嵐の前
──少し時間は遡る。
アーヴェルは机に置かれた報告書へ目を通すと、小さくため息をついた。
「……馬鹿者どもが。」
低く漏れたその一言に、向かいに立つレテは頭を下げる。
「大変申し訳ありません。」
アーヴェルは報告書を閉じ、静かに口を開いた。
「……レオニスには謹慎処分を下した。」
一枚、書類をめくる。
「スミスマンは……今回の敗北を咎めとしよう。」
「あれは一度、痛い目を見た方がいい。」
あれほど完膚なきまでに叩きのめされたのだ。
今回ばかりは、それが何よりの薬になるだろう。
アーヴェルはレテへ視線を向けた。
「オーズィラ、お前も今回は咎めなしだ。」
「……ありがとうございます。」
レテは思わず胸を撫で下ろした。
しかし、次の言葉に表情を引き締める。
「だが、アルトの監視役からは外れてもらう。」
「……え?」
「あれは一人の手に負える相手ではない。」
「今後は第一班で監視にあたれ。」
「……はい。」
レテは真剣な表情で頷いた。
アーヴェルは新たな書類を取り出す。
「続いて任務だ。」
「今回は第一班を二つの班に分ける。」
レテは姿勢を正した。
「三日後の十四時。ガイスト軍事局にて、同盟国・英雄国家スパーナの防衛大臣と、我が国軍事局長による会談が行われる。」
「第一班は会談の護衛任務。」
「第二班は軍事局周辺の警戒任務に就け。」
「警戒任務には他部隊からも人員を配置する。」
「なお、両班とも緊急時に限り魔器の使用を許可する。」
レテは頷きながら問いかける。
「何かあったのですか?」
アーヴェルは腕を組み、短く答えた。
「……ヴォルグの動きが不穏らしい。」
その一言だけで十分だった。
レテの表情から笑みが消える。
「班員は、どう編成しましょうか?」




