次の仕事は‥②
「いいか」
ログが。
棚に並ぶ。
剣を見ながら。
口を開いた。
「備品ってのはな。ただ数を揃えて、壊れてねぇか見りゃいいってもんじゃねぇ」
「?」
「剣も。盾も。防具も。全部、誰かが使うもんだ」
一本。
剣を取る。
「点検を適当にして、こいつに小せぇヒビが入ってたとする」
「うん」
「訓練なら怪我で済むかもしれねぇ」
ログが。
剣を。
棚へ戻す。
「でも、任務で使うもんなら?」
「…………」
「戦ってる最中に折れるかもしれねぇ。盾なら攻撃を防げねぇかもしれねぇ。防具なら、守れるはずだった一撃を通すかもしれねぇ」
「…………」
「たった一個の見落としで」
ログの。
太い指が。
剣の柄を。
軽く叩く。
「帰ってこれるはずだった奴が、帰ってこれなくなることだってある」
「…………」
帰って。
これなくなる。
「だから」
ログが。
俺を見る。
「こういう仕事で一番駄目なのは、慣れることじゃねぇ」
「?」
「慣れたからって、雑になることだ」
「…………」
「毎日やってりゃ飽きる。面倒にもなる。昨日大丈夫だったんだから今日も大丈夫だろって思う」
でも。
「物は壊れる」
ログが言った。
「使えば傷む。使わなくても傷む。だから俺らが見る」
「…………」
「俺らがちゃんと見てりゃ、使う奴はそんなこと気にしなくていい」
剣を握ったら。
剣を信じられる。
盾を持ったら。
盾を信じられる。
「そいつが戦うことだけに集中できるようにしてやる。それが備品を管理する奴の仕事だ」
「…………」
すげぇ。
心の底から。
思った。
ログ。
こいつ。
すげぇ。
いつも。
飯食って。
酒飲んで。
焦げパンで。
でかくて。
焦げパンなのに。
「ログ」
「あ?」
「すげーな」
「なんだ急に」
「いや……なんか」
本当に。
「すげーなって思った」
「…………」
ログが。
少しだけ。
目を逸らす。
「まぁ」
頭を。
ぼりぼりと掻いた。
「ヒルトの受け売りだけどな」
「…………」
「ヒルト?」
「あぁ」
ログが。
悪びれもせず。
頷いた。
「こういう物の扱いや管理じゃ、シオン隊長を抜いたら、あいつの右に出る奴はいねぇよ」
「へぇ……」
ヒルト。
いつも。
静かで。
あんまり。
自分のことを話さなくて。
何を考えてるのか。
分からない時もあるけど。
「ヒルトもすげーんだな」
「あぁ」
ログが。
少し笑う。
「あいつもすげーよ」
「…………」
なんか。
いいな。
こういうの。
みんな。
俺の知らないところで。
色んなことができて。
色んなことを知ってる。
「そういえば」
「あ?」
「そのヒルトは?」
「ヒルト?」
「うん。最近見てない」
「あぁ……」
ログが。
持っていた剣を。
棚へ戻す。
「怪我はもう良くなって、フィリアと一緒に退院した」
「おお!」
よかった。
「じゃあ、もう戻ってくる?」
「いや」
「?」
「アーヴェル隊長から許すとは言われたけどな」
ログが。
腕を組む。
「まだなんつーか……危なっかしいからな」
「危なっかしい?」
「あぁ」
少しだけ。
ログの顔から。
笑いが消える。
「しばらく謹慎だ」
「…………」
謹慎。
「…………」
俺は。
考える。
ヒルト。
謹慎。
俺。
少し前まで。
謹慎。
ガオンも。
謹慎。
「…………」
「なんだ?」
「謹慎者、多くない?」
「お前が言うな」
「…………」
「あ?」
「…………確かに」
「だろ」
何も。
言い返せなかった。




