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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

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ティータイム


     ◇ ◇ ◇


「美味しい!」


 ぱくっ。


 アルトが。


 焼き菓子を。


 頬張る。


「これ美味しい!」


「ふふっ」


 向かいに座る。


 レテが。


 小さく笑う。


「さっきも言ってましたよ」


「だって美味しいんだもん!」


「気に入ったんですね」


「うん!」


 ガイストの街。


 通りに面した。


 小さな店。


 窓際の席。


 二人の前には。


 温かい飲み物と。


 甘い焼き菓子。


「…………」


 アルトが。


 もう一口。


「…………」


 もぐもぐ。


「…………」


 レテが。


 カップを傾ける。


「…………」


「…………」


 穏やかな。


 時間。


「……アルトくん」


「ん?」


「改めて」


 レテが。


 カップを置く。


「入隊、おめでとうございます」


「…………」


「?」


「……へへ」


 アルトが。


 少しだけ。


 照れくさそうに笑う。


「ありがとう!」


「本当に入っちゃいましたね」


「その言い方だと入っちゃ駄目だったみたいじゃん!」


「そういう意味じゃありませんよ」


「じゃあどういう意味?」


「だって」


 レテが。


 少し考える。


「最初に会った頃のアルトくんって」


「うん」


「軍人になるようには見えなかったので」


「…………」


「…………」


「それは俺も思う」


「ふふっ」


「笑うなよ!」


「すみません」


「俺だって色々あったんだからな!」


「知ってますよ」


「…………」


 アルトが。


 焼き菓子を。


 ちぎる。


「でもさ」


「はい?」


「俺」


 ぱくっ。


「ガイスト軍に入れてよかったと思ってる」


「…………」


 レテが。


 アルトを見る。


「まだ初日ですよ?」


「そうだけど」


「馬車馬のように働かされるらしいですよ?」


「やめてよ!」


「ふふっ」


「二人に言われたんだから結構怖いんだぞ!」


「二人?」


「シオンさんとアーヴェル隊長!」


「…………」


「?」


「それは……」


 レテが。


 少しだけ。


 気の毒そうな顔になる。


「頑張ってください」


「助けてよ!」


「私にはどうにもできません」


「見捨てられた!」


「ふふっ」


「…………」


 アルトが。


 頬を膨らませながら。


 飲み物を。


 一口。


「でも」


「?」


「軍に入ったら」


 カップを置く。


「もっと色んな場所に行けるだろ?」


「そうですね」


「色んな人に会って」


「はい」


「色んな精霊にも会える!」


「…………」


 レテが。


 苦笑する。


「結局そこなんですね」


「当たり前じゃん!」


「アルトくん、本当に精霊が好きですよね」


「うん!」


 即答。


「だってさ」


 アルトが。


 窓の外を見る。


 通りを行き交う。


 人々。


 その間を。


 小さな精霊が。


 ふわり。


 飛んでいく。


「まだ俺が知らない精霊が、いっぱい居るんだろ?」


「もちろんです」


「見たい!」


「はい」


「話してみたい!」


「…………」


「触ってみたい!」


「逃げられなければいいですね」


「…………」


「…………」


「それ言う?」


「ふふっ」


「最近ちょっと近づけるようになったんだから!」


「本当ですか?」


「本当!」


「何歩くらい?」


「…………」


「…………」


「三歩?」


「まだ遠いですね」


「前より近い!」


「そうですね」


「絶対笑ってる!」


「笑ってませんよ」


「笑ってるよ!」


「ふふっ」


「ほら!」


「…………」


 二人の。


 笑い声が。


 静かな店内に。


 小さく響く。


「…………」


 やがて。


 アルトが。


 頬杖をつく。


「レテ」


「はい?」


「レテはさ」


「?」


「なんでガイスト軍に入ったの?」


「…………」


 レテの手が。


 止まる。


「俺」


 アルトが。


 首を傾げる。


「そういえば聞いたことなかったなって」


「…………」


 レテが。


 カップへ。


 視線を落とす。


「私が」


「うん」


「軍に入った理由……」


「うん!」


「…………」


 しばらく。


 考えて。


「…………」


 レテが。


 ゆっくり。


 顔を上げた。

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