↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
275/470

そりゃないっすよ


     ◇ ◇ ◇


「違う……」


 森の中。


 一人。


 リヒトが。


 歩いていた。


「俺は……」


 ふらふらと。


 覚束ない足取りで。


「マロウ……」


「…………」


 頭を。


 押さえる。


「リヒトは……」


 足が。


 止まる。


「食っ……」


「…………っ」


 頭を振る。


「違う……」


 また。


 歩く。


「食べたくない……」


「…………」


「もう……」


 掠れた声が。


 漏れる。


「食べたくない……」


「…………」


「リヒト……」


 どこ。


「…………」


 そんな言葉を。


 何度も。


 何度も。


 繰り返しながら。


 森の奥へ。


 進んでいく。


「――兄貴!」


「…………」


 声。


 リヒトの足が。


 止まった。


 バヂッ!


 青白い雷が。


 木々の間を走る。


「やっと見つけた!」


 ライ。


「兄貴!」


 リヒトへ。


 駆け寄る。


「大丈夫っすか?」


「…………」


「なんか変っすよ?」


「…………」


 返事はない。


 俯いたまま。


 何かを。


 呟いている。


「……兄貴?」


 ライが。


 顔を覗き込む。


「もしかして」


「…………」


「あのヒルトってやつのせいっすか?」


「…………っ」


 リヒトの肩が。


 僅かに。


 揺れた。


「…………?」


「兄貴」


 ライが。


 肩へ手を伸ばす。


「しっかりしてっす!」


「…………」


「なんなら俺――」


 いつものように。


 笑う。


「あいつ殺してくるっすよ?」


「…………!」


 リヒトの目が。


 僅かに。


 動いた。


「兄貴はここで待っててくださいっす」


「…………」


「俺ならすぐ――」


「…………」


「それより」


 ライが。


 少しだけ。


 声を落とす。


「俺らの目的――」


 ザシュッ。


「…………」


 音がした。


「え?」


 ライの目が。


 見開かれる。


「…………」


 何が。


 起きた。


 分からない。


「…………?」


 視線を。


 ゆっくりと。


 下へ。


「……え?」


 胸から。


 腹へ。


 斜めに。


 走る。


 一筋の傷。


 遅れて。


 血が。


 噴き出した。


「がっ……!」


 ライの身体が。


 ぐらりと揺れる。


「…………」


 その向こう。


 リヒトの手には。


 二振りの。


 《薄氷》。


「…………」


 斬られた。


 兄貴に。


「……なん……」


 ドサッ。


 ライが。


 膝をつく。


「兄……貴……?」


「…………」


 リヒトは。


 答えない。


 ライを見ることすら。


 しない。


 《薄氷》を下げ。


 そのまま。


 歩き出す。


「…………」


「ちょ……」


 ライが。


 手を伸ばす。


「待って……くださいっすよ……」


「…………」


 リヒトは。


 止まらない。


「兄貴……」


「…………」


 遠ざかっていく。


 その背中を。


 ライは。


 ただ。


 見つめる。


「…………」


 血が。


 地面へ落ちる。


「そんな……」


 口元が。


 僅かに。


 歪んだ。


「そりゃ……」


 いつものように。


 笑おうとして。


 笑えない。


「ないっすよ……」


「…………」


 リヒトの姿が。


 木々の向こうへ。


 消えていく。


「…………」


 ライが。


 傷口を押さえる。


「……あー」


 そのまま。


 仰向けに。


 倒れた。


「…………」


 空を。


 見上げる。


「これは……」


 血に濡れた。


 自分の手を見る。


「ダメなやつだな……」


「…………」


 瞼が。


 ゆっくりと。


 落ちていく。


     ◇ ◇ ◇


「…………」


 その頃。


 アルトのすぐそば。


 誰にも。


 姿を見せることなく。


 ひっそりと。


 ついてきていた。


 小さな存在。


「…………」


 ぴくり。


 何かを。


 感じ取ったように。


 顔を上げる。


「ギィ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。