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精霊達の忘れ物  作者: 粉砕のじゅんこ
入隊試験

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ヒバリ

 その瞬間。


 ドクン。


「……!」


 何かが。


 フィリアのすぐそばで。


 揺れた。


「…………?」


 淡い光。


 小さな。


 微かな光が。


 何もないはずの空間から滲み出す。


「……え?」


 フィリアの目が。


 大きく開いた。


 ずっと。


 隠れていた。


 姿を見せず。


 気配すら消して。


 それでも。


 ずっと。


 フィリアのそばにいた。


「……ヒバリ?」


 光の中から。


 小さな精霊が姿を現した。


「なんです……?」


 キールが眉を寄せる。


「精霊……?」


「ヒバリ……なんで……」


 フィリアが手を伸ばす。


 けれど。


 ヒバリは。


 その手には触れなかった。


「……?」


 フィリアを見つめる。


 ほんの一瞬。


 そして。


 ふわり。


 《遠音》へ向かって飛んだ。


「え……?」


 そのまま。


 ヒバリの身体が。


 光へ変わる。


「ヒバリ!?」


 止める間もなく。


 光は。


 《遠音》の中へ吸い込まれていった。


 ドクン――。


「……!」


 《遠音》が。


 脈打つ。


 まるで。


 命が宿ったように。


 淡い光が。


 弓全体へ広がっていく。


「これ……」


 フィリアの手へ。


 温かなものが伝わってくる。


 言葉なんて。


 聞こえない。


 それでも。


 分かった。


「……私のために?」


 返事はない。


 けれど。


 《遠音》が。


 僅かに震えた。


「…………」


 フィリアは。


 泣きそうな顔で笑った。


「……ありがと」


 光が。


 一気に強くなる。


「な……!」


 キールが目を見開いた。


 《遠音》を包む光の中で。


 その姿が変わっていく。


 弓身が。


 僅かに長く。


 細く。


 しなやかに伸びる。


 両端の曲線が。


 ふわりと左右へ広がった。


「…………」


 まるで。


 翅。


 向かい合った。


 二枚の蝶の翅。


 けれど。


 蝶そのものではない。


 弓としての形を残しながら。


 どこか。


 ヒバリの姿を思わせる。


 弓身には。


 透き通った紋様が浮かび。


 蝶の翅脈のような細い線が。


 淡い光を放ちながら走っていく。


 そして。


 弦。


 一本だったそれが。


 幾重もの細い光が重なったように。


 静かに揺らめいていた。


「…………」


 フィリアは。


 新たな《遠音》を見つめる。


 不思議だった。


 初めて見る姿なのに。


 初めて触れるものじゃない。


 ずっと。


 自分のそばにいた。


 そんな温かさが。


 手のひらから伝わってくる。


「……一緒に」


 フィリアが。


 《遠音》を握り締めた。


「帰ろうね、ヒバリ」


 ピン――。


 返事をするように。


 光の弦が。


 ひとりでに小さく鳴った。


 そして。


 淡い光が。


 ひらり。


 ひらりと。


 フィリアの周囲へ舞い上がる。


 まるで。


 小さな蝶たちが。


 彼女を守るように。

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