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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

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兄貴に似てんな


 ヒルトが。


 静かに息を吐く。


 普通の攻撃は。


 ほとんど通らない。


 けれど。


 霊素を纏わせれば。


 傷をつけられる。


 問題は――。


「ゼン」


「あ?」


「あと何回できる?」


「…………」


 ゼンが。


 《クラッシャー》を見る。


「知らねぇ」


「知らないって……」


「数えながら戦ってねぇんだよ!」


「……じゃあ、一回ってことにしとく」


「勝手に決めんな!」


「ハハッ!」


 ライが笑った。


「なんだよお前ら!」


 バチッ。


 青白い雷が。


 全身を駆け巡る。


「仲良いじゃん!」


「「良くない!」」


「ハハハハ!」


 ライが。


 腹を抱えて笑う。


「息ぴったりじゃん!」


「……最悪」


「こっちの台詞だ!」


「…………」


 ヒルトが。


 《ツインコード》を構える。


「ゼン」


「なんだよ」


「君は好きにやって」


「は?」


「僕が合わせる」


「…………」


 ゼンが。


 ちらりとヒルトを見る。


「できんのかよ」


「誰に言ってるの?」


「…………チッ」


 ゼンが。


 前を向いた。


「足引っ張んなよ」


「君こそ」


「おい!」


「ハハッ!」


 ライが。


 嬉しそうに。


 カタールを構えた。


「いいねぇ!」


 バチバチッ!


「じゃ――」


 姿勢を。


 低くする。


「遊ぼうぜ!」


 消えた。


「っ!」


 ゼンが。


 地面を踏み込む。


 振動。


「右!」


 ドンッ!


 《クラッシャー》を振り抜く。


 だが。


「ハズレ!」


「なっ!?」


 いない。


 上。


「ゼン!」


「あ?」


 ライが。


 ゼンの頭上にいた。


「こっち!」


 カタールを振り下ろす。


「っ!」


 ギィン!


 銃弾が。


 刃を弾いた。


「お?」


 ライの身体が僅かにぶれる。


「前見て」


 ヒルト。


 その銃口には。


 淡い光。


 霊素が。


 銃身を伝っている。


「――!」


 パンッ!


「おっと!」


 ライが身体を捻る。


 頬を。


 銃弾が掠めた。


「…………」


 つぅ――。


 一筋。


 血が流れる。


「おー」


 ライが。


 自分の頬に触れる。


 指についた。


 赤い血を見る。


「できんじゃん」


「…………」


 ヒルトは。


 《ツインコード》を見る。


 やっぱり。


 通った。


 霊素を。


 銃弾に纏わせる。


 それなら――。


「じゃあ」


 ライが。


 ニィッと笑った。


「俺も――」


 バヂッ!!


「ちょっと本気出すわ」


「……!」


 青白い雷が。


 爆発的に膨れ上がった。


「ヒルト!」


「分かってる!」


 直後。


 ライが消えた。


「――っ!」


 速い。


 さっきまでとは。


 まるで違う。


「後ろ!」


 ゼンの声。


 振り返る。


 もう。


 遅い。


「おせぇ!」


「っ!」


 カタールが。


 ヒルトの脇腹を斬り裂いた。


「ぐっ……!」


「ヒルト!」


 ゼンが拳を振るう。


「この野郎!」


「だから――」


 ライが。


 笑う。


「おせぇって!」


 バチッ!


「なっ――」


 ゼンの懐。


 ライがいる。


 カタールの柄が。


 腹へ叩き込まれた。


「がっ!」


 身体が浮く。


 さらに。


「ほい!」


 回し蹴り。


 ドゴッ!


「ぐぁっ!」


 ゼンが。


 地面を転がる。


「ゼン!」


「人の心配してる場合か?」


「……!」


 目の前。


 カタールの切っ先。


 ヒルトが。


 咄嗟に《ツインコード》を交差させる。


 ギィン!


「ぐっ……!」


「軽ぃな!」


 押される。


「…………っ!」


「お前――」


 ライが。


 ヒルトの顔を間近で見る。


「…………」


 一瞬。


 動きが止まった。


「……?」


「やっぱ」


 ライの目が。


 細くなる。


「なんか……」


 じっと。


 ヒルトを見る。


「兄貴に似てんな」


「…………え?」


 ヒルトの瞳が。


 揺れた。


「今――」


「隙あり!」


「っ!」


 ドゴッ!


「ぐぁっ!」


 蹴りが。


 ヒルトの腹へ入る。


 身体が吹き飛び。


 地面を転がった。


「……っ、く……」


「ヒルト!」


 ゼンが。


 駆け寄ろうとする。


 だが。


「来るな!」


「あ?」


「…………」


 ヒルトは。


 腹を押さえながら。


 ゆっくりと立ち上がる。


 痛い。


 それより。


 今。


 確かに。


 聞いた。


「…………」


 《ツインコード》を握る手に。


 力が入る。


「ライ」


「あ?」


「今……」


 ヒルトが。


 真っ直ぐ。


 ライを見る。


「兄貴って言った?」


「言ったけど?」


「…………」


「それが?」


 ライは。


 何でもないことのように。


 首を傾げた。


「……君の」


 ヒルトの声が。


 低くなる。


「兄貴の名前は?」


「…………」


 ライが。


 きょとんとする。


 そして。


「なんで?」


「答えて」


「やだ」


「…………」


「知りてぇなら」


 二本のカタールを。


 構える。


 青白い雷が。


 再び。


 ライの身体を走った。


「俺から聞き出してみろよ」


「…………」


 ヒルトは。


 ゆっくりと。


 二丁の《ツインコード》を構えた。


 その目から。


 先ほどまでの迷いが。


 消えていた。

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