが迎えに来るよー」
「…………」
なんなんだ。
この街。
「フィリア」
「んー?」
「全部知ってるの?」
「全部じゃないってー」
「でも俺が見つける前に知ってる」
「そりゃあ」
フィリアが。
少し。
笑う。
「アルトより長く巡回してるからねー」
「…………」
負けた。
「なんで勝負みたいな顔してるの?」
「してない」
「してるよー」
「してない!」
「あはは」
その時。
「フィリアちゃん!」
「ん?」
声。
振り向く。
一人の。
女性が。
こっちへ。
駆けてくる。
「どうしたのー?」
「ちょっといいかい?」
「うん」
「裏の通りなんだけどね」
「?」
「朝からずっと、変な音がするんだよ」
「変な音?」
「あぁ」
女性が。
少し。
不安そうに。
路地の奥を。
指差す。
「何かが引っ掻いてるみたいな音でさ」
「…………」
フィリアが。
そっちを見る。
「いつから?」
「朝からだよ。最初は猫かと思ったんだけど……」
「見に行った?」
「怖くてねぇ」
「そっか」
フィリアが。
俺を見る。
「アルト」
「うん!」
「行ってみよっか」
「おう!」
来た。
初めて。
巡回らしい。
何か。
「…………」
なんだろう。
猫?
動物?
それとも。
精霊?
「アルト」
「なに?」
「ちょっと楽しそうじゃない?」
「…………」
「顔に出てるよー」
「出てない!」
「出てるってー」
「ちゃんと仕事する!」
「はいはい」
女性に。
場所を聞いて。
俺達は。
路地の奥へ。
向かった。




