人喰らい②
パキン――!
「シオンさん!」
地面を突き破り。
巨大な氷柱が。
シオンへ襲いかかった。
「っ!」
シオンが。
横へ跳ぶ。
ドォン!
氷柱が。
背後の木を。
まとめて凍らせる。
「――《水槍》!」
着地と同時。
《穿雫》を突き出す。
水の槍が。
リヒトへ飛ぶ。
「…………」
パキンッ!
凍る。
「アルト君!」
「はい!」
その隙に。
アルトが。
一気に距離を詰めた。
「はぁっ!」
《砕》を。
横薙ぎに振るう。
ドゴッ!
脇腹。
確かな手応え。
「……!」
入った。
だが。
「…………」
リヒトは。
動かない。
「……え?」
避けない。
防がない。
それどころか。
痛がる様子すらない。
「アルト君! 離れて!」
「っ!」
リヒトの手が。
アルトへ向く。
パキンッ!
「うわっ!」
氷柱。
アルトが。
身体を反らして避ける。
「――《水輪》!」
間髪入れず。
シオンの水輪が。
背後から迫る。
「…………」
リヒトが。
振り返る。
パキッ!
一つが凍る。
もう一つ。
「はぁっ!」
シオンが。
自ら踏み込んだ。
《穿雫》を突き出す。
「…………!」
リヒトが。
身体を傾ける。
穂先が。
胸元を掠める。
そのまま。
シオンが《穿雫》を返す。
「――《水蛇》!」
水が。
足元へ絡みつく。
パキンッ!
凍る。
バキッ!
砕ける。
「アルト君!」
「はい!」
アルトが。
背後から飛び込む。
《砕》を。
振り下ろす。
ゴンッ!
肩を捉えた。
「…………」
それでも。
リヒトは。
振り返るだけ。
「なんで……!」
もう一撃。
ドゴッ!
腹。
さらに。
ゴッ!
顎。
「…………」
効かない。
全部。
当たっている。
なのに。
傷一つ。
つかない。
「アルト君!」
「っ!」
シオンの声。
リヒトの手が。
目の前にある。
パキッ――。
「うわっ!」
アルトが。
咄嗟に飛び退く。
直後。
いた場所が。
一瞬で凍りついた。
「…………」
着地。
すぐに。
リヒトを見る。
(なんで……?)
攻撃は。
当たっている。
手応えだって。
間違いなくある。
なのに。
(全然……効いてない)
「――《水槍》!」
シオンが。
さらに攻める。
水槍。
リヒトが。
横へ避ける。
「…………!」
アルトの目が。
僅かに開いた。
(また……)
シオンの攻撃は。
避けた。
「――《水輪》!」
左右から。
水輪。
パキンッ!
一つを凍らせる。
もう一つを。
身体を沈めて躱す。
(シオンさんの術は……)
避ける。
凍らせる。
でも。
「…………」
アルトが。
《砕》を見る。
(俺の攻撃は……)
防ぎすらしない。
「アルト君!」
「はい!」
考えるのは。
後。
アルトが。
再び駆ける。
正面。
「はぁぁっ!」
渾身の一撃。
ドゴォッ!
《砕》が。
リヒトの胸を捉えた。
「…………」
「くっ……!」
押し込む。
それでも。
リヒトの表情は。
変わらない。
朦朧とした瞳が。
ゆっくり。
アルトへ向く。
「…………」
その目に。
また。
嫌悪が浮かんだ。
「……気味が悪い」
「っ!」
リヒトが。
腕を振るう。
ドンッ!
「ぐっ!」
アルトの身体が。
吹き飛んだ。
「アルト君!」
地面を。
何度も転がる。
「ぐ……っ」
すぐに。
身体を起こす。
その目の前を。
水が駆け抜けた。
「――《水槍》!」
「…………」
リヒトが。
手を向ける。
パキンッ!
凍結。
「――《水蛇》!」
次。
足元。
パキッ!
凍結。
「――《水輪》!」
さらに。
左右。
「…………!」
リヒトが。
後ろへ跳ぶ。
ヒュンッ!
二つの水輪が。
目の前で交差した。
「…………」
着地したリヒトへ。
シオンが。
間髪入れず。
《穿雫》を突き出す。
「はぁっ!」
ガキンッ!
今度は。
リヒトの腕を覆った氷が。
《穿雫》を受け止める。
「……!」
アルトが。
その光景を見る。
自分には。
しなかった。
防御。
(やっぱり……!)
アルトの攻撃と。
シオンの攻撃。
何かが。
違う。
そして。
バルガスから聞いた。
人喰らいの話。
「…………」
アルトが。
《砕》を握り締める。
(もしかして……)
自分の攻撃に。
足りないもの。
シオンの術には。
あって。
自分の《砕》には。
ないもの。
(霊素……?)
その瞬間。
リヒトが。
シオンの《穿雫》を弾いた。
「っ!」
シオンの身体が。
僅かに崩れる。
「シオンさん!」
「来ないで!」
リヒトが。
地面へ。
手を向ける。
パキッ――。
パキパキパキパキ――!
氷が。
爆発するように。
二人へ広がった。




