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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

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贈り物

「レテ?」


「…………」


「レテー?」


「……はい!」


「さっきからあの店見てるけど」


「…………!」


 気づかれてる。


「なんか忘れ物?」


「い、いえ!」


「じゃあ戻ろうよ」


「駄目です!」


「なんで!?」


「…………」


 どうする。


 あのブレスレットを。


 買いたい。


 でも。


 アルトくんがいる。


 一緒に戻れば。


 当然。


 見られる。


「…………」


「レテ?」


「少し」


「?」


「ここで待っていてください!」


「え?」


「すぐ戻りますので!」


「なんで?」


「…………」


「…………」


「ちょっとした用事です!」


「だから何の?」


「ちょっとした用事は、ちょっとした用事です!」


「怪しい!」


「怪しくありません!」


「今日のレテずっと怪しいよ!」


「…………」


 否定。


 できない。


「と、とにかく!」


 アルトくんの。


 肩を掴む。


「ここから動かないでください!」


「えぇ?」


「絶対ですよ!」


「分かったよ」


「本当ですか?」


「うん」


「絶対?」


「絶対!」


「…………」


 よし。


「では!」


 くるり。


 踵を返す。


「あ!」


「?」


「レテ!」


「なんですか!?」


「あれ見ていい?」


「…………」


 アルトくんが。


 指差した先。


 露店。


 その周りを。


 ふわふわと。


 小さな精霊たちが。


 飛び回っていた。


「精霊!」


「…………」


「近くで見てきていい!?」


「…………」


 これは。


「いいですよ!」


「やった!」


「でも!」


「?」


「絶対に追いかけ回さないでくださいね!」


「分かってる!」


「触ろうとしない!」


「分かってるって!」


「逃げても追わない!」


「俺をなんだと思ってるの!?」


「アルトくんです!」


「どういう意味!?」


「では、行ってきます!」


「説明してよ!」


 アルトくんの声を。


 背中に受けながら。


 私は。


 雑貨屋へ。


 走る。


 カラン!


「すみません!」


 扉を開け。


 真っ直ぐ。


 先ほどの棚へ。


「…………」


 あった。


 焦げ茶色の。


 細い革紐。


 中央で。


 僅かに重なる。


 二つの銀の輪。


「…………」


 手に取る。


『これ、ちょっとカッコいいかも』


「…………」


 さっきまで。


 アルトくんが。


 嬉しそうに眺めていたもの。


『じゃあ、もっと気に入った!』


「…………」


 入隊祝い。


 ですから。


「これ、ください」


 店員へ。


 ブレスレットを渡す。


「贈り物ですか?」


「はい」


「でしたら、お包みしますね」


「お願いします」


「…………」


 贈り物。


「…………」


 なんだか。


 そう言われると。


 少しだけ。


 変な感じがする。


 でも。


 これは。


 アルトくんの。


 入隊祝い。


 それだけ。


「お待たせしました」


「ありがとうございます!」


 小さな包みを。


 受け取る。


 鞄の中へ。


 しまう。


「…………」


 よし。


 これで――


「レテー!」


「!?」


 外から。


 アルトくんの声。


「レテー!」


「な、なんですか!?」


 慌てて。


 店を飛び出す。


「見て!」


「?」


 アルトくんが。


 嬉しそうに。


 指差している。


「さっきより近い!」


「…………」


 その先。


 小さな精霊。


 アルトくんとの距離。


「…………」


「…………」


「五歩くらいありますけど?」


「さっき三歩って言ったの嘘だった!」


「アルトくん!?」


「でも逃げない!」


「そこ喜ぶところなんですか!?」


「喜ぶところだよ!」


「…………」


 まったく。


 この人は。


「ほら!」


 アルトくんが。


 満面の笑みで。


 こちらを見る。


「レテも見て!」


「はいはい」


「なんで呆れてるの!?」


「呆れてませんよ」


「絶対呆れてる!」


「それより」


「?」


 時間。


「…………!」


 忘れてました。


「アルトくん!」


「なに!?」


「本当に急ぎますよ!」


「また!?」


「走ってください!」


「だから急に引っ張るなって!」


 今度こそ。


 私は。


 アルトくんを連れて。


 軍へと。


 走り出した。

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