初仕事はなんでしょう?②
「…………」
書く。
確認。
次。
「…………」
書く。
確認。
次。
「…………」
「アルト君」
「なに?」
「そこ、抜けてます」
「え?」
レテが。
指を差す。
所属。
「…………」
「あ」
「あと、日付も」
「あ」
「それと署名」
「…………」
見る。
確かに。
ある。
ちゃんと。
書く場所が。
「一個くらい見逃してくれてもよくない?」
「駄目です」
「なんで?」
「書類なので」
「…………」
書類。
強い。
戦ってもいないのに。
どんどん。
体力を奪ってくる。
「レテ」
「はい?」
「みんな、こーゆーのできるの?」
「そうですね……」
レテが。
少し考える。
「フィリアとセリオさんは苦手ですね」
「そうなの?」
「はい。ヒルトとログは得意です」
「へぇ」
「特にログですね」
「焦げパンすげーな」
「えぇ。焦げパンのくせに」
「…………」
え?
今。
レテが。
「ぷっ……」
駄目だ。
「はははは!」
「ふふっ……」
「レテまで焦げパンって!」
「アルト君が言ったんじゃないですか」
「そうだけど!」
「ふふふ」
なんか。
おかしい。
ログが。
真面目な顔で。
大量の書類を。
すらすら片付けている姿を想像する。
「焦げパンなのに……」
「焦げパンなのに、ですね」
「ははは!」
少しだけ。
紙が嫌じゃなくなった。
「じゃあさ」
「はい?」
「レテは?」
「私ですか?」
「うん。得意なの?」
「私は……」
レテが。
少しだけ。
目を逸らした。
「たまにミスします」
「えー! 意外!」
「そんなに意外ですか?」
「だってレテ、こういうの絶対間違えなさそう」
「私だって間違えることくらいありますよ」
「じゃあ」
俺は。
少し考えて。
「レテのは俺がチェックしようか?」
「!」
レテの肩が。
ぴくっと動いた。
「大丈夫です!」
「なんで?」
「大丈夫なので!」
「でもミスするんでしょ?」
「たまにです!」
「じゃあ、たまに俺が見ればいいじゃん」
「結構です!」
「えー」
なんでだ。
俺のは。
こんなに見るのに。
「…………」
ふと。
レテの手元を見る。
さっきまで。
俺のを見ながら。
自分でも書いていた紙。
「…………」
「レテ」
「はい?」
「あ、ここ違うと思うよ?」
「……!」
止まった。
レテが。
ぴたりと。
止まった。
「ここ」
指を差す。
「一個ずれてない?」
「…………」
「ほら。こっちが――」
「アルト君」
「ん?」
「…………」
レテが。
紙を。
すっと。
俺から遠ざけた。
「自分の書類をやってください」
「でも間違ってるよ?」
「分かりましたから!」
「やっぱりミスするじゃん」
「…………」
「俺がチェックしよっか?」
「大丈夫です!」
「ははは!」
なんだ。
レテも。
間違えるんだ。
いつも。
俺に色々教えてくれて。
なんでも知ってそうなのに。
「…………」
「なんですか?」
「いや」
ちょっと。
嬉しい。
「レテも一緒なんだなって」
「……何がですか?」
「俺も間違えるし、レテも間違える」
「アルト君の方が多いです」
「それは今関係ないだろ!」
「あります」
「ない!」
「あります」
レテが。
小さく笑う。
俺も。
笑った。
そして。
もう一度。
紙を見る。
「…………」
やっぱり。
多い。
「レテ」
「なんですか?」
「やっぱり俺のも半分やって」
「駄目です」
「即答!」
まだ。
先は長かった。




