不穏な3人
◇ ◇ ◇
翌日。
ガイスト軍。
「よし!」
パンッ!
アルトが。
両頬を叩く。
「今日から正式に軍人!」
「…………」
胸を張る。
昨日。
ようやく。
正式に。
ガイスト軍の一員となった。
「…………」
そして。
記念すべき。
入隊初日。
「…………」
アルトが。
首を傾げる。
「……何すればいいんだ?」
「…………」
何も。
聞いていない。
「まあ」
歩き出す。
「誰かに聞けばいっか!」
その時。
「おはようございます、アルトさん」
「ん?」
廊下の向こう。
ユノが。
立っていた。
「ユノ! おはよ!」
「はい。おはようございます」
「ちょうどよかった!」
「?」
「俺、今日から正式に入隊したんだけどさ」
「はい」
「何すれば――」
「…………」
ユノの視線が。
アルトの後ろへ。
動いた。
「?」
アルトが。
振り返ろうとする。
「アルトさん」
「ん?」
「何もありませんよ」
「…………」
「…………」
「俺、まだ何も聞いてないけど?」
「…………」
ニコニコ。
「ユノ?」
「何でしょう?」
「今、後ろに何かあった?」
「ありませんよ?」
「じゃあなんで先に否定したの?」
「…………」
「…………」
ニコニコ。
「怪しい!」
「気のせいですよ」
「絶対なんかある!」
アルトが。
ユノの横を。
通り抜けようとする。
「ちょっと待ってください」
「やっぱあるじゃん!」
「ありませんよ」
「じゃあ通して!」
「…………」
「ユノ?」
その時。
「アルトくん!」
「ん?」
聞き慣れた。
声。
「レテ!」
小走りで。
レテが。
こちらへやってくる。
「お、おはようございます!」
「おはよ!」
「…………」
「…………」
レテが。
ユノを見る。
「…………」
ユノが。
小さく。
頷く。
「…………?」
アルトが。
二人を。
交互に見る。
「今なんか通じ合った?」
「いえ!」
「何もありませんよ」
「息ぴったりじゃん!」
「アルトくん!」
「な、なに?」
レテが。
アルトの腕を。
掴む。
「ちょっと私と出かけませんか?」
「今から?」
「はい!」
「なんで?」
「…………」
「…………」
「レテ?」
「お散歩です!」
「散歩?」
「はい!」
「俺、今日から仕事なんだけど」
「大丈夫です!」
「何が!?」
「今日はお休みです!」
「入隊初日から!?」
「はい!」
「ガイスト軍大丈夫!?」
「大丈夫です!」
「さっきから大丈夫しか言ってないよ!?」
「大丈夫です!」
「ほら!」
「と、とにかく!」
レテが。
ぐいっ。
アルトの腕を引く。
「行きましょう!」
「ちょ、待って!」
「早く!」
「どこ行くの!?」
「それは……」
「…………」
「…………」
レテの視線が。
泳ぐ。
「街です!」
「広すぎる!」
「行けば分かります!」
「何しに!?」
「…………」
「…………」
「色々です!」
「絶対なんか隠してるだろ!」
「隠してません!」
「じゃあユノは何してたの!?」
「…………」
レテが。
ユノを見る。
「…………」
ユノも。
レテを見る。
「…………」
「…………」
ユノが。
ニコッ。
「仕事ですよ」
「何の?」
「秘密です」
「隠してるじゃん!」
「アルトくん!」
「なに!?」
「行きますよ!」
「うわっ!」
ぐいぐい。
レテが。
アルトを。
引っ張っていく。
「待ってって!」
「待ちません!」
「なんで!?」
「時間がありませんから!」
「何の時間!?」
「…………」
「レテ?」
「…………」
「レテ!」
「と、とにかく行きましょう!」
「やっぱ怪しいってぇぇぇ!」
「いってらっしゃい」
ユノが。
ニコニコと。
二人へ。
手を振る。
「ユノ! 助けて!」
「楽しんできてください」
「何を!?」
◇ ◇ ◇
「…………」
アルトと。
レテの姿が。
廊下の向こうへ。
消えていく。
「…………」
ユノが。
しばらく。
その方向を見つめる。
「……行きましたよ」
「そうか」
物陰から。
ログが。
姿を現した。
「レテさん、どのくらい時間を稼げますかね?」
「レテ次第だろ」
「ですよね」
「ただ……」
ログが。
アルト達の消えた方を見る。
「あいつ、嘘つくの下手だからな」
「それは僕も心配してます」
「バレる前に終わらせるぞ」
「はい」
ログが。
足元へ。
視線を落とす。
そこには。
大きな。
木箱。
「あとどれくらいだ?」
「一時間くらいですね」
「……ギリギリだな」
「ええ」
「残りは?」
「まだ結構ありますよ」
「どのくらいだ」
「結構です」
「具体的に言え」
「結構です」
「糸目」
「はい?」
「お前、楽しんでんだろ」
「まさか」
ニコニコ。
「その顔で言うな」
「僕、元からこういう目ですから」
「……ったく」
ログが。
木箱を。
抱え上げる。
「急ぐぞ」
「はい」
ユノも。
別の木箱へ。
手を伸ばす。
「ログさん」
「なんだ」
「もしアルトさんが途中で戻ってきたら、どうします?」
「…………」
「…………」
ログが。
少し。
考える。
「追い返す」
「おお」
「なんだ」
「ログさんの方が物騒じゃないですか」
「うるせぇ」
「ふふ」
「笑ってねぇで運べ」
「はいはい」
「返事」
「はい」
「…………」
「…………」
二人が。
木箱を抱え。
廊下を進んでいく。
「…………」
まだ。
アルトには。
知られるわけにはいかない。
準備は。
まだ。
終わっていない。
「ログさん」
「なんだ」
「絶対、間に合わせましょうね」
「ああ」
その言葉だけを残し。
二人は。
扉の奥へ。
消えていった。




