死んどくか?②
ズズズズッ――!
《重圧》が。
さらに強くなる。
地面が沈み。
ライの足が。
深くめり込んでいった。
「はぁ……はぁ……!」
ラグナは止めない。
ありったけの霊素を。
《重圧》へ注ぎ込み続ける。
「どうだ……!」
「…………」
「これでも……足りねぇって言うのかよ!」
「んー」
ライは。
重圧に押さえつけられながら。
ゆっくりと腕を動かしてみる。
「さっきより重てぇな」
「……っ!」
それでも。
余裕は消えない。
ラグナが歯を食いしばる。
「だったら……もっと――」
さらに霊素を注ぎ込もうとした。
その時。
「……あ?」
妙な感覚。
身体の中が。
急に軽くなったような。
「…………?」
いや。
違う。
軽いんじゃない。
減っている。
体内に蓄えられていた魔素が。
急速に。
「チッ……」
ラグナが顔を歪める。
「使いすぎたか……」
それだけ。
そう思った。
だが。
ぞくり。
「……っ!?」
全身に。
寒気が走った。
「なんだ……?」
冷たい。
何かが。
自分の内側から伝わってくる。
ラグナは胸元を押さえた。
「…………」
自分じゃない。
これは。
自分の感情じゃない。
もっと深いところ。
契約によって。
自分と繋がっている存在。
契約精霊。
そこから。
今まで一度も感じたことのない。
冷たい何かが伝わってくる。
「…………っ」
額を。
汗が伝う。
何なのか。
分からない。
それなのに。
怖い。
「なんだよ……これ」
「…………」
ライは。
そんなラグナをじっと見ていた。
そして。
「あー」
面倒そうに頭を掻く。
「やめとけやめとけ」
「……あ?」
「それ以上やんなって」
「…………」
ライがニッと笑った。
「喰われちまうぞ」
「…………は?」
ラグナの顔が引きつる。
「何言ってやがる」
「ん?」
「誰に喰われるってんだよ!」
「さぁ?」
「ふざけ――」
ぞくり。
「……!」
また。
感じた。
今度は。
さっきよりも強く。
契約精霊から。
冷たい何かが。
伝わってくる。
「…………っ!」
ラグナが。
反射的に《重圧》を解いた。
ズンッ――。
ライを押さえつけていた圧力が消える。
「お」
ライが地面から足を引き抜く。
肩をぐるりと回した。
「軽っ」
「…………」
ラグナは。
そんなライを睨みながら。
一歩。
後ずさった。
「……クソ」
そして。
踵を返す。
「あ」
走り出した。
「おーい」
ライがその背中を見る。
「どこ行くんだよ」
「うるせぇ!」
ラグナは振り返らない。
傷ついた身体を引きずりながら。
森の奥へと逃げていく。
「…………」
ライは。
ぽかんとその背中を見送った。
数秒。
ニィッ。
「俺相手に鬼ごっことか――」
バチッ!
青白い雷が弾ける。
「おもろ!」
腰を落とす。
今にも。
ラグナを追いかけようとした。
その時。
ドンッ!
「……ん?」
遠くから。
鈍い衝撃音が響いた。
ライが顔を上げる。
ドゴッ!
もう一度。
「…………」
ラグナが逃げた方向を見る。
それから。
音が聞こえてきた方向。
「んー……」
少しだけ悩む。
やがて。
「まぁ、いいわ」
ラグナへ背を向けた。
「いつでも殺せるし」
ドンッ!
また。
森の向こうから音が響く。
「んなことより――」
ライの目が。
楽しそうに輝いた。
「あっち、うるせぇな」
口元を吊り上げる。
「面白そうだ」
バチッ!
青白い雷が。
全身を駆け巡る。
「――《伝雷》」
閃光。
次の瞬間。
ライの姿は。
その場から消えていた。




