また、始めればいい
「……あいつも」
「ん?」
ゼンが。
少しだけ。
視線を落とす。
「ヒルトも、お前も」
「…………」
「霊器に至ったって聞いてよ」
「あぁ」
「…………」
「俺だけが」
拳を。
握る。
「昔に固執して」
「…………」
「取り残された気になった」
「…………」
「俺は……」
ゼンが。
苦しそうに。
顔を歪める。
「どうしたらいいんだ」
「…………」
俺は。
少しだけ。
黙る。
「霊器に至りたいから」
「……?」
「ヒルトをどうにかしたいのか?」
「……!」
ゼンが。
勢いよく。
顔を上げる。
「違う!」
「…………」
「そんなんじゃねぇ!」
「だよな?」
「…………」
俺は。
ゼンを見る。
「だったら」
「…………」
「お前がどうしたいのか」
少し。
間を置く。
「お前の言葉で言えよ」
「…………」
「…………」
ゼンは。
黙ったまま。
俯いている。
「誰も否定しねぇ」
「…………」
「誰も笑わねぇ」
「…………」
「だから」
「…………」
「言ってみろ」
「…………」
長い。
沈黙。
「……ヒ」
「?」
「ヒルトによぉ……」
ゼンの声が。
僅かに。
震える。
「ちゃんと」
「…………」
「謝りたい」
「…………」
俺は。
小さく。
息を吐く。
「……まぁ」
「…………」
「ヒルトからしたら」
少しだけ。
苦笑する。
「虫のいい話かもな」
「……だよな」
「でも」
「?」
「それが分かってんなら」
ふっ。
「いいんじゃね?」
「…………」
「ただし」
ゼンを。
まっすぐ見る。
「謝ったからって」
「…………」
「許されるわけでもねぇ」
「…………」
「許されたからって」
「…………」
「全部チャラになる話でもねぇ」
「……あぁ」
「だから」
俺は。
ゼンの肩を。
軽く叩く。
「正直になれよ」
「…………」
「お前が」
「…………」
「ヒルトに信じてほしかったみたいに」
「…………」
「ヒルトも」
「…………」
「俺も」
「…………」
「お前のことを信じたい」
「…………」
ゼンが。
顔を上げる。
「今すぐじゃなくてもいい」
「…………」
「綺麗な言葉じゃなくてもいい」
「…………」
「ただ」
少しだけ。
笑う。
「お前の言葉で」
「…………」
「お前の気持ちを」
「…………」
「お前自身で話せ」
「…………」
ゼンが。
しばらく。
何も言わず。
俺を見る。
「……わかった」
「ん」
「…………」
「また」
俺は。
空を見上げる。
「三人で飯行けたらいいな」
「…………」
「……あぁ」
「…………」
「…………」
少し。
風が吹く。
「ゼン」
「あ?」
「泣いてんのか?」
「なわけねーだろが!」
「ははは!」
「ぶっ飛ばすぞ!」
「悪りぃ悪りぃ!」
「ったく……」
「でもまぁ」
俺は。
大きく。
伸びをする。
「話せてよかったわ」
「…………」
「じゃあ」
歩き出す。
「もう行くぞ?」
「ログ」
「あ?」
「…………」
「なんだよ」
「…………」
「ゼン?」
「……とな」
「あ?」
「聞こえねぇ」
「…………」
ゼンの顔が。
僅かに。
歪む。
「ありがとなって」
「…………」
「言ったんだよ!」
「…………」
「ゴリラ!」
「ハハハ!」
「笑うな!」
「どういたしまして!」
「うるせぇ!」
「早く寝ろよ!」
手を振る。
「ほうき頭!」
「誰がほうき頭だ!」
「お前だよ!」
「てめぇ……!」
「ハハハ!」
「…………」
「…………」
「はぁ」
ゼンが。
小さく。
息を吐く。
「てめーもな」
「あぁ」
「じゃーな」
「じゃーな」
俺達は。
それぞれ。
反対方向へ。
歩き出す。
「…………」
昔みたいに。
全部が。
すぐ元通りになるわけじゃない。
それでも。
たぶん。
これでいい。
少しずつ。
また。
始めればいい。




