ちゃんと話すよ
「よっ……と」
重ねた皿を抱え、廊下へ出る。
ふと窓の外を見ると。
空はすっかり紅く染まっていた。
(早く片付けねぇと、夜になっちまうな)
少し急ぐか。
そう思い、歩き出そうとした時。
「おい」
「あ?」
後ろから声をかけられた。
振り返る。
「…………」
そこにいたのは。
ゼン・フルケ。
かつての友人だった。
「おぉ、久しぶりだなゼン」
「ログ、お前ちょっとツラ貸せよ」
「あ? なんだよ急に」
「いいから来いよ!」
「……はぁ?」
俺は抱えている皿を見せる。
「これ片付けてんだよ」
「…………」
「用があるなら後にしてくれ」
「……手伝う」
「え?」
「だから手伝うっつってんだよ!」
「マジ?」
思わず笑う。
「ラッキー」
「てめぇ……!」
「ハハハ! 冗談だよ!」
ゼンが俺の持っていた皿を半分奪い取る。
「ったく……なんだよこれ?」
「歓迎会の片付け」
「誰の?」
「アルトって奴」
「あぁ……」
ゼンが少し考える。
「あの妙な奴か」
「妙な奴って」
「歓迎会ってことは、入隊したのか?」
「ああ。今日から正式にな」
「へぇ……」
「そういや」
俺はゼンの顔を見る。
「お前もあの任務いたんだっけ?」
「あ?」
「確か……」
思い出す。
そして。
吹き出した。
「帰るまで白目剥いてたとか」
「てめぇ!」
「ハハハハ!」
「喧嘩売ってんのか!?」
「わりぃわりぃ!」
「笑いながら言うんじゃねぇ!」
「ハハハ! おら、奥にもあるから運んでくれよ」
「チッ……!」
文句を言いながらも。
ゼンは部屋へ入っていく。
昔から。
こういうところは変わらない。
「おい」
「あ?」
「…………」
ゼンが。
足を止める。
「あの雑……」
「?」
「……ヒルトは?」
「あいつらなら先に帰したよ」
「…………」
「怪我人だからな」
「……そうか」
「…………」
「…………」
さっきまでの。
軽い空気が。
消える。
「……なぁ」
「あ?」
「なんで」
俺はゼンを見る。
「ヒルトのこと、いじめた?」
「…………」
ゼンの顔が。
露骨に歪む。
「……チッ」
「…………」
「分かってるくせに聞くなよ」
「自分の口で言え」
「…………」
ゼンは答えない。
代わりに。
残っていた皿を乱暴に持ち上げた。
「……さっさと片付けんぞ」
「おい、ゼン」
「…………」
「ゼン」
「分かってるよ!」
苛立った声。
それでも。
俺から目を逸らしたまま。
「これ片付けたら……」
「…………」
「話す」
小さく。
息を吐く。
「ちゃんと話すよ」
「…………」
「そうか」
俺も。
それ以上は聞かなかった。
「分かったよ」
二人で。
皿を抱える。
紅かった空は。
少しずつ。
夜の色へと。
変わり始めていた。




