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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
星詠国家ルミナス クーデター編

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初巡回②

「じゃあね、フィリアちゃん」


「またねー」


「アルト君も頑張るんだよ」


「おう!」


 おばあちゃんに。


 手を振る。


 そして。


 また。


 歩き出す。


「…………」


 フィリア派。


 ヴェロニカ隊長派。


 そんなものまで。


 あるんだな。


「ねぇ、フィリア」


「んー?」


「ヴェロニカ隊長って、そんなに人気なの?」


「人気だよー」


「へぇ」


「強いし、優しいしねー」


「優しい?」


「なにその反応」


「いや……」


 怖い。


 とは。


 言わないでおこう。


「アルト」


「ん?」


「顔に出てるよー」


「…………」


「あはは」


 バレた。


「でもさ」


「んー?」


「フィリアもすごいな」


「私?」


「うん」


 また。


 向こうから。


 手を振られる。


「フィリアー!」


「おー!」


 手を振り返す。


「街の人、みんなフィリアのこと知ってるじゃん」


「みんなじゃないよー」


「さっきからずっと声かけられてるけど」


「んー」


 フィリアが。


 少し考える。


「巡回してると、自然とねー」


「自然と?」


「うん」


 歩きながら。


 店先を見る。


「おじさーん」


「ん?」


「今日、一人?」


「あぁ。かみさんは腰が痛いって家で休んでるよ」


「また?」


「歳だからなぁ」


「ちゃんと診てもらった方がいいよー」


「分かってるって」


「ほんとにー?」


「分かった分かった」


「じゃあねー」


「おう」


 また。


 歩く。


「…………」


「なに?」


「今の人も知り合い?」


「うん」


「やっぱりみんなじゃん」


「あはは」


 少し先。


 今度は。


 小さな店。


 フィリアが。


 足を止める。


「…………」


「?」


 店を見る。


「どうしたの?」


「んー」


 フィリアが。


 首を傾げる。


「今日は閉まってるなーって」


「休みなんじゃない?」


「今日、休みじゃないよ」


「そうなの?」


「うん」


 扉には。


 札。


 閉店。


「ちょっと見てくるねー」


「うん」


 フィリアが。


 扉の前まで行く。


 中を。


 覗く。


 そして。


 隣の店へ。


「おばちゃーん」


「あら、フィリアちゃん」


「隣、今日どうしたの?」


「あぁ。朝から熱出しちゃったみたいよ」


「大丈夫なの?」


「娘さんが診療所に連れてったから大丈夫」


「そっかー」


 フィリアが。


 ほっとしたように。


 笑う。


「ありがとー」


「いいのよ」


 戻ってくる。


「病気だって」


「うん」


「でも診療所行ったみたい」


「そっか」


 また。


 歩き出す。


「…………」


 ふと。


 思う。


「フィリア」


「んー?」


「なんで休みじゃないって知ってたの?」


「ん?」


「さっきの店」


「あぁ」


「休みの日、覚えてるの?」


「まぁねー」


「全部?」


「全部じゃないよ」


「でも、あの店は知ってた」


「いつも通ってるからねー」


「…………」


 いつも。


 通ってる。


「もしかして」


「?」


「さっき言ってた、いつもと違うところって」


「うん」


 フィリアが。


 笑う。


「こういうこと」


「…………」


 店が。


 開いてる。


 閉まってる。


 いつもいる人が。


 いない。


 いつも元気な人が。


 元気じゃない。


 俺には。


 何も。


 分からなかった。


 でも。


 フィリアには。


 分かった。


「だから街の人と話してるの?」


「んー?」


「さっきから、いっぱい」


「それは普通に話してるだけだよー」


「普通に?」


「うん」


 フィリアが。


 前を歩く。


「でも」


 少しだけ。


 振り返る。


「みんなのこと知らなかったら、いつもと違うかなんて分かんないでしょ?」


「…………」


 なるほど。


 巡回って。


 ただ。


 歩いて。


 悪い奴がいないか。


 探すだけじゃない。


 街を。


 知る。


 そこにいる人を。


 知る。


 そうすれば。


 何かが起きた時。


 気づける。


「…………」


 すげー。


 ログも。


 フィリアも。


 ちゃんと。


 考えてるんだな。


「フィリア」


「んー?」


「すげーな」


「なにが?」


「巡回」


「?」


「俺、ただ歩くだけだと思ってた」


「あはは。なにそれー」


「だって知らなかったし」


「まぁ、最初はそんなもんだよー」


「俺も覚える!」


「なにを?」


「街!」


「おー」


「店も! 人も!」


「うんうん」


「全部!」


「全部は大変だよー」


「大丈夫!」


 周りを見る。


 店。


 道。


 人。


 さっきまでとは。


 少し。


 違って見える。


「よし!」


「?」


「まずあの店!」


 指を差す。


「あれ何屋?」


「…………」


「フィリア?」


「あれ?」


「うん」


「靴屋」


「靴屋!」


「その隣は?」


「八百屋!」


「その隣!」


「パン屋!」


「おお!」


 覚える。


「じゃあ、その向かい!」


「…………」


 フィリアが。


 止まる。


「?」


「なに?」


「アルト」


「うん」


「前見て」


「え?」


 振り向く。


 ドンッ。


「うわっ!」


 人に。


 ぶつかった。


「す、すみません!」


「大丈夫かい?」


「大丈夫!」


「あはは」


「笑うなよ!」


「だってー」


「街覚えてたんだよ!」


「まず前見て歩こうねー」


「…………はい」


 巡回。


 思っていたより。


 覚えることが。


 多い。

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