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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

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めちゃくちゃ怪しい人

     ◇ ◇ ◇


 ガイスト軍本部。


「はぁ……はぁ……」


「レテ……」


「はい?」


「もう走らなくてよくない?」


「駄目です!」


「なんで!?」


 軍本部へ戻ってからも。


 私は。


 アルトくんの手を引き。


 廊下を。


 急いでいた。


「もう軍の中だよ!?」


「分かってます!」


「じゃあ歩こうよ!」


「時間がありません!」


「何の!?」


「…………」


「レテ?」


「…………」


 間に合った。


 多分。


「アルトくん」


「ん?」


「少し待っていてください」


「また!?」


「すぐ戻ります!」


「今日それ何回目!?」


 アルトくんを。


 廊下に残し。


 近くの部屋へ。


 飛び込む。


「何か……」


「レテー?」


「何か……」


 辺りを。


 見回す。


「あ」


 部屋の隅。


 置かれていた。


 麻袋。


「…………」


 これでいいですね。


「お待たせしました!」


「早かったな」


「はい!」


「で、何して――」


 ばさっ!


「うわっ!?」


 アルトくんの。


 頭から。


 麻袋を被せる。


「…………」


「…………」


「レテ?」


「はい」


「何これ?」


「麻袋です」


「それは分かるよ!」


「よかったです」


「よくないよ!」


「では行きましょう」


「待って待って待って!」


 ぎゅっ。


 アルトくんの手を。


 掴む。


「こっちです」


「見えない!」


「私が案内します」


「そういう問題!?」


「段差があります」


「急に普通に案内しないで!」


「危ないので」


「麻袋取れば解決するだろ!?」


「駄目です」


「なんで!?」


「駄目だからです」


「今日のレテ本当におかしい!」


「大丈夫です」


「何が!?」


 手を引いて。


 廊下を。


 歩いていく。


「…………」


「…………」


 すれ違った。


 兵士たちが。


 こちらを見る。


「…………」


「…………」


「レテ」


「はい?」


「俺、今めちゃくちゃ怪しい人になってない?」


「…………」


「…………」


「大丈夫です」


「今の間なに!?」


「気にしないでください」


「見えないけど絶対見られてるよね!?」


「気のせいです」


「視線は感じるんだけど!」


「もう少しですから」


「それ今日何回聞いた!?」


「もう少しです」


「また言った!」


 そのまま。


 廊下の奥へ。


「…………」


 一つの。


 扉。


「…………」


 よかった。


 間に合った。


「アルトくん」


「なに?」


「ここからは静かにしてください」


「なんで?」


「お願いします」


「…………」


「…………」


「分かった」


「ありがとうございます」


 扉へ。


 手を伸ばす。


 ゆっくり。


 開く。


「…………」


 中は。


 静かだった。


「入りますよ」


「うん」


 一歩。


 二歩。


 アルトくんの。


 手を引き。


 部屋の中央へ。


「…………」


「…………」


「レテ?」


「はい」


「もう取っていい?」


「まだです」


「まだ!?」


「もう少しだけです」


「またもう少し!」


「…………」


 扉が。


 閉まる。


「…………」


「…………」


 よし。


 私は。


 アルトくんの。


 麻袋へ。


 手をかける。


「アルトくん」


「ん?」


「入隊」


「?」


「おめでとうございます」


「え?」


 ばさっ!


 麻袋を。


 取る。


「――――!」


「アルト!」


「アルトさん!」


「おめでとうございます!」


「おめでとー!」


「…………」


 アルトくんが。


 目を。


 ぱちぱちと。


 瞬かせる。


 部屋には。


 ログ。


 ユノくん。


 ヒルト。


 フィリア。


 バルガス隊長。


 ヴェロニカ隊長。


 ミレイア。


 そして。


 アーヴェル隊長。


 机の上には。


 料理。


 飲み物。


 そして。


 中央には。


 大きく。


 少し不格好な文字で。


『アルト 入隊おめでとう』


「…………」


 アルトくんが。


 固まる。


「…………」


「…………」


「アルトくん?」


「…………」


「おーい」


 ヒルトが。


 顔を覗き込む。


「麻袋で窒息した?」


「してません!」


「じゃあなんで固まってるの?」


「…………」


「アルト?」


 ログも。


 声をかける。


「…………」


 ようやく。


 アルトくんの。


 口が。


 開く。


「……これ」


「はい?」


「俺の?」


「他に誰がいるんですか」


 ユノくんが。


 くすりと笑う。


「…………」


 アルトくんが。


 もう一度。


 部屋を。


 見回す。


「俺の……入隊祝い?」


「そうだ」


 アーヴェル隊長が。


 腕を組んだまま。


 答える。


「…………」


 アルトくんの。


 顔が。


 少しずつ。


 明るくなっていく。


「…………!」


 そして。


「うおおおおおお!」


「うるさっ!」


 ヒルトが。


 耳を塞ぐ。


「俺の入隊祝いだああああ!」


「そう言ってるでしょ!」


「すげぇ!」


 アルトくんが。


 机へ。


 駆け寄る。


「これ全部食べていいの!?」


「まずそこなの?」


 ヴェロニカ隊長が。


 呆れたように。


 笑う。


「食べていいの!?」


「お前の祝いだからな!」


 バルガス隊長が。


 豪快に笑う。


「遠慮せず食え!」


「やった!」


「ただし」


「?」


 アーヴェル隊長の。


 低い声。


「明日から働け」


「…………」


「馬車馬のようにな」


「またそれ!?」


「はははは!」


 部屋に。


 笑い声が。


 広がる。


「…………」


 よかった。


 間に合った。


 私は。


 小さく。


 息を吐く。


「レテ!」


「はい?」


 振り返ると。


 アルトくんが。


 満面の笑みを。


 浮かべていた。


「ありがとう!」


「…………」


「俺を連れ出してたの、これのためだったんだな!」


「はい」


「全然気づかなかった!」


「…………」


 それは。


 それで。


 少し複雑です。


「でも!」


「?」


「すっげぇ嬉しい!」


「…………」


「ありがとう、レテ!」


「……はい」


 つられて。


 私も。


 笑う。


「どういたしまして」


 さて。


「…………」


 鞄の中。


 小さな。


 包み。


「…………」


 これは。


 もう少し。


 あとで。


 渡しましょう。

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