歓迎会
◇ ◇ ◇
「いただきます!」
「早いですね」
ユノくんが。
苦笑する。
「だって腹減ってたんだよ!」
「アルト君、さっきお菓子食べてましたよ…」
「…………」
「アルトさん?」
「これは別腹!」
「普通、甘いものの方に使う言葉じゃないですか?」
「細かいこと気にすんな!」
「ふふっ」
アルトくんが。
料理を。
次々と。
皿へ取っていく。
「これうまっ!」
「おい」
「?」
ログが。
アルトくんの。
皿を見る。
「少しは遠慮したらどうだ」
「なんで!?」
「他の人の分まで食べる気か?」
「バルガス隊長が遠慮せず食えって!」
「限度があるだろうーが!」
「じゃあ早い者勝ちな!」
「なんでそうなんだよ」
「ログも早く取った方がいいぞ!」
「…………」
ログが。
無言で。
料理へ。
手を伸ばす。
「あ! 取った!」
「うるさい」
「ログも食べたいんじゃん!」
「黙って食え」
「ははは!」
「アルトさん」
「ん?」
今度は。
ユノくん。
「これ、僕が作ったんですよ」
「マジ!?」
「はい」
「食べる!」
「ちょっと待ってください。まだ何を作ったか言ってないですよ」
「ユノのなら食べる!」
「…………」
ユノくんが。
少しだけ。
目を丸くする。
「……そうですか」
「どれ?」
「これです」
「おお!」
ぱくっ。
「…………」
「どうです?」
「うまい!」
「本当ですか?」
「うん!」
「よかったです」
「ユノ料理できるんだな!」
「これくらいなら」
「今度また作って!」
「僕を何だと思ってるんですか」
「料理ができる後輩!」
「後輩扱いしないでください」
「え? 俺今日入隊したからユノの方が先輩?」
「そうですよ」
「…………」
「…………」
「ユノ先輩!」
「やめてください!」
「なんで!?」
「なんか腹立ちます!」
「理不尽!」
「ふふっ」
「はい!アルト!」
「ん?」
ヒルトが。
隣から。
ぬっと。
顔を出す。
「これも食べなよ」
「なにこれ?」
「玉子サンド」
「…………」
ヒルトが。
妙に。
得意げだ。
「僕のおすすめ」
「ヒルトが作ったの?」
「…………」
「…………」
「買ってきた」
「作ってないじゃん!」
「美味しければいいでしょ?」
「まあそうだけど!」
「ほら」
「うん」
アルトくんが。
一つ。
手に取る。
ぱくっ。
「…………」
「どう?」
「うまい!」
「でしょ?」
ヒルトが。
満足そうに。
頷く。
「この店の玉子サンドはね――」
ぺしっ。
「痛っ!」
「?」
隣にいた。
フィリアが。
ヒルトの腕を。
叩いた。
「なんで叩くの!?」
「…………」
フィリアが。
黄緑色の手帳を。
開く。
さらさら。
『主役より喋るな』
「別にいいでしょ!?」
ぺしっ。
「痛いって!」
『今日はアルトのお祝い』
「分かってるよ!」
ぺしっ。
「今のはなんで!?」
『なんとなく』
「なんとなくで叩くな!」
「…………」
アルトくんが。
二人を見る。
「仲良くなったな!」
「「…………」」
ヒルトと。
フィリアが。
同時に。
アルトくんを見る。
「え?」
フィリアが。
手帳へ。
何かを書く。
『どこが?』
「いや、なんか……」
「アルト」
ヒルトが。
にこっと笑う。
「余計なこと言うと撃つよ?」
「お祝いの日だよ!?」
「大丈夫。死なないところにするから」
「大丈夫じゃない!」
ぺしっ!
「痛い!」
『アルトを脅すな』
「どっちの味方なの!?」
「ははは!」
アルトくんの。
笑い声。
それにつられて。
周りからも。
笑い声が上がる。
「…………」
私は。
少し離れたところから。
その様子を眺める。
ログ。
ユノくん。
ヒルト。
フィリア。
バルガス隊長。
ヴェロニカ隊長。
ミレイア。
アーヴェル隊長。
そして。
その真ん中で。
笑っている。
アルトくん。
「…………」
最初に。
会った時とは。
随分。
変わりましたね。
「オーズィラ」
「……!」
振り返る。
アーヴェル隊長。
「はい」
「何をぼーっとしている」
「いえ」
小さく。
首を振る。
「楽しそうだな、と思いまして」
「…………」
アーヴェル隊長が。
アルトくんを見る。
「そうだな」
「はい」
「だが」
「?」
「明日からは容赦しない」
「…………」
「新人だからと甘やかすつもりはない」
「ふふっ」
「何がおかしい」
「いえ」
さっきから。
そればかり。
「アルトくんも大変ですね」
「当然だ」
「でも」
「?」
「アーヴェル隊長」
「なんだ」
「嬉しそうですよ」
「…………」
「…………」
「オーズィラ」
「はい?」
「お前も明日から訓練を増やすか」
「なぜですか!?」
「口がよく動くようだからな」
「横暴です!」
「聞こえているぞ」
「聞こえるように言いました!」
「…………」
「…………」
「レテー!」
「!」
アルトくんが。
向こうから。
手を振っている。
「これ食べよう!」
「今行きます!」
「…………」
私は。
アルトくんのところへ。
歩き出す。
「…………」
その途中。
鞄へ。
そっと。
触れる。
中には。
小さな包み。
「…………」
もう少し。
みんなで。
楽しんでから。
その時に。
渡しましょう。




