お喋り
「貴様ァァァ!」
キールの。
怒声が。
部屋に響く。
「ダッハハハ!」
対する。
バルガス隊長は。
腹を抱えて。
笑っていた。
「まぁまぁ」
「…………!」
「そんな怒るなって」
ニヤリ。
「身体中の火傷が」
「…………」
「痛むんじゃねぇか?」
「……!」
「ダッハハハ!」
「フゥー……!」
キールの。
肩が。
大きく上下する。
「フゥー……!」
「おいおい」
バルガス隊長が。
さらに笑う。
「そんな興奮したら、本当に傷が――」
「……ハッ」
「あん?」
「ハッハハ……」
「…………?」
突然。
キールが。
笑い始める。
「ハッハハハ!」
「…………」
「ハッハハハッハハ!」
先ほどまでの。
怒りは。
どこへ行ったのか。
顔を上げ。
大きく。
笑う。
「貴様!」
「?」
「何も知らないで!」
「…………」
「いいだろう!」
ギラリ。
キールの。
目が輝く。
「少し早いが……」
口元が。
大きく。
吊り上がる。
「少し」
「…………」
「ヒントをやろう」
「お?」
ミレイアが。
身を乗り出す。
「喋るみたいですよ?」
「はぁ……」
ノアが。
気だるそうに。
息を吐く。
「ようやくですか」
「よく聞け!」
キールが。
声を張り上げる。
「私は!」
「…………」
「この二十年!」
「…………」
「ただ逃げていたわけではない!」
バルガス隊長の。
笑みが。
僅かに。
薄れる。
「…………」
「……革命だ!」
「…………」
「この国には!」
キールが。
拘束された身体を。
前へ。
乗り出す。
「精霊が多くいる!」
「…………」
「つまり!」
ニィ。
「それがどういうことだか分かるか?」
「それは――」
「分からんだろ!」
「え〜……」
答えようとした。
ミレイアが。
口を尖らせる。
「まだ何も言ってないのに」
「精霊と!」
聞いていない。
「人の数が!」
「…………」
「多ければ多いほど!」
キールが。
声を。
さらに大きくする。
「武力になるということだ!」
「…………」
ノアの。
赤い瞳が。
僅かに。
細くなる。
「全国民を術師として!」
「…………」
「他国へ攻め入れば……!」
「…………」
「ハッハハハッハハ!」
身体を。
震わせる。
「ハッハハハッハハハッハハハッハハ!」
「…………」
誰も。
笑わない。
「……世界征服をするとでも?」
ノアが。
気だるそうに。
問いかける。
「…………」
ぴたり。
キールの。
笑いが止まる。
「いやぁ……」
「…………」
「失敬」
再び。
いつもの。
芝居がかった笑み。
「私としたことが」
肩を。
すくめる。
「喋りすぎましたねぇ」
「…………」
バルガス隊長が。
眉を寄せる。
「んで?」
「?」
「何する気だ?」
「…………」
「革命だの武力だの」
一歩。
近づく。
「結局、何をやらかす気なんだ?」
「さぁ?」
キールが。
楽しそうに。
首を傾げる。
「空でも」
「…………」
「眺めていたらどうです?」
「…………」
「…………」
「喋るんじゃねーのかよ」
「ヒントと」
キールが。
笑う。
「申したはずですよ?」
「…………」
「ちっ!」
バルガス隊長が。
舌打ちする。
「結局これかよ」
「…………」
ノアが。
小さく。
息を吐く。
「ミレイアさん」
「はい?」
「あれの準備は?」
「…………」
ミレイアが。
少しだけ。
表情を変える。
「ありますけど……」
「…………」
「ほんとにいいの?」
「えぇ……」
ノアが。
キールから。
視線を外さないまま。
答える。
「陛下からも」
「…………」
「許可は得ています」
「…………」
「はーい」
ミレイアが。
白衣の。
懐へ。
手を入れる。
「…………?」
キールが。
初めて。
怪訝そうな顔をする。
「なんだ……?」
「いやー」
ごそごそ。
「最近ねー」
「…………」
「あたしに」
ミレイアが。
楽しそうに。
笑う。
「悪い友達ができてねー」
「……?」
「その友達が」
懐から。
何かを。
取り出す。
「作り方」
「…………」
「教えてくれたんだー」
「…………!」
細い。
針。
透明な。
液体。
注射器。
「…………」
キールの。
笑みが。
消える。
「何をする……!」
「ん?」
ミレイアが。
注射器を。
軽く。
指で弾く。
「これ?」
「…………!」
「これはねー」
にこっ。
「お喋りになる薬」
「…………!」
ガタッ!
キールが。
椅子ごと。
後ろへ下がろうとする。
「や……」
「?」
「やめろ!」
「大丈夫だよー」
ミレイアが。
注射器を持ったまま。
近づく。
「ちょっと」
「く、来るな!」
「痛いかもー」
「やめろ!」
ガタガタ。
椅子が。
激しく揺れる。
「やめろ……!」
「動くと危ないよー?」
「やめろ!」
「はいはい」
「やめろォォォ!!」
キールの。
叫び声が。
閉ざされた部屋に。
響き渡った。




