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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

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僕と話そう

 冷たい風が。


 二人の間を抜けていく。


「…………」


 そんな二人を。


 ライが。


 交互に見た。


「んー……」


「…………?」


 ヒルトが。


 僅かに眉を寄せる。


「何?」


「いや」


 ライが。


 頭を掻く。


「お前じゃ兄貴には敵わねぇだろ」


「…………」


「何だって?」


「そのまんま」


 ライが。


 呆れたように。


 肩をすくめる。


「今のお前じゃ無理だって」


「やってみなきゃ分からないだろ」


「分かるっつーの」


 ライが。


 ヒルトから。


 視線を外す。


「…………」


 その先。


 《穿雫》を構える。


 シオン。


 そして。


 リヒトの肩に残る。


 小さな傷。


「そういや……」


 ライの目が。


 細くなる。


「あいつか」


「……?」


「兄貴に傷つけたの」


「…………」


 次に。


 アルトを見る。


「それに……」


「なんだよ」


「兄弟も」


 ニッ。


「見掛け倒しじゃねぇみたいだし」


「兄弟じゃないって!」


「…………」


 ライの笑みが。


 深くなる。


「だったら――」


「おい!」


「…………?」


 背後から。


 怒鳴り声。


 ライが。


 振り返る。


「……あぁ」


 ゼンが。


 《クラッシャー》を構えている。


「お前もいたな」


「忘れてんじゃねぇ!」


「ハハッ! 悪りぃ!」


「さっきまで俺と戦ってただろうが!」


「ああ」


 ライが。


 笑いながら。


 ゼンへ向き直る。


「でも……」


「……?」


 その笑顔が。


 僅かに。


 変わった。


「お前はもういいや!」


「……!?」


 バヂッ!


 消える。


「な――」


 次の瞬間。


 ライが。


 ゼンの懐にいた。


「よっ!」


 ドゴッ!


「ぐっは!」


 拳が。


 ゼンの腹へ。


 深々とめり込んだ。


「…………っ」


 ゼンの身体が。


 僅かに浮く。


「が……」


 白目を剥き。


 《クラッシャー》を纏った腕が。


 だらりと落ちる。


 ドサッ。


「ゼン!」


 ヒルトが。


 目を見開く。


「…………」


 ゼンは。


 動かない。


「お前……!」


 ヒルトが。


 銃口をライへ向ける。


「ハハッ!」


 ライは。


 そんなヒルトを気にもせず。


 倒れたゼンへ。


 手を振った。


「意外と楽しかった!」


「…………」


「また遊ぼうぜ〜!」


「気絶してるよ!」


「起きたら伝えといて!」


「自分で言え!」


 ライが。


 くるりと。


 背を向ける。


「さて」


 その視線が。


 シオンへ向く。


「…………」


 シオンが。


 《穿雫》を構え直した。


「次は貴方ですか」


「おう!」


 ライが。


 楽しそうに笑う。


「兄貴に傷つけたんだろ?」


「…………」


「ちょっと興味あるわ」


「ライ!」


 アルトが。


 《砕》を構える。


「これ以上邪魔すんな!」


「兄弟もやる?」


「だから兄弟じゃ――」


「決まり!」


「最後まで聞け!」


「ハハハ!」


 ライが。


 右手を上げる。


「んじゃ――」


 バチッ。


 指先で。


 青白い雷が弾けた。


「…………!」


 アルトの表情が。


 変わる。


「――《伝雷》」


 バヂィッ!


「……!」


 雷が。


 地面を走った。


 速い。


「シオンさん!」


「っ!」


 シオンが。


 《穿雫》を構える。


 だが。


 青白い雷は。


 地面から。


 木の根へ。


 木の根から。


 幹へ。


 まるで。


 伝わる道を選ぶように。


 一瞬で。


 シオンへ。


「……!」


 バヂィッ!


「ぐっ!」


 ドンッ!


 シオンの身体が。


 大きく吹き飛んだ。


「シオンさん!」


 アルトが。


 駆け出そうとする。


「ライ!」


 振り返る。


「てめぇ!」


「ハハハ!」


 ライが。


 腹を抱えて笑う。


「悪りぃ、兄弟!」


「何が悪りぃだ!」


「でもよ!」


 ライが。


 シオンの飛ばされた方向を指差す。


「こっちの方が面白そうだ!」


「ふざけんな!」


「アルト君……!」


「……!」


 シオンが。


 《穿雫》を地面へ突き。


 身体を起こす。


「ぐっ……」


「シオンさん!」


「こちらは……大丈夫です」


「でも――」


「あー」


「……?」


 ライが。


 耳を掻く。


「うるせぇな」


 バヂッ!


「……!」


 消えた。


「アルト君!」


「え――」


 シオンの声と。


 ほぼ同時。


「よっ」


「……!」


 目の前に。


 ライがいた。


「いつの間に――」


「兄弟も……」


 ライが。


 ニィッと笑う。


「こっちこーい!」


「は?」


 ドゴッ!


「ぐあっ!」


 拳が。


 アルトの腹へ入る。


 そのまま。


 身体が。


 大きく浮いた。


「うわぁぁぁ!」


 ドンッ!


 アルトが。


 シオンのいる方向へ。


 吹き飛ばされていく。


「アルト君!」


 地面を。


 何度も転がる。


「ぐっ……!」


 アルトが。


 顔を上げる。


 視線の先。


 ライの身体を。


 青白い雷が包んでいる。


「…………」


 さっきの。


 シオンへの攻撃。


 あれは。


 ただ。


 雷を纏った攻撃じゃない。


 明確に。


 操っていた。


「ライまで……」


 アルトが。


 《砕》を支えに。


 立ち上がる。


「術を使えるのかよ……!」


「ハハッ!」


 バヂッ!


 ライが。


 再び。


 雷となって駆ける。


「さぁ!」


 二本のカタールを。


 構える。


「兄弟!」


「兄弟じゃない!」


「そっちの槍の奴も!」


「…………」


 シオンが。


 《穿雫》を構える。


「兄貴のところより――」


 ライが。


 牙を見せるように。


 笑った。


「こっちの方が面白そうだ!」


 バヂッ――!


 青白い雷が。


 森の奥へ。


 駆け抜けていった。


「待て!」


 アルトが。


 その後を追う。


「アルト君!」


 シオンも。


 《穿雫》を握り。


 駆け出した。


「…………」


 やがて。


 三人の姿が。


 木々の向こうへ消えていく。


 残されたのは。


 気を失ったゼン。


 そして。


「…………」


「…………」


 向かい合う。


 二人の兄弟。


 ヒルトが。


 静かに。


 《ツインコード》を構え直す。


「……まったく」


 小さく。


 息を吐いた。


「好き勝手して……」


「…………」


 リヒトが。


 《薄氷》を構える。


「でも……」


 ヒルトの表情から。


 笑みが消える。


 もう。


 邪魔は入らない。


「兄さん」


 二つの銃口が。


 真っ直ぐ。


 リヒトを捉えた。


「今度こそ――」


 カチッ。


「僕と話そう」

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