歓迎会②
「アルト!」
「ん?」
大きな声に。
アルトくんが。
振り返る。
「こっち来い!」
「バルガス隊長?」
バルガス隊長が。
手招きしている。
「なんですか?」
「いいから来い!」
「はい!」
アルトくんが。
素直に。
近づく。
「入隊したんだろ?」
「はい!」
「なら」
バルガス隊長が。
ニッと笑う。
「改めて、おめでとう」
「……!」
「ありがとうございます!」
「ハッハッハ!」
バシン!
「痛っ!」
背中を。
思い切り。
叩かれた。
「いったぁ!」
「そんくらいで騒ぐな!」
「怪我人ですよ!?」
「もう治りかけだろ!」
「だからって!」
「これから軍人なんだ!」
バルガス隊長が。
豪快に笑う。
「もっと丈夫になれ!」
「無茶言わないでください!」
「ハッハッハ!」
「アルトくーん!」
「?」
今度は。
聞き覚えのある。
妙に明るい声。
「あ、ミレイアさん!」
「いやー!」
ミレイアが。
にこにこと。
近づいてくる。
「よかったねー! 入隊おめでとう!」
「あ、ありがとうございます!」
「うんうん!」
何度も。
満足そうに。
頷く。
「これで研究し放題だねぇ」
「…………」
「…………」
「俺の入隊祝いですよね?」
「もちろん!」
「今、研究って言いました?」
「言ったねぇ」
「俺をですか!?」
「他に誰がいるの?」
「やっぱり!」
「あはは!」
「嫌ですよ!」
「えー?」
「えー、じゃないです!」
「ちょっとくらいいいじゃない」
「何する気なんですか!?」
「そうだねぇ……」
じーっ。
「…………」
「…………」
ミレイアが。
アルトくんを。
上から。
下まで。
眺める。
「とりあえず血を――」
「嫌です!」
「まだ最後まで言ってないよ?」
「絶対嫌なやつです!」
「勘がよくなったねぇ」
「ミレイアさんのせいですよ!」
「あはは!」
「もう!」
「まあまあ」
ミレイアが。
笑いながら。
アルトくんの肩を。
ぽん。
「まぁ」
「?」
「無事で何より!」
「…………」
「色々あったみたいだけど」
ぽんぽん。
「ちゃんと帰ってきた!」
「……はい!」
「それが一番!」
「…………」
アルトくんが。
笑う。
「ありがとうございます、ミレイアさん!」
「うんうん!」
「…………」
「じゃあ」
「?」
「今度、研究室来てね?」
「行きません!」
「なんで!?」
「絶対研究するじゃないですか!」
「するよ?」
「ほら!」
「入隊したんだから、もう逃げられないよー?」
「入隊するところ間違えたかも!」
「あははは!」
「笑い事じゃないですよ!」
「アルト」
「うわっ!」
今度は。
背後。
「ヴェロニカ隊長!」
「随分楽しそうね」
「はい!」
「入隊おめでとう」
「ありがとうございます!」
「これでようやく」
ヴェロニカ隊長が。
ふっと。
笑う。
「正式に軍人ね」
「はい!」
「…………」
その視線が。
アルトくんの。
足元へ。
向く。
「?」
「あ!」
アルトくんも。
気づいた。
「その靴!」
「ええ」
「履いてくれてる!」
「せっかくプレゼントしてもらったんだから」
「…………」
ヴェロニカ隊長が。
片足を。
少しだけ前へ。
「どう?」
「似合ってます!」
「そう」
満足そうに。
微笑む。
「ありがとう」
「はい!」
「…………」
靴。
「…………」
私は。
先ほど。
雑貨屋で聞いた話を。
思い出す。
「…………」
ヴェロニカ隊長を。
エスコート。
服を選んで。
靴を。
プレゼント。
「…………」
なんでしょう。
「レテ?」
「……!」
アルトくんが。
こちらを見ている。
「どうしたの?」
「いえ」
小さく。
首を振る。
「なんでもありません」
「そう?」
「はい」
「…………」
ヴェロニカ隊長が。
ちらりと。
私を見る。
「…………」
「…………」
ふっ。
「?」
なぜか。
笑われました。
「アルト」
「はい!」
今度は。
アーヴェル隊長。
「改めて言っておく」
「?」
「入隊した以上」
腕を組み。
アルトくんを見る。
「もう客ではない」
「…………」
「はい!」
「任務も」
「はい!」
「訓練も」
「はい!」
「容赦はしない」
「はい!」
「馬車馬のように――」
「それ何回目!?」
「…………」
「…………」
「あ」
アルトくんが。
口を押さえる。
「す、すみません!」
「…………」
アーヴェル隊長が。
僅かに。
目を細める。
「早速、口の利き方から訓練が必要らしいな」
「ごめんなさい!」
「ククッ」
「……?」
バルガス隊長が。
笑っている。
「なんですか!?」
「いや」
「?」
「いい部下が増えたなと思ってな!」
「絶対違いますよね!?」
「ハッハッハ!」
「…………」
あちらこちらから。
笑い声。
「…………」
アルトくんも。
結局。
一緒になって。
笑っている。
「…………」
しばらくして。
料理も。
随分。
減ってきた。
みんなも。
思い思いに。
話している。
「…………」
そろそろ。
でしょうか。
「アルトくん」
「ん?」
私は。
鞄へ。
手を伸ばす。
「少しいいですか?」
「いいよ!」
「…………」
小さな。
包みを。
取り出す。
「はい」
「?」
アルトくんが。
それを見る。
「なにこれ?」
「入隊祝いです」
「俺に?」
「他に誰がいるんですか」
「ユノと同じこと言った!」
「ふふっ」
「開けていい?」
「もちろんです」
「やった!」
アルトくんが。
包みを。
丁寧に。
開いていく。
「…………」
そして。
「……あ!」
目が。
大きく。
見開かれた。
「これ!」
「はい」
焦げ茶色の。
細い革紐。
中央には。
僅かに重なる。
二つの銀の輪。
「さっきの店の!」
「気に入っていたでしょう?」
「買ってくれたの!?」
「はい」
「…………」
アルトくんが。
ブレスレットを。
持ち上げる。
「…………」
嬉しそうに。
二つの銀の輪を。
眺める。
「ありがとう、レテ!」
「…………」
まっすぐ。
笑う。
「すっげぇ嬉しい!」
「ふふっ」
「?」
「いえ」
私も。
笑う。
「どういたしまして」
「付けていい?」
「もちろんです」
「…………」
アルトくんが。
自分の手首へ。
革紐を。
巻こうとする。
「…………」
「…………」
「…………あれ?」
「どうしました?」
「これ」
「?」
「どうやって付けるの?」
「…………」
「…………」
「アルトくん」
「なに?」
「貸してください」
「うん!」
まったく。
この人は。
私は。
アルトくんの手から。
ブレスレットを。
受け取った。




