同じ敵
◇
バチッ。
ライの身体を。
青白い雷が走った。
「――《伝雷》」
「っ!」
消える。
「右!」
ゼンが叫んだ。
ヒルトは。
考えるより先に。
右手の《ツインコード》を向ける。
パンッ!
「お?」
銃弾が。
青白い閃光のすぐ横を抜けた。
次の瞬間。
「後ろ!」
「分かってる!」
振り返る。
ライが。
すでに目の前にいた。
「遅ぇ!」
カタールが。
横薙ぎに走る。
「っ!」
ヒルトが身体を反らす。
刃が。
鼻先を掠めた。
「ヒルト!」
「大丈夫!」
ゼンが踏み込む。
「おらぁ!」
《クラッシャー》を叩き込む。
ドゴッ!
「…………」
「……チッ」
確実に。
顔へ入った。
なのに。
ライは。
僅かに首を動かしただけだった。
「だからそれ」
ライが笑う。
「効かねぇって」
「うるせぇ!」
ゼンが。
もう一度拳を振るう。
ライは。
今度は避けた。
「おっそ!」
「っ!」
横から。
カタール。
ゼンが腕で受ける。
ギィン!
「ぐっ……!」
「ゼン!」
パンッ!
ヒルトが発砲する。
ライの肩へ。
銃弾が直撃した。
だが。
「…………」
血は。
出ない。
「……やっぱり」
ヒルトが目を細める。
「あ?」
ゼンが距離を取った。
「何だよ」
「普通に撃っても効いてない」
「見りゃ分かる!」
「さっきの」
ヒルトが。
ゼンの右腕を見る。
「君の大技は?」
「……《グランドインパクト》か?」
「それは効いた?」
「少しな」
「…………」
土。
石。
それを。
霊素で固め。
《クラッシャー》へ纏わせた一撃。
「霊素……」
「あ?」
「多分」
ヒルトが。
《ツインコード》を構え直す。
「こいつ」
ライを見る。
「霊素を纏った攻撃じゃないと、まともに傷つかない」
「……へぇ」
ライが笑った。
「気づいた?」
「最初から教えろよ」
ゼンが吐き捨てる。
「聞かれてねぇし」
「ムカつく野郎だな!」
「ゼン」
「なんだ!」
「合わせて」
「は?」
ヒルトが。
左の《ツインコード》へ指を滑らせる。
術式。
一つ。
そして。
もう一つ。
「次、右から来る」
「……分かんのか?」
「分からない」
「おい!」
「君が教えて」
「……チッ」
ゼンが。
地面へ足をつける。
意識を。
土の下へ。
「…………」
振動。
来る。
前。
違う。
左。
回り込む。
「ヒルト!」
「どっち!」
「左から後ろ!」
「了解」
ライが。
雷となって走る。
「遅ぇって!」
背後へ回った。
その瞬間。
ヒルトは。
振り返らなかった。
代わりに。
足元へ。
小さな魔器を投げる。
「――《拘束》」
「……あ?」
カチッ。
術式が発動する。
見えない力が。
ライの足へ絡みついた。
「お?」
一瞬。
本当に。
一瞬だけ。
速度が落ちる。
「今!」
「分かってる!」
ゼンが。
右拳を振りかぶる。
地面から。
土と石が巻き上がる。
霊素が。
《クラッシャー》へ流れ込む。
「喰らえ!」
岩石を纏った拳が。
ライへ迫る。
「――っ!」
ドゴンッ!
今度は。
ライの身体が。
大きく横へ押し飛ばされた。
「……!」
地面を滑り。
数メートル先で止まる。
「…………」
ライが。
自分の脇腹を見る。
薄く。
血が滲んでいた。
「おー」
口元が。
嬉しそうに吊り上がる。
「やっと戦いっぽくなってきたじゃん」
「…………」
ヒルトは。
ライを見ながら。
静かに息を吐いた。
速い。
硬い。
そして。
人間じゃない。
けれど。
攻撃が通らないわけじゃない。
「ゼン」
「あ?」
「もう一回」
「簡単に言うな!」
「でも、やるでしょ?」
「……当たり前だ!」
「ハハッ!」
ライが。
二本のカタールを構える。
「いいねぇ!」
青白い雷が。
さらに激しく弾けた。
「もっと来いよ!」
ヒルトが。
《ツインコード》の撃鉄を起こす。
ゼンも。
《クラッシャー》を握り締めた。
五年前から。
まともに並ぶことすらなかった二人が。
今は。
同じ敵を見ていた。




